作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】絶品! トリオ・ヴァンダラーのピアノ三重奏曲集第2弾(ハイドン)

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今日は新着アルバムです。

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トリオ・ヴァンダラー(Trio Wanderer)による、ハイドンのピアノ三重奏曲集の第2巻。収録曲目はHob.XV:14、XV:18、XV:21、XV:26、XV:31の5曲。収録は2017年1月19日から22日にかけて、ベルリンのテルデクス・スタジオ(Teldex Studio Berlin)でのセッション録音。レーベルはharmonia mundi。

トリオ・ヴァンダラーのピアノ三重奏曲は思い出のアルバム。ブログを書き始める前はボザール・トリオのアルバムなどを時折り漫然と聴くだけだったのが、ブログを書き始めてからは記事を書くためにしっかり聴くようになり、ピアノトリオも、このトリオ・ヴァンダラーのアルバムを聴いて、その真の素晴らしさに目覚めることになったという記念すべきアルバム。

2011/02/16 : ハイドン–声楽曲 : ホルツマイア/トリオ・ヴァンダラーのスコットランド歌曲
2011/02/12 : ハイドン–室内楽曲 : トリオ・ヴァンダラーのピアノ三重奏曲集

その、トリオ・ヴァンダラーのピアノ三重奏曲集を録音したのは2001年、そしてそのあとの歌曲集の伴奏を録音したのが2007年ということで、ハイドンのピアノトリオは16年ぶり、ハイドンの録音は10年ぶりということになります。この間メンバーは変わらず。

ヴァイオリン:ジャン=マルク・フィリップス・ヴァイジャベディアン(Jean-Marc Philips-Varjabédian)
チェロ:ラファエル・ピドゥ(Raphaël Pidoux)
ピアノ:ヴァンサン・コック(Vincent Coq)

ちなみに、聴き比べのために2001年録音の旧三重奏曲集をさらっと聴いてみたところ、やはり若々しい魅力があるものの、録音は最新のものの方が明らかに鮮度としなやかさがあるように聴こえますね。

Hob.XV:14 Piano Trio (Nr.27/op.61) [A flat] (before 1790)
鮮度抜群で美しい残響に包まれる見事な録音。以前の録音も悪くなかったんですが、ピアノの低音の厚みがあり、比べて聴くと解像力も段違い。そして演奏の方は流石に円熟を感じさせ、ハイドンのピアノトリオを余裕たっぷりに楽しんで弾いている様子がよくわかる演奏。冒頭から力が抜けて、おおらかなオーラに包まれるような演奏。しなやか、軽妙洒脱に自在なリズムで遊びまわるように弾き進むピアノにヴァイオリンとヴィオラも楽しげに寄り添う感じ。おおらかなだけではなく弱音部のデュナーミクの実に繊細なコントロールも行き届いて、極上の室内楽を楽しめます。火花散るような迫力ではないんですが、各奏者がお互いの演奏に耳を傾けて、非常に鋭敏な感覚でアンサンブルを構成し、結果として癒しを感じさせるような見事な一体感を感じさせます。
アダージョは言うまでもなく孤高のしなやかさ。ピアノのヴァンサン・コックのタッチのデリケートなニュアンスの深さに、ヴァイオリンとチェロも負けていません。そしてフィナーレはこれまでの充実感保ちながらも、徐々に力を抜いて冷ますように流します。

Hob.XV:18 Piano Trio (Nr.32/op.70-1) [A] (before 1794)
冒頭の鋭い和音に驚きますが、すぐにまろやかな音色のサンサンブルが戻ります。もはや安心して聴いていられる状態になりましたので、ハイドンの音楽に集中できます。宝石のように輝くピアノとしなやかなヴァイオリン、チェロが相俟ってゆったりとした音楽を紡ぎ出していきます。特徴的な3楽章の見事な軽やかさが印象的。最後はたたみかけるようにクライマックスを盛り上げて終わります。

Hob.XV:21 Piano Trio (Nr.35/op.71-1) [C] (before 1795)
穏やかなる入りに聴き惚れているところに、超軽快な主題が割り込んできて、以後は軽やかなる音楽が充満していきます。1楽章途中での転調の鮮やかさ、くっきりとメロディーが浮かび上がるところの見事さは変わらず。曲によって演奏スタイルを変えることはせず、すべて極上のアプローチ。フィナーレはコミカルさに少し振ってきました。

Hob.XV:26 Piano Trio (Nr.40/op.73-3) [f sharp] (1795)
足早な悲しみが深さを纏い、その雰囲気を色濃く残す入り。起伏が徐々に大きくなりながら冒頭のメロディーに戻ってくるところの推移は、明暗交錯して非常に面白い。2楽章は交響曲102番の緩徐楽章のメロディーですが、大抵の演奏のようにしなやかにまとめてこないところにハッとさせられます。その心は、フィナーレの落ち着かない感じにつなげる意図だったのでしょう。ここに来て少しコンセプチュアルなところが顔を出します。曲の構成を見抜いた見事な解釈。

Hob.XV:31 Piano Trio (Nr.41/op.101) [E flat] (1795)
最後になかなか深い曲を持って来ました。仄暗い入りから徐々にニュアンスが変化していく様子を実に丁寧に描いていきます。音楽の構成の複雑さを感じさせることなく、まるで車窓の景色が流れるように自然に聴かせて行くあたりにこのトリオの実力が垣間見えます。途中から入るヴァイオリンの高音の伸びやかなメロディーのなんと爽やかなこと。ピアノに代わって主導権を奪うほどの活躍。この曲は2楽章構成。最後の楽章は「ヤコブの夢」と呼ばれる難しい音階がある楽章。もちろんそんなことは感じさせずに、むしろスパッと終わるキレの良さを聴かせました。

いやいや、旧盤も素晴らしかったんですが、この新盤は期待を大きく上回る見事な演奏でした。旧盤の録音からの16年を経て演奏は熟成を重ね、極めてデリケートなレベルで互いの演奏を聴いて呼応し合う奇跡のようなアンサンブルでまとめてきました。すでに技術のレベルは通り越し、余裕を感じさせながらハイドンの音楽の真髄を見通して曲ごとに演奏を楽しんでいることがよくわかります。録音も極上。ピアノトリオの入門盤としてもおすすめです。絶品! 評価はもちろん全曲[+++++]とします。



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