作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

奥村和雄、ハンス・デュソスヴァのヴァイオリンとヴィアオラのためのソナタ集(ハイドン)

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今日はマイナー盤。

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奥村和雄(Kazuo Okumura)のヴァイオリン、ハンス・デュソスヴァ(Hans Dusoswa)のヴィオラで、ハイドンのヴァイオリンとヴィオラのためのソナタ6曲(Hob.VI:1、VI:2、VI:3、VI:4、VI:5、VI:6)を収めたアルバム。収録は1981年4月、収録場所は記載されていませんがセッション録音です。レーベルは蘭ETCETERA。

ハイドンのヴァイオリンとヴィオラのためのソナタ集は密かな名曲。弦楽四重奏曲という分野を確立したハイドンがヴァイオリンとヴィオラという音域も近いたった2台の楽器のために技巧を凝らして書いた非常に美しい曲で、6曲セットのそれぞれの曲が変化に富んだメロディーと構成をもつ素晴らしい曲なんですね。わたしはこの曲の録音は見つけるたびに手に入れているのですが、手元には6種のアルバムがあり、最近手に入れたこのアルバムで7種目。内3種についてはレビューしています。

2015/01/16 : ハイドン–室内楽曲 : ヴィルモシュ・ザバディ、ペーテル・バールショニのヴァイオリンとヴィオラのためのソナタ集(ハイドン)
2012/08/12 : ハイドン–室内楽曲 : アントン・シュテック/クリスティアン・グーセズによるヴァイオリンとヴィオラのためのソナタ集
2012/06/05 : ハイドン–室内楽曲 : デーネシュ・コヴァーチュ/ゲーザ・ネーメトによるヴァイオリンとヴィオラのためのソナタ集

今日取り上げるアルバムは、なんと日本人がヴァイオリンを弾いているもの。調べてみるとヴァイオリン奏者もヴィオラ奏者もコンセルトヘボウ管の奏者ということでした。
ヴァイオリンの奥村和雄は、現在活躍しているヴァイオリン奏者の奥村愛のお父さんとのこと。新潟に生まれ桐朋学園などで学んだのち1970年にオランダに渡り、ロッテルダムフィルのヴァイオリン奏者として活躍したのち1974年からはアムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団の首席ヴァイオリン奏者として活躍していたそうです。ウェブを色々調べてみると現在は桐朋学園の新潟教室で子供のためのヴァイオリン教室の講師などで健在のようです。
ヴィオラのハンス・デュソスヴァはライナーノーツによるとオランダのアルフェン・アン・デン・ライン(Alphen aan de Rijn)の生まれで、王立ハーグ音楽院でヴァイオリンを学んだのち、アムステルダムでヴィオラを学びます。その後オランダ室内管、ロッテルダムフィルをへてチューリッヒ・トーンハレ管でヴィオラ奏者を務めたのち、1975年からアムステルダムコンセルトヘボウ管のヴィオラ奏者となったとのことです。ネットで探してもデュソスヴァの情報はあまり出てきませんね。

コンセルトヘボウの奏者ということで、もちろん腕利きの2人によるハイドンのデュエットですが、これがまた素晴らしいんですね。

Hob.VI:1 Sonata for Violin and Viola No.1 [F] (c.1769)
いきなりヴァイオリンの艶やかな美しい響きに惹きつけられます。流石コンセルトヘボウの首席ヴァイオリン奏者ということで、ヴァイオリンとヴィオラは完全にヴァイオリン主導。おそらく楽器もヴァイオリンは良い楽器なんでしょう。決してヴィオラが悪いわけではないんですが、この奥村さんのヴァイオリンは見事の一言。快活な1楽章から穏やかなアダージョに入るとヴァイオリンの雄弁さがさらに際立ちます。ヴィオラは地道に伴奏に徹していて、それもヴァイオリンの孤高の響きを引き立てています。終楽章は2台の楽器の掛け合いの面白さでさらりとまとめてきます。

Hob.VI:2 Sonata for Violin and Viola No.2 [A] (c.1769)
曲ごとに曲想と構成がどんどん変化していく面白さがこの曲集の真骨頂。楽器の数が少ないからこそ、純粋にメロディーと構成の面白さが際立ちます。ヴィオラも徐々に雄弁になってきて、掛け合いの緊張感もグッと面白さのレベルが上がってきます。音量を上げるとまさに2人の奏者が目の前で鍔迫り合っているような迫力を味わえます。アダージョのメロディーはまさに天才的な閃きを感じるもの。くっきりとした表情に憂いが満ち溢れる至福のひととき。奥村さんのヴァイオリンはシゲティやグリュミオーよりも美しい音色に聴こえます。普段アンサンブルを組む仲だけに2人の息はピタリと合って完璧なアンサンブルですね。

