作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ホーネック/紀尾井ホール室内管のハフナー・セレナーデなど(紀尾井ホール)

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昨日9月21日金曜日はチケットを取ってあったコンサートへ。

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紀尾井ホール:紀尾井ホール室内管弦楽団 第113回定期演奏会

今年の6月に初めて聴いたライナー・ホーネックと紀尾井ホール室内管弦楽団のコンサート。この時はハイドンの受難がプログラムに入っていたのでハイドン目当てで行きましたが、意外にもショスタコーヴィチのピアノ協奏曲が精緻な熱演、そしてベートーヴェンの田園は流石にウィーンフィルのコンサートマスターが振るだけあって実に自然なアーティキュレーションが素晴らしい演奏。正直ハイドンは前座という位置付けでした。

2018/06/19 : コンサートレポート : ホーネック/紀尾井ホール室内管の受難など(紀尾井ホール)

そのホーネックなら、モーツァルトはさらに素晴らしかろうということでチケットを取った次第。その読みは期待を大きく上回って当たりました! この日のプログラムとソリストは次の通り。

モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲(KV364)
モーツァルト:ハフナー・セレナーデ(KV250)

指揮・ヴァイオリン:ライナー・ホーネック(Rainer Honeck),
ヴィオラ:今井信子
紀尾井ホール室内管弦楽団

モーツァルトの曲の中でもこの協奏交響曲は特に好きな曲なので楽しみにしていました。

この日はあいにくの大雨。開場前はホールの外で待たなくてはならないので、ギリギリに到着して、まずは2階のカフェでビールとワインで景気づけ。

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冷えたグラスにプレミアムモルツと、赤ワインは常温と冷えたものが選べるなど酒飲みの好みを心得たサービスが心地よいですね。

この日の席はオケの右手2階。オケを右上から見下ろす席。客席には所々空席がありますが、チケットは売り切れていましたので、ほぼ満員。お客さんもホーネックのモーツァルトには期待しているのでしょう。

定刻になり、オケのメンバーが席につき、チューニングが終わると、ヴァイオリンを持ったライナー・ホーネックとヴィオラを持った今井信子が登場。客席に挨拶して、ホーネックがオケの方に振り向いて軽く合図すると、聴きなれたこの曲の序奏が始まります。前回のコンサートでは明らかにオケが寝起きが悪かったんですが、この日は最初から冴えていました。この曲の刷り込みはクレーメル、カシュカシアンがソロを務めるアーノンクール盤。オケはウィーンフィル。鋭利なクレーメルのヴァイオリンと外連味たっぷりのアーノンクールによるギャラントな演奏が印象に残っています。前回のコンサートでのハイドンやベートーヴェンの演奏から、ホーネックはオーソドックスな演奏で来るだろうと想像していましたが、それはこちらの読み違いでした。もちろんオーソドックスなスタイルに違いありませんが、まずはヴァイオリンのキレ方が凄まじい。テンポがキレているというか、弓の運びが曲のテンポの先を行きオケを類まれなリーダーシップで先導します。クレーメルが現代性を感じさせる鋭利なアーティキュレーションで圧倒するのに対し、ホーネックはモーツァルトの曲に内在する音楽のエネルギーを引き出すようにくっきりとメリハリをつけ、音量、テンポ、音色と全ての次元でハッキリとしたコントラストをつけて彫りの深い曲に仕立てていきます。あまりに見事なホーネックのヴァイオリンソロに釘付け。そしてそのソロが今井信子のヴィオラとオケを、タクトではなく音でコントロールしてき、類まれな一体感を感じさせるまとまり。ハッキリ言ってクレーメル盤の演奏の上を行く感じ。そしてヴァイオリンのキレもクレーメルより上と感じました。また、ホーネックが大柄な体を揺らしながら正確無比のボウイングで演奏する姿は視覚にも訴え、マゼールの指揮をみるのと同じような刺激に満ちたもの。ホーネックのヴァイオリンがここまでキレているとは思いませんでした。さざめくような序奏から愉悦感と推進力に満ちた展開が魅力の1楽章は、ホーネックのヴァイオリンの妙技と、類まれなコントロールを得て、緊張感に満ちたオーケストラが素晴らしい。
続く2楽章は、情感に流されず音楽の緊張感を保ったまま美しいメロディーをくっきりと浮かび上がらせるこれまた妙技の連続。特に弱音のコントロール、ホーネックのヴァイオリンソロが絶品。そして3楽章も同様。ハイドンの協奏曲の終楽章も手の込んだものですが、モーツァルトのメロディーのひらめきは流石なところ。構成はハイドンの方が面白さを味わいやすいですね。モーツァルトはメロディーの美しさをこれでもかと言わんばかりに技巧を凝らしして展開するところがハイドンファンとしてはちょっとくどく感じてしまいます(笑) 演奏の方はもちろん見事に曲を閉じて拍手喝采。いやいやこれは素晴らしい!

