作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ウォルフガング・シュルツ一家によるフルート三重奏曲集(ハイドン)

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しばらく交響曲が多かったので、室内楽の名盤を取り上げることにしましょう。

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ウォルフガング・シュルツ(Wolfgang Schulz)のフルート、ゲルハルト・シュルツ(Gerhard Schulz)のヴァイオリン、ワルター・シュルツ(Walther Schulz)のチェロで、ハイドンのフルート三重奏曲6曲(Hob.IV:6、IV:7、IV:8、IV:9、IV:10、IV:11)などを収めたLP。LPはTELEFUNKENのハイドンエディションの第8巻としてリリースされている2枚組でこの他にフルート四重奏曲などが収められているもの。録音データはPマークが1978年と記載されているのみです。

ウォルフガング・シュルツは皆さまよくご存知、ウィーンフィルの首席フルート奏者として活躍した人。ウィーンフィルの様々な録音で色彩感溢れる豊穣な音色を聴かせてきました。また室内楽の演奏も数多く、ハイドンではこれまでに2度ほど演奏を取り上げています。

2015/09/28 : ハイドン–室内楽曲 : ランパル、シュルツ、オダンの「ロンドン・トリオ」(ハイドン)
2011/09/02 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】ウォルフガング・シュルツによるリラ・オルガニザータ協奏曲

最初の記事を取り上げた頃はご存命だったんですが、2013年3月に亡くなられています。1970年にウィーンフィルに入団してから、2011年に退団するまで、首席フルート奏者として活躍し、多くの録音を残しています。ヴァイオリンのゲルハルト・シュルツはウォルフガングの兄でアルバンベルク四重奏団の第2ヴァイオリンとして有名な人。そしてチェロのワルター・シュルツはウォルフガングの弟でウィーン交響楽団の首席チェリスト。ちなみにこのLPの2枚目に収録されている四重奏でヴィオラを弾くのはウラ・シュルツ(Ulla Schulz)はウォルフガングの奥さん。ということでこのLPは完全な(笑)シュルツ一族での演奏です。

このLP、針を落とした途端に、深い深い響きに引き込まれます。

Hob.IV:6 Op.38-1 Trio für Violine (oder Flöte), Violine und Violincello Nr.1 [D] (1784)
1楽章は歌劇「月の世界」第二幕中の合唱から転用。ゆったりとしたテンポというかゆったりとした雰囲気の中、フルートの音色が幽玄に漂います。この雰囲気はフルートトリオというよりバリトントリオのような感じ。ウォルフガング・シュルツも家族での演奏ということで完璧にリラックスしての演奏。後年の華やかな音色を感じさせるものの、適度な豊かさと素晴らしく落ち着いた表現がこの曲の魅力を充分に表しています。LPのコンディションも良く深い響きを堪能。ヴァイオリンとチェロはさらりとフルートに寄り添っていますが、よく聴くと流石に見事な演奏。フルートに花を持たせる役に徹しています。

Hob.IV:7 Op.38-2 Trio für Violine (oder Flöte), Violine und Violincello Nr.2 [G] (1784)
この曲も歌劇「月の世界」第二幕中のフラミーナのアリアからの転用。出だしからフルートとヴァイオリンが見事に重なってメロディーを奏でるえもいわれぬ見事な雰囲気。この音楽をのんびりと楽しむ快感に包まれます。2楽章のアダージョのチェロが奏でるメロディーを聴くと絶妙なる強弱のコントロールによって精緻な音楽が作られていることがわかります。3つの楽章の構成と展開の面白さはハイドンならでは。3楽章ではヴァイオリンが活躍して聴かせどころを作ります。

Hob.IV:8 Op.38-3 Trio für Violine (oder Flöte), Violine und Violincello Nr.3 [C] (1784)
前2曲とは全く異なる入りにハッとします。フルートが鳥の鳴き声のようにさえずり、ヴァイオリンとヴィオラがそれに応えます。アンサンブルの聴かせどころの多様さは流石ハイドン。この面白さに目覚めるとハイドンの室内楽は宝物に聴こえるんですね。3楽章のユーモラスなチェロの呼びかけはその真骨頂。演奏していてもこれは楽しいでしょうね。奏者の微笑みが見えてくるような至福のひととき。

Hob.IV:9 Op.38-4 Trio für Violine (oder Flöte), Violine und Violincello Nr.4 [G] (1784)
この曲はバリトントリオの97番からの転用。バリトントリオでも最も有名な曲の一つなので聴いたことがある人も多いでしょう。バリトンの場合は途中でバリトンの開放弦が鳴らされる音が入るのですが、その音を思い浮かべながら聴き進めます。幽玄な雰囲気ながら、不思議とほのぼのとした感じもあり、独特の曲調が頭に残ります。原曲は7楽章構成ですが、そこから3楽章にまとめ直し、フィナーレは原曲と同じ。うまい編曲です。

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LPをひっくり返して続きを聴きます。

Hob.IV:10 Op.38-5 Trio für Violine (oder Flöte), Violine und Violincello Nr.5 [A] (1784)
グッと落ち着いた曲調に戻ります。聴き進むうちにこの6曲の中でも作曲技法が進歩しているよう。たった3本の楽器のでのアンサンブルですが、ハーモニーの豊かさはかなりのもの。2楽章は短調になり、音楽に深い陰影が伴います。その陰りを吹き払うような3楽章とこれまた見事な展開。

Hob.IV:11 Op.38-6 Trio für Violine (oder Flöte), Violine und Violincello Nr.6 [D] (1784)
この曲集の最後は、フルートが天真爛漫に高音のメロディーをきらびやかに吹抜きます。フルートという楽器の響きの美しさをしっかりと聴かせ、さらにこれでもかと展開して美音を印象づけます。シュルツの美音がハイドンの意図を代弁しているよう。続いてこの曲集で最も充実したアダージョ楽章。細切れに音を置いて行くことで深い詠嘆の感情が生まれます。そしてそれを完璧に拭い去るような明るい響きの3楽章。ヴァイオリンがジブシー風の音楽を奏でますが、これも歌劇「月の世界」の第二幕のバレエ音楽からの転用とのこと。

ここまでの6曲があっという間に流れます。シュルツ一家によるこのフルート三重奏曲集ですが、この曲集のオーソドックスな名演としておすすめしたいもの。ただし、さっと見た限り、CDもネット音源もない模様。これだけの名演盤が手に入らないということは大きな損失です。ちなみにLPの方は丹念に探せば出会えるでしょう。この曲にはACCENTの古楽器によるクイケン兄弟盤やGLOBEのシェーンブルン・アンサンブル盤などの名盤もありますが、曲自体の面白さはこのシュルツ盤に軍配が上がるでしょう。もちろん評価は[+++++]とします。

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