作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ロト/レ・シエクルの「春の祭典」など(東京オペラシティ)

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レビューもそこそこに、コンサートには出かけています。

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フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮レ・シエクル《春の祭典》 | 東京オペラシティ

いつも通り、コンサートに出かけた際にもらったチラシでチケットを取りましたが、ロトは以前、読響を振ったコンサートに出かけていて、しかもハイドンの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」の管弦楽版の濃密な素晴らしい演奏を堪能していて、その実力は体験済み。そのロトが手兵、レ・シエクルを率いて来日し、春の祭典を振るということで興味を持ったもの。

2015/07/02 : コンサートレポート : ロト/読響の十字架上のキリストの最後の7つの言葉(サントリーホール)

チケットを取ってから調べてみると、レ・シエクルとは春の祭典を録音していて、2014年のレコードアカデミー大賞を受賞しているとのこと。レコ芸は読んでいるのですが、海外の動向とか海外盤のレビューくらいしか目を通さないので、このアルバムの記憶はありませんでした。ちなみにコンサート前に予習すると、その印象と比べて聴くようになるのでいつも一切予習はしません。ということで、いつも通り、虚心坦懐にコンサートに臨みました。

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この日の会場である東京オペラシティは職場からすぐ近くなので、トコトコ歩いて会場入り。

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いつも通り嫁さんと待ち合わせして、聴覚神経を鋭敏にするのに必要十分なアルコールで喉を潤します(笑)

この日のプログラムは以下のとおり。

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー:バレエ音楽「遊戯」
ラヴェル:ラ・ヴァルス
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」

もちろん目玉は春の祭典ですが、前半のドビュッシー、ラヴェルも魅力的なプログラム。席はステージ右手真横の2階席で、オケを上から見下ろす席。2階のビュッフェで一杯やって席に着くと、すでに約半数の奏者がステージ上で和やかに音出ししています。そのまま人数が増え、特に入場という感じなくオケが勢ぞろい。そして定刻になって場内の照明が落ちると、木管から順にチューニング。通常は管と弦に分けるぐらいはよくありますが、パートごとに念入りにチューニングするのがこのオケの作法なのでしょう。

ほどなくしてスーツ姿のロトが颯爽と登壇。指揮棒を持たず、振り上げた腕ですっと合図をすると、なんとも言えない浮遊感のあるフルートが1曲目の牧神の午後のメロディーを奏で始めます。予想通り、牧神の午後は濃密な芳香を放つロト独特の丁寧なフレージングで、まさに漂うようなしなやかな音楽が流れます。 流麗というより各楽器の音色の色彩感を活かして響き合うようなオーケストレーション。この曲は好きで色々な演奏を聴きましたが、これまでのどの演奏とも異なる響き。すでに観客はロトの繰り出す新鮮な響きに酔っているよう。大きめのアクションで各パートにかなり細かく指示を出すのがロト流なのでしょう、そのアクションに鋭敏に反応するオケの鮮やかさも相俟って至福の境地へ。冒頭からロトの魔術にかかりました。
続く遊戯は、予備校時代に代々木のジュピターレコードで買ったハイティンクのLPが馴染みの曲。落ち着いたテンポでオケをしっかりと鳴らすハイティンクの演奏とはまるで別の曲。ロトはテンポをかなり自在に動かし、それぞれ特徴的な木管、金管の古楽器の音色の絶妙な色合いと喧騒感を見事にまとめ上げ、まさに音楽と戯れるよう。ロトは指揮台の上で踊り出さんばかりに大きなアクションでオケを巧みに制御。耳をつんざくような鮮烈な金管の音色ともなうオケの爆発と静寂を繰り返しながらの見事な演奏。オケもだいぶあったまってきてパワー炸裂の演奏でした。
すごかったのが前半最後のラ・ヴァルス。基本的な演奏スタンスは遊戯の延長なんですが、パワーはさらに増して、オケが火の玉のように赤熱。途中、これがラヴェルの曲かと思うような超高速テンポになり、ロトは3倍速で阿波踊りを踊っているような指揮ぶり。オケの方もそれに合わせて、波動砲をマシンガンのように打ちまくるような大爆発。大規模オケのコンサートでは風圧を感じるほどの大音量は珍しくありませんが、この超高速回転する火の玉の塊のようなエネルギーは初めて。会場のお客さん全員がロトのオーラとオケのエネルギーに吹き飛ばされんばかり。いやいや凄いとは聞いていましたが、このラ・ヴァルスには参りました。ロトも力を出し切ったのか100mレース後のウサイン・ボルトさながらの表情。もちろんお客さんは嵐のような拍手でロトとオケをたたえてました。

