【新着】ドーリック四重奏団のOp.64(ハイドン)
久々の新着アルバムです。

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ドーリック弦楽四重奏団(Doric String Quartet)によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.64のNo.1からNo.6までの6曲を収めたアルバム。収録はNo.3、4、5が2017年5月5日から7日、その他の曲が同10月23日から25日、イングランド東部の北海沿岸で、オールドバラ音楽祭で知られるオールドバラの北方10kmにあるダンウィッチ(Dunwich)のポットンホールでのセッション録音。レーベルは英CHANDOS。
ドーリック弦楽四重奏団の演奏はこれまでに2度取り上げています。
2015/04/16 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ドーリック弦楽四重奏団の太陽四重奏曲集(ハイドン)
2013/06/20 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ドーリック弦楽四重奏団のウィグモアホールライヴ
今日取り上げるアルバムはCHANDOSレーベルからリリースされているハイドンの弦楽四重奏曲集の第3巻。2009年のウィグモアホールでの素晴らしいライブの後、第1巻のop.20が2013年の収録、第2巻のOp.76が2015年の収録、今回リリースされた第3巻のOp.64が2017年の収録ということで、非常に計画的にリリースを重ねてきている状況。第1巻はまだちょっと固さが残っているようで、ウィグモアホールの熱気あるライヴとはちょっと差があったというのが正直なところ。そして第2巻はわずかに表現意欲が過ぎてハイドンの流れの良さを活かしきれない感じもしたので取り上げませんでしたが、今度の第3巻はどのような仕上がりか気になり取り上げた次第。1巻以降はメンバーに変動はありません。
第1ヴァイオリン:アレックス・レディントン(Alex Redington)
第2ヴァイオリン:ジョナサン・ストーン(Jonathan Stone)
ヴィオラ:エレヌ・クレモン(Hélène Clément)
チェロ:ジョン・マイヤースコウ(John Myerscough)
ただし、ライナーノーツを見てみると、新たに全員の弓がルイス・エミリオ・ロドリゲス・キャリントン(Luis Emilio Rodriguez Carrington)作のバロックボウを使っていると書かれています。第1巻、第2巻ともその表記はなく、また録音会場は3巻共通ということで、この巻から弦の音色の違いにも関心が集まります。
ということで、第2巻のOp.76をちょっと聴いてから第3巻を聴き始めると、確かに弦の音色のニュアンスが変わりました。第2巻までは現代楽器の音色ですが、第3巻では透明感よりは色彩感が感じられる柔らかな音に変化。特に低音部の芯がしっかりした印象に。これが音楽の作りにも影響するんですね。
Hob.III:65 String Quartet Op.64 No.1 [C] (1790)
ちょっと古楽器に近いニュアンスを帯びることで、このクァルテットのメリハリの効いた表現がかえって自然な印象に聴こえてくるから不思議ですね。特にチェロのフレーズがくっきりと浮かび上がって聴こえます。基本的にはかなり表現意欲が先走って大げさに聴こえる演奏なんですが、それがキアロスクーロのような洗練の極致を感じさせるかというと、そこまでではなく、もう少し抑えた方がハイドンの曲の面白さが映えるという感じ。ただしそれが古楽器風の響きによって、美化されるというニュアンスでしょうか。楽章が進むうちに、この表現の起伏の大きさが曲自体の持つドラマティックな印象をしっかりと描いているように思えてきます。柔らかくデフォルメされていくうちにその魅力がわかってきた感じです。その意を強くしたのが3楽章。フィナーレはちょっとパート間のメロディーの受け渡しと音色がバラつき、ハイドンのコミカルな音楽を持て余す感じ。パート間の音楽の揃いがピタリと来ないのがこのクァルテットのちょっともの足りないところ。
Hob.III:68 String Quartet Op.64 No.2 [b] (1790)
短調の入り。1曲目と同じ録音期日ゆえ音色にさしたる変化はありません。1楽章途中のピチカートをかなり目立つように強調。相変わらず若干大げさな表現が印象的。ハイドンの曲の面白さよりも、このクァルテットの踏み込んだ表現がちょっと気になり音楽に没入できません。初めてファイの交響曲の演奏を聴いた時の違和感に似た感触を感じます。続く2楽章ではくっきりとした起伏も徐々に表現に滑らかさと一体感が加わることでまとまりも良くなってきます。チェロの雄弁なボウイングからヴィオラとヴァイオリンにフレーズをつないでいきながら静かに楽章を終えます。メヌエットに入るとさらにしなやかさが加わり、特にトリオ部分のヴァイオリンの高音の艶やかさはなかなかもの。そしてフィナーレはくどい表現は少し後退して流すように展開して終わります。