あまりに見事な協奏交響曲の余韻が残る中、休憩をはさんで、今度はハフナー・セレナーデ。ホーネックはヴァイオリンを持って登場。この曲でもヴァイオリンソロはホーネック。全8楽章の長い曲ですが、協奏交響曲以上にオケの集中度が上がって、いわゆるゾーンに入る至福の演奏。1楽章はホーネックは座ってコンマス役だったが、2楽章からは立ち上がってソロを担当。ヴァイオリンソロは協奏交響曲以上に絶品。2楽章の美しいカンタービレ、4楽章のさざめくような音階の繰り返しに多彩な表情をつける見事な手腕と圧倒的なテクニックに酔いしれました。曲中3つのメヌエットが挟まり、ハイドンのディヴェルティメントと同様の構成ながら展開の精緻さはハイドンとは桁違いに緻密。ハイドンの才能にも普段驚きっぱなしですが、モーツァルトの天才に改めて驚く瞬間多数。至福の時間とはこのことでしょう。紀尾井室内管のメンバーもホーネックにコントロールされて異次元の出来。いやいや素晴らしい演奏でした。

もちろんほぼ満員の客席はこの素晴らしいコンサートに万雷の拍手で応じていました。何回かのカーテンコールの後、アンコールはモーツァルトのマーチ(K.249)。コミカルな曲想にオケも少しリラックスして楽しげに演奏。オケを讃えるためか、ホーネックは最後の音が終わる前に下手に下がり、舞台上にはオケのみとなり、再び万雷の拍手に包まれました。ホーネックもオケのメンバーも笑顔で拍手に応えていて、この日の充実した演奏に満足していたのでしょう。

今まで聴いたモーツァルトでは最も心に残るコンサート。この先にもモーツァルトのプログラムが用意されているようですので、もう一度ホーネックの素晴らしいヴァイオリンを聴いてみたいと思います。



コンサート後、外に出ると雨はほとんど上がっていました。赤坂見附方面に歩いて帰り、駅の横の牛タンねぎしで夕食をいただいてコンサートの余韻を楽しみました。

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牛タンねぎしに入るのは20年ぶりくらいでしょうか(汗)

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お店は綺麗に改装されていてなかないい感じでした。さて、本日もコンサート。ユベール・スダーンの軍隊をサントリーホールに聴きに行ってきます。



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2 Comments

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Katsudon

No title

お世話になります。
私は1階19列13番で聴かせていただきました。
協奏交響曲は何と言っても第2楽章が白眉の作品だと思っていますが、この楽章をホーネック氏と今井さんがどう聴かせるか楽しみにしていました。予想としては情緒纏綿とまでは行かなくともロマン的なアプローチをしてくるのでは?と思っていましたが、結果は思いのほか情緒に流れず、良い意味で淡々とし、すっきりとした抒情を感じさせるものでした。このあたりは単にウィーン風というのではなく、今井さんが参加しているからこそのアプローチなのかと思いました。
ハフナー・セレナーデは、それと比較すると少しだけ甘い気分が乗った演奏のように感じました。ホーネック氏のソロは強さと美しさをたたえた演奏でしたが、やや上滑りしているように思えたのは気のせいでしょうか…。
ハフナー・セレナーデをCDに収録する場合、最近ではTr.1に K.249のマーチを持ってくるのが当たり前なので、どうして今回の演奏でセレナーデに先んじて演奏しないのかな?と思っていましたが、「そういうことだったのね…。」と納得した次第(昨年のモーツアルト・プロでアンコールはなかったので…)。
心密かに嬉しかったのは、1番ファゴットが福士マリ子さんだったこと(^。^)。 熱烈なファンとしては、紀尾井でも東響でも彼女が1回でも多く登場することを楽しみにしております(昨年のモーツアルト・プロでのファゴット協奏曲は本当に素晴らしかった)。4月の「グランパルティータ」も期待しています。


  • 2018/09/22 (Sat) 19:34
  • REPLY
Daisy

Daisy

Re: No title

katsudonさん、お世話になります。

いらっしゃっているということでキョロキョロしてみましたが、1階の上手側ということで、私の席からは死角になっていましたね。私の席からは正面にホーネックを見下ろす感じで、音も飛んでくるがごとく鮮明に聞こえました。協奏交響曲のソロはホーネックが引っ張り今井信子が支えるという感じで、なかなかいいバランスだったと思います。いわゆるウィーン風という穏やかな感じではなくタイトに攻める感じで、ソロ二人の掛け合いも面白かったですね。
ハフナー・セレナーデの方はホーネックのソロの見事なリードで、視覚的にも面白かったです。やはりウィーンの人らしくモーツァルトはうまいですね。次回のモーツァルトの回もチケットを取らねば、、、

  • 2018/09/24 (Mon) 09:48
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