前半ですでにノックアウト気味で迎える本命のハルサイ。休憩後も入念なチューニングを経て、ロトが登場。今回の版はストラヴィンスキーの自筆初稿から筆者されモントゥーによる初演時の楽譜(遺失)を復元し初演当時の楽器による演奏。プログラムにはこの日の演奏で使用する管楽器、打楽器のリストまで掲載されていましたが、ステージ上の楽器配置がパーカッションは上手側だったため、上手2階席からは残念ながらパーカッション陣の動きは見えませんでした。冒頭のバソン(バスーン)から現代楽器とは異なる響き。あのバソンの演奏はなかなか難しそうですが、精妙に響きを揃えるという方向ではなく、おどろおどろしい原初の響きを作ろうとしているよう。不規則なリズムが乱舞し始めると、オケは休憩前のラ・ヴァルスの時のエネルギーが戻ってきました。なんとなくラ・ヴァルスの高揚の余韻が残っていて、いつあの炸裂がくるかと待ち構えて聴いていましたが、もちろん、春の祭典の独特のリズムは保ち、いきなり高速テンポにはなりません。ただ、徐々に音量を上げ、オケが炸裂するところに来るとテンポを徐々に上げ、不気味な迫力を帯びてきます。下手をすると腰砕けになりそうな気もしますが、そんなことを気にせずグイグイテンポを上げて独特のクライマックスを作り、その高揚感が軸になって音楽が素晴らしい推進力を帯びて来る感じ。もちろん古楽器の鋭利な音色は迫力に大きく貢献していて、つんざくような高音と鋭いパーカッション陣の刻む目も眩むようなリズムの連続でアクロバット要員にしか対応できないような踊りのリズムを刻んで行きます。静寂が続く「賢者」ではじっくりと情景を描き、第1部の終わりの「大地の踊り」はもちろんど迫力。第2部に入ってしばらくのグランカッサ11連発はやはり速めのテンポで度肝を抜き、最後まで絶妙なるセンスでまとめる見事な演奏でした。この春の祭典もこれまで聴いたどの演奏とも異なる素晴らしい演奏でした。

たった1回きりの日本公演ということで、もちろん満席で、その満席の客席からブラヴォーの嵐が降りそそぎました。何度かのカーテンコールのあと、メモを取り出し超フランス語訛りながら日本語で観客に挨拶して、さらに拍手喝采。そしてアンコールではビゼーのアルルの女の第1組曲からアダージェットを演奏。弦楽パートのみの演奏でしたが、3年前の読響の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」の演奏を思い起こさせるデリカシーに富んでいながら陰影の深い素晴らしい演奏。爆風のような演奏の後にこの美しい弦を聴かせるセンスにまたまたノックアウト。いやいや、素晴らしいコンサートでした。

ロトの録音を調べてみるとほとんどがライヴ。このライヴの高揚感、ライヴだけで伝えられるものがあるというのがロトの心情だと悟った次第。商業的には何回ものコンサートを開催できる人でしょうが、このコンサートの尋常ならざる集中力を保つのはロトばかりではなくオケの団員にとってもなかなかしんどいでしょう。貴重なコンサートに立ち会えた満足感に満たされた1日でした。



さて、初台でのコンサートの帰りの定番は参宮橋のいつものお店です。コンサート後でもラストオーダー前に色々たのんで、のんびり食事ができるのでお気に入り。

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いつも珍しいワインが置いてあります。この日はロゼなどをセレクト。

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白身魚(なんだったかしら?)のマリネ。大量のパクチーで具が見えません(笑)

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夏野菜のサラダ。

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ワインを追加。珍しく小布施ワイナリーの赤があったので注文。白はシュナンブラン。

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たっぷりカラスミが乗ったカラスミのパスタ。バター風味。

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グアンチャーレ(豚の頬肉の塩漬け)のパスタ。こちらもバター風味。終演後、極上のコンサートの余韻を楽しみながらワインと美味しい料理をいただいてお腹いっぱい。いい1日でした。

(参考アルバム)




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