Hob.III:67 String Quartet Op.64 No.3 [B flat] (1790)
この曲は前2曲とは収録日が異なるためか、響きもちょっと異なり、演奏も冒頭から伸びやかさが目立って、パート間のバランスもだいぶ整って聴こえます。ほんのわずかな違いなんですが、音楽の印象がガラリと変わります。表現の濃さはあまり変わらないのですが、響きの統一感がそう聴こえさせるのでしょう。1楽章の踏み込みに対して、続くアダージョでゆったりと受けますが、このリラックス感の深さも表現の本質的な幅の大きさを感じさせる見事なもの。ここにきてようやくこのクァルテットの良さをしっかりと印象付けます。特に弱音部の美しさは惚れ惚れとするほど。奏者間のバランスも非常に良く、メヌエットに入るとさらにキレ良く響きます。トリオ部分のユーモラスなボウイングも効果的。全てがいい方向に作用してこれがこのクァルテットの本領を感じさせる出来。ハイドンのクァルテットにしては大規模なフィナーレも力みなくバランスも良い期待通りの素晴らしさ。いやいや、これは納得の出来でしょう。
レビューはここまでにしておきます。CD2の3曲も収録時期がNo.3と同じNo.4とNo.5のひばりはいい出来でした。先にレビューした第1巻の時もそうでしたが、曲によってばらつきがかなりあるというのが正直なところ。この第3巻でもNo.3の演奏を聴くと素晴らしい才能の持ち主であることは明白。ただしNo.1、No.2の演奏を聴くと表現意欲が少し空回りして聴こえるの正直なところ。これがセッション録音であることを考慮すると、これは奏者のみならず、プロデューサーの耳の問題もあるのかもしれないとの想像が働きます。というのもこのシリーズのプロダクションの仕上がりもジャケット写真やデザインを見る限り今ひとつ垢抜けない感じを残してしまっている感じ。同じく新進気鋭のキアロスクーロ四重奏団の太陽四重奏曲集は演奏、プロダクション共に素晴らしいレベルでリリースしてきています。こうなると、このドーリック四重奏団のライヴを聴いてみたくなるところですね。評価はNo.3、No.4、No5が[+++++]、その他が[++++]とします。

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ドーリック弦楽四重奏団(Doric String Quartet)によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.64のNo.1からNo.6までの6曲を収めたアルバム。収録はNo.3、4、5が2017年5月5日から7日、その他の曲が同10月23日から25日、イングランド東部の北海沿岸で、オールドバラ音楽祭で知られるオールドバラの北方10kmにあるダンウィッチ(Dunwich)のポットンホールでのセッション録音。レーベルは英CHANDOS。
ドーリック弦楽四重奏団の演奏はこれまでに2度取り上げています。
2015/04/16 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ドーリック弦楽四重奏団の太陽四重奏曲集(ハイドン)
2013/06/20 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ドーリック弦楽四重奏団のウィグモアホールライヴ
今日取り上げるアルバムはCHANDOSレーベルからリリースされているハイドンの弦楽四重奏曲集の第3巻。2009年のウィグモアホールでの素晴らしいライブの後、第1巻のop.20が2013年の収録、第2巻のOp.76が2015年の収録、今回リリースされた第3巻のOp.64が2017年の収録ということで、非常に計画的にリリースを重ねてきている状況。第1巻はまだちょっと固さが残っているようで、ウィグモアホールの熱気あるライヴとはちょっと差があったというのが正直なところ。そして第2巻はわずかに表現意欲が過ぎてハイドンの流れの良さを活かしきれない感じもしたので取り上げませんでしたが、今度の第3巻はどのような仕上がりか気になり取り上げた次第。1巻以降はメンバーに変動はありません。
第1ヴァイオリン:アレックス・レディントン(Alex Redington)
第2ヴァイオリン:ジョナサン・ストーン(Jonathan Stone)
ヴィオラ:エレヌ・クレモン(Hélène Clément)
チェロ:ジョン・マイヤースコウ(John Myerscough)