Hob.VI:3 Sonata for Violin and Viola No.3 [B flat] (c.1769)
ホッとするような癒しに満ちたメロディーから入る3曲目。すぐに変奏を重ね始め、ヴァイオリンが高音域にシフトすると、別次元の艶やかさを纏って驚かせます。なんという素晴らしい展開。奏者の息遣いが聴こえてきそうなリアリティと愉悦感溢れる音楽にどっぷりと浸かります。この曲のアダージョは慈しみに満ちた落ち着いた音楽。そして軽妙な終楽章と構成も完璧。イキイキとした音楽が流れる快感に包まれます。

Hob.VI:4 Sonata for Violin and Viola No.4 [D] (c.1769)
2人が演奏を楽しんでいるのが録音を通じて伝わってきます。ヴァイオリンは楽器がよく響いて見事な響き。これだけ気持ちよく楽器が鳴ると弾く方も楽しいでしょうね。時折音階が高音に飛びますが、伸びやかな高音があまりに見事で惚れ惚れするほど。そしてその対比か、続く2楽章は切々たる音楽。2楽章もヴァイオリンの音域を広く使って音色も硬軟織り交ぜてきます。終楽章はコミカルに音階が進むかと思いきや大胆に変奏が進んで驚かせます。

Hob.VI:5 Sonata for Violin and Viola No.5 [E flat] (c.1769)
色々展開するのに耳が慣れているなか、さらにその上をいく変化球が来て驚かされます(笑) そして音量変化も大胆につけてきます。アダージョへの入りも自然極まりないもので、さらりと入ってきます。ヴィオラのシンプルなサポートが非常に重要な効果を挙げています。そしてオーソドックスな展開の終楽章は展開するうちに見事に発展して広がり、すっと弾いて終わります。

Hob.VI:6 Sonata for Violin and Viola No.6 [C] (c.1769)
最後の曲は今までの総決算として天の声を音楽にしたような突き抜けた想像力を感じさせます。奥村さんのヴァイオリンも神がかったようにさえずり続け、ヴィオラもヴァイオリンと完全にボウイングを揃えて入魂の演奏。アダージョは普通に考えられるメロディーから完全に崩れていながら見事な音楽に仕上がる天才的な組み立て。短い音楽ながら想像力の彼方で勝負している感じ。最後は晴朗な音楽で閉じるのがハイドン流。見事。

ハイドンの書いたヴァイオリンとヴィオラのためのソナタ集は好きな曲だけに、手に入る演奏は全て集めていますが、このアルバム、間違いなくこの曲集のベスト盤です。艶やかな美音を駆使しながらもヴァイオリンという楽器の音色の面白さをこれほどまでに感じさせ、しかも室内楽としてのアンサンブルの面白さも絶品。奥村さんの録音はこのアルバム以外には数枚あるだけのようですが、これほどの腕前とは思いませんでした。名門オケの首席ヴァイオリン奏者のみならず、ソリストとしても一流ですね。もちろん評価は[+++++]を進呈です。室内楽がお好きな方、手にはいるうちにどうぞ!

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2 Comments

There are no comments yet.

katsudon

No title

お世話になります。
この音源、CRCIレーベルのオリジナル・アナログ盤で所有しています。
モーツァルトのデュオもそうですが、案外バランスよく聴かせるには二人の技量やセンスが必要だと思いますが、この演奏は流石に二人の息のあったところを聴かせてくれるものだと思います。
その昔、仕事の関係で奥村愛さんにお会いした時、このレコードを持っていてよく聴いている旨お話したら、彼女からは、子供の頃のことなので、そのレコードは聴いたことはないけれど、レコードを録音したという話は聞いたことがある、という答えが返ってきました。
いずれにしても手元に置いておきたい隠れた名盤ですね。

  • 2018/05/15 (Tue) 19:53
  • REPLY
Daisy

Daisy

Re: No title

katsudonさん、こんばんは。

このアルバムをLPでお持ちとは流石です。このCD、実にいい音で鳴りますが、ヴァイオリンということでLPはさぞかしいい音でなるのだろうと想像しています。奥村さんですが、腕からするにもう少し録音が残っていてもいいものでしょうが、プロダクションとかいろいろな事情があったのでしょう。それだけ残されたこの録音に希少価値があるということですね。

  • 2018/05/15 (Tue) 22:33
  • REPLY