作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

マリナー/アカデミー室内管の99番、102番(ハイドン)

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今日は珍しいCD。

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サー・ネヴィル・マリナー(Sir Neville Marriner)指揮のアカデミー室内管弦楽団(Academy of St Martin in the Fields)の演奏で、ハイドンの交響曲99番、102番の2曲を収めたアルバム。収録は1990年10月、ロンドンのウォルサムストウ・アッセンブリーホールでのセッション録音。レーベルはPHILIPS。

このアルバムは私も最近までその存在を知らなかったもの。マリナーはPHILIPSにハイドンの交響曲を大量に録音していますが、代表的なものあ名前付き交響曲集としてLPならびにCDでリリースされているものと、パリ交響曲集の6曲。ちなみに名前付き交響曲集は手元のCDを確認すると1968年から1981年までの録音。そしてパリセットの方は1976年から1982年にかけての録音。

ちなみにPHILIPSレーベルのハイドンの交響曲録音にはもちろんコリン・デイヴィスがコンセルトヘボウ管を振ったザロモンセットやパリセットもあり、そちらは1975年から1981年にかけての録音。さらに1986年以降90年代はブリュッヘンと18世紀オーケストラによる録音が本格化し、こちらもザロモンセットやパリセット、加えて初期の交響曲まで録音されている状況なんですね。

このようにPHILIPSレーベルではマリナー以降も2人の名指揮者によるハイドンの交響曲のまとまった録音シリーズが進行していた中、一旦一区切りついていたマリナーのシリーズに、1990年に99番と102番が録音されているという、ちょっといわくありげな状況なわけです。このような流れの中で名前のない99番と102番というザロモンセットでも指折りの傑作交響曲が録音されたということは、おそらく直前のコンサートで取り上げた演奏が評判になったので録音されたというのが最もありそうな流れですね。

ということで、このアルバム、まずは所有盤リストに登録するためにCDプレイヤーにかけてみると、いつものマリナーとは異なり、いきなり渾身の響きが流れ出してきます。しかもオケの響きはコンセルトヘボウよりも味わい深さ! もちろんすぐに演奏に惹きつけられたのは言うまでもありません。

Hob.I:99 Symphony No.99 [E flat] (1793)
分厚くしなやかな序奏から惚れ惚れとする響きが広がります。まるでコンセルトヘボウでの録音のような響きの美しさ。しかも低音の厚みがあるピラミッドバランス! 主題に入るとここはマリナーらしい愉悦感が広がります。しなやかつ流麗なメロディーの美しさが最大限に活かされた演奏。徐々に力感も満ちてくