作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ジョヴァンニ・アントニーニの交響曲全集第6巻(ハイドン)

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全集に向けた取り組みが順調に進んでいます。

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ジョヴァンニ・アントニーニ(Giovani Antonini)指揮のバーゼル室内管弦楽団(Kammerorchester Basel)の演奏で、ハイドンの交響曲3番、26番「ラメンタチオーネ」、79番、30番「アレルヤ」の4曲を収めたCD。このアルバムはアントニーニによるハイドンの交響曲全集の第6巻。収録は2017年3月2日から7日にかけてスイスのバーゼル近郊のリーエンという街にあるランドガストホフ・リーエンでのセッション録音。レーベルはレーベルはouthereグループのALPHA-CLASSICS。

このシリーズはこれまでに全巻取り上げています。

2017/11/22 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ジョヴァンニ・アントニーニの交響曲全集第5巻(ハイドン)
2017/04/18 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第4巻(ハイドン)
2016/10/09 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第3巻(ハイドン)
2015/06/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第2巻(ハイドン)
2014/11/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第1巻(ハイドン)

リリースは安定して続いていますが、今回取り上げる第6巻からアルバムの輸入元がマーキュリーからナクソスジャパンに変わっています。輸入元が変わると何が変わるかというと、以前のマーキュリーのパッケージには白沢達生さんの非常に詳しい解説の翻訳が付いていて、それが魅力だったんですね。ナクソスジャパンのパッケージはタイトルととアルバム内容が書かれたカバーがつけられているだけ。このシリーズは装丁、アートワーク、解説が充実しているだけに、今回の変更は資本の論理でしょうが残念なものですね。どうして変更されたのかと調べてみると旧輸入元のマーキュリーのウェブサイトを確認してみると、サイトが繋がらなくなっていますね。充実した訳と解説が気に入っていただけに残念ですね。

さて、このシリーズについてと奏者についてはこれまでの巻の記事をご覧ください。前巻からオケがバーゼル室内管に変わり、今回もバーゼル室内管。アントニーニの圧倒的なコントロールはオケの違いを感じさせないもので、演奏はキレキレで変わらず。

Hob.I:3 Symphony No.3 [G] (before 1762)
いきなり耳をつんざくようなヴァイオリンの響きにびっくり。この初期の曲から鋭利な響きを引き出すセンスに驚きます。先日のアルトシュテットの振るハイドンフィルもそうですが、古典期の曲をアヴァンギャルドなセンスでまとめる見事な手腕。アルバムの1曲目に挨拶がわりに置く選曲も見事です。けたたましい響きながらスリリングさが勝る1楽章のアレグロ。そして続くアンダンテ・モデラートは厳かささえ感じるほどにレガートを効かせて抑えてきます。メヌエットは舞踊より覇気が勝るキレキレなもの。弦のキレ味にホルンのリズム感の良さが印象的。そしてフィナーレは速いパッセージの連続波状攻撃に痺れ気味。この小曲が見事な仕上がり。

Hob.I:26 Symphony No.26 "Lamentatione" 「ラメンタチオーネ」 [d] (before 1770)
アルバムタイトルもラメンタチオーネということで、メインとなる曲。予想通り1楽章はかなり速めのテンポで、仄暗さが勢いで吹き飛びそう。そう、このスリリングさがハイドンに生気を吹き込んでいるんですね。伴奏に回るヴァイオリンの音階が控え目ながらクッキリと浮かび上がる精緻なアンサンブル。そして波が繰り返し寄せてくるように盛り上がります。速いばかりではなく、フレーズの彫り込みの深さでこの1楽章の魅力を浮かび上がらせます。そして聴きどころのアダージョはこちらも予想通り抑えてきました。独特の雰囲気のあるメロディをあえて平板に表現することでアルカイックな印象が強まります。狭い音量さの中でも耳を澄ますとこのメロディー自体の美しさが心にじわりと沁みてきます。そしてメヌエットも前曲の覇気とは異なり八分のキレで優雅さを残し、最後に仄暗さのうっすらとした余韻を残す巧みな設計。

Hob.I:79 Symphony No.79 [F] (before 1784)
だいぶ時代は下って、朗らかな明るさを持った曲ですが、ただ朗らかに演奏するわけもなく、明るく屈託のないメロディにキレ味鋭い装飾を施してきます。パリセット直前の目立たぬ存在だったこの曲の面白さを再発見した気分。ワクワクするような見事な推進力をちりばめ、千変万化する表情を繰り出す手腕に魔法にかかったよう。転調しながら次々展開していく曲想を追いながらいつも通りハイドンのアイデアにも感心しきり。かなり大胆な音量コントロールが実に効果的。色彩感と躍動感が溢れる秀演。続くアダージョ・カンタービレはつぶやくようにトボトボとしたメロディーの面白さを強調するためかメロディを抑えて木管やホルンの柔らかい音色でアクセントを浮かび上がらせ、ヴァイオリンの繊細さを引き立てるコントラスト。後半のウン・ポコ・アレグロで弦のソリッドな音色が出てくることを想定した演出でしょう。3楽章のメヌエットはこれまでの曲で最も舞曲らしいもの。そしてフィナーレは実に軽やかな入り、と思った瞬間展開部に入ると牙を剥き、弦の表情の使い分けの多彩さを印象付けます。ハイドン自身もこれだけの表現の幅は想像できなかったでしょう。見事です。

Hob.I:30 Symphony No.30 "Alleluja" 「アレルヤ」 [C] (1765)
最後の曲。どの曲も新鮮に響きますが、このリズミカルなアレルヤの入り、古楽器の演奏は数あれど、このニュアンス豊かな表現は新時代のもの。楽器の音色で聞かせた初期の古楽器演奏とは異なり、古楽器の音色の幅を駆使して、色彩感も推進力もキレも伴い実に豊かなイメージを描いていきます。弦楽器の表現力は前曲同様。特に木管とホルンの巧みなコントロールは神業レベル。おまけに構成感も完璧で引き締まった1楽章。アンダンテは抑えた弦とクッキリと浮かび上がる木管などによるコントラストが再来。木管の響きの美しさ、とりわけフルートが見事な演奏。そしてフィナーレは比較的おおらかな響きで入りますが、徐々にキレを垣間見せ、語り口の巧さを見せつけます。最後はオーソドックスにまとめてきました。

ジョヴァンニ・アントニーニ指揮のバーゼル室内管によるハイドンの交響曲全集の第6巻。この巻も非常にレベルの高い仕上がり。アントニーニのキレ味鋭いコントロールと、多彩な表現力で時代をまたぐ4曲を巧みに料理して、どの曲も抜群に面白い出来。素晴らしい才能の持ち主ですね。このシリーズは冒頭にも書いたように、アートワークも装丁も素晴らしく所有欲を満たすもの。次の巻のリリースが待ち遠しいですね。もちろん評価は全曲[+++++]とします。



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8 Comments

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Katsudon

No title

お世話になります。
私はこのシリーズをいつもPresto Classicalのサイトで購入しているので、日本語訳の恩恵には預かっていませんでしたが、確かにマーキュリーの丁寧な日本語訳のライナーは、その価格に見合ったものですよね。
4曲ともおっしゃる通りスリリングなところが魅力的ですが、個人的には3番が(1番や4番と同じくらい)好きなので、新しい演奏に出会えて嬉しいです。3番は丁度先月のオーケストラ・リベラ・クラシカ定演で取り上げられたばかりだったので、趣の異なった2つの演奏に接して、余計にこの曲が好きになりました。

  • 2018/07/07 (Sat) 21:25
  • REPLY
Daisy

Daisy

Re: No title

katsudonさん、お世話になります。

Presto Classicalは安いですね。アントニーニも今度来日して読響を振るので、実演を楽しみにしています。3番もいい曲ですが、この巻では79番の魅力を再認識させられました。ハイドンばかりでなくベートーヴェンも録音しているようですので、今度聴いてみようと思っています。

  • 2018/07/08 (Sun) 00:55
  • REPLY

だまてら

No title

暑中お見舞い申し上げます。
>旧輸入元のマーキュリーのウェブサイトを確認してみると、サイトが繋がらなく・・・

ほんとだ!。当代理店は、某大手時計会社にご縁のある方が経営されていたそうで、サイトの(営業も?)終了は大変残念です。
私的には、イシュトバーン・ケルテース氏(勿論、あの早世の名指揮者とは同姓同名の別人!)が率いるフェシュテティーチ四重奏団のハイドン全集をはじめとして、ほとんどの取り扱いCDでの大変丁寧な日本語表記のタスキと折込の解説が印象的でした。
ナクソスに同等のことを期待するのは無いものねだりになりましょうが、それでも先の長い当プロジェクトを完結までサポートしてくれるとしたら有難い事です。

  • 2018/07/08 (Sun) 09:10
  • REPLY

Katsudon

No title

だまてらさん

フェシュテティーチ、お好きですか?
私もピリオド系の団体の演奏するハイドンの中では、そのデッド気味の音も相まって素朴だけれどもストレートにスッと入ってくるところが好きです(あの音質は好き嫌いが分かれるところでもありましょうが....)。

それはそうと、マーキュリーがなくなってしまったということになると、タワー渋谷のマーキュリーのコーナーも既に存在していないのでしょうか?タワー渋谷へ行く度にあそこはチェックしいていて、何かしら聴いてみたいと思うCDを発見する確率が高かったものですが...。今度の木曜日に上京する予定なので確認しに行ってきます。

  • 2018/07/09 (Mon) 06:46
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Daisy

Re: 【新着】ジョヴァンニ・アントニーニの交響曲全集第6巻(ハイドン)

だまてらさん、katsudonさん、コメントありがとうございます。

マーキュリーの件、皆さんにとっても大きな影響があるんですね。マーキュリーのような丁寧な仕事をするインポーターが継続できるよう我々消費者側も応援しなくてはなりませんね。
そういえばマーキュリー、レコ芸などに広告は出ていましたでしょうか(旅先のため自分で確認できません)。 インポーターでも東武トレーディングなどは毎月丁寧な新譜情報を出稿していますね。マーケテイング面がちょっと弱かったのでしょうかね。

  • 2018/07/09 (Mon) 06:59
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だまてら

No title

(Daisyさん、軒先をお借りしてのコメント返信失礼します・・・)
Katsudnさん、正直申し上げまして、小生はアンチ・ピリオドの急先鋒だったこともあり(ミンコフスキやファイで、それがだいぶ緩和されては来ましたが・・・)熱心なリスナーでは無いことを自白しちゃいます!
同種の団体では、モザイク>エンジェルス>フェシュテティーチ>カルミナの順で好み(あくまで個人的にですが・・・)かな?おっと、ロンドンSQはどの辺に来るのだか、ぱっとは思い当たりません。
ところで、オフ会でちょっとお話しました静岡の先輩にコンサートレポートを送ったところ、「卒倒しそうな程」羨ましがられました。その顛末については、後日メールにてご連絡いたしたく。

  • 2018/07/10 (Tue) 01:09
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べっく

日本語解説書つきもあります。

ナクソスジャパンに変わった後ですが、基本は、タイトルととアルバム内容が書かれたカバーがつけられているだけというのは間違いないのですが、日本語解説書付きヴァージョンもございます。そこでは、マーキュリー同様、白沢達生さんによる翻訳が付いています。もちろん値段は高めとなりますが。。。もし今もご存じなければということで、情報として伝えました。

Daisy

Daisy

Re: 日本語解説書つきもあります。

べっくさん、コメントありがとうございます。

私も解説付きのアルバムがあることを知りました。TOWER RECORDSの解説を見る限り、輸入者はナクソスジャパンになるのでしょうから、マーキュリーから引き継ぎされたのでしょうかね。日本語解説も白沢達生さんということで、こう言った良心的なパッケージが販売されることは嬉しい限りですね。

  • 2018/09/30 (Sun) 17:54
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