ただし、ライナーノーツを見てみると、新たに全員の弓がルイス・エミリオ・ロドリゲス・キャリントン(Luis Emilio Rodriguez Carrington)作のバロックボウを使っていると書かれています。第1巻、第2巻ともその表記はなく、また録音会場は3巻共通ということで、この巻から弦の音色の違いにも関心が集まります。
ということで、第2巻のOp.76をちょっと聴いてから第3巻を聴き始めると、確かに弦の音色のニュアンスが変わりました。第2巻までは現代楽器の音色ですが、第3巻では透明感よりは色彩感が感じられる柔らかな音に変化。特に低音部の芯がしっかりした印象に。これが音楽の作りにも影響するんですね。
Hob.III:65 String Quartet Op.64 No.1 [C] (1790)
ちょっと古楽器に近いニュアンスを帯びることで、このクァルテットのメリハリの効いた表現がかえって自然な印象に聴こえてくるから不思議ですね。特にチェロのフレーズがくっきりと浮かび上がって聴こえます。基本的にはかなり表現意欲が先走って大げさに聴こえる演奏なんですが、それがキアロスクーロのような洗練の極致を感じさせるかというと、そこまでではなく、もう少し抑えた方がハイドンの曲の面白さが映えるという感じ。ただしそれが古楽器風の響きによって、美化されるというニュアンスでしょうか。楽章が進むうちに、この表現の起伏の大きさが曲自体の持つドラマティックな印象をしっかりと描いているように思えてきます。柔らかくデフォルメされていくうちにその魅力がわかってきた感じです。その意を強くしたのが3楽章。フィナーレはちょっとパート間のメロディーの受け渡しと音色がバラつき、ハイドンのコミカルな音楽を持て余す感じ。パート間の音楽の揃いがピタリと来ないのがこのクァルテットのちょっともの足りないところ。
Hob.III:68 String Quartet Op.64 No.2 [b] (1790)
短調の入り。1曲目と同じ録音期日ゆえ音色にさしたる変化はありません。1楽章途中のピチカートをかなり目立つように強調。相変わらず若干大げさな表現が印象的。ハイドンの曲の面白さよりも、このクァルテットの踏み込んだ表現がちょっと気になり音楽に没入できません。初めてファイの交響曲の演奏を聴いた時の違和感に似た感触を感じます。続く2楽章ではくっきりとした起伏も徐々に表現に滑らかさと一体感が加わることでまとまりも良くなってきます。チェロの雄弁なボウイングからヴィオラとヴァイオリンにフレーズをつないでいきながら静かに楽章を終えます。メヌエットに入るとさらにしなやかさが加わり、特にトリオ部分のヴァイオリンの高音の艶やかさはなかなかもの。そしてフィナーレはくどい表現は少し後退して流すように展開して終わります。
Hob.III:67 String Quartet Op.64 No.3 [B flat] (1790)
この曲は前2曲とは収録日が異なるためか、響きもちょっと異なり、演奏も冒頭から伸びやかさが目立って、パート間のバランスもだいぶ整って聴こえます。ほんのわずかな違いなんですが、音楽の印象がガラリと変わります。表現の濃さはあまり変わらないのですが、響きの統一感がそう聴こえさせるのでしょう。1楽章の踏み込みに対して、続くアダージョでゆったりと受けますが、このリラックス感の深さも表現の本質的な幅の大きさを感じさせる見事なもの。ここにきてようやくこのクァルテットの良さをしっかりと印象付けます。特に弱音部の美しさは惚れ惚れとするほど。奏者間のバランスも非常に良く、メヌエットに入るとさらにキレ良く響きます。トリオ部分のユーモラスなボウイングも効果的。全てがいい方向に作用してこれがこのクァルテットの本領を感じさせる出来。ハイドンのクァルテットにしては大規模なフィナーレも力みなくバランスも良い期待通りの素晴らしさ。いやいや、これは納得の出来でしょう。
レビューはここまでにしておきます。CD2の3曲も収録時期がNo.3と同じNo.4とNo.5のひばりはいい出来でした。先にレビューした第1巻の時もそうでしたが、曲によってばらつきがかなりあるというのが正直なところ。この第3巻でもNo.3の演奏を聴くと素晴らしい才能の持ち主であることは明白。ただしNo.1、No.2の演奏を聴くと表現意欲が少し空回りして聴こえるの正直なところ。これがセッション録音であることを考慮すると、これは奏者のみならず、プロデューサーの耳の問題もあるのかもしれないとの想像が働きます。というのもこのシリーズのプロダクションの仕上がりもジャケット写真やデザインを見る限り今ひとつ垢抜けない感じを残してしまっている感じ。同じく新進気鋭のキアロスクーロ四重奏団の太陽四重奏曲集は演奏、プロダクション共に素晴らしいレベルでリリースしてきています。こうなると、このドーリック四重奏団のライヴを聴いてみたくなるところですね。評価はNo.3、No.4、No5が[+++++]、その他が[++++]とします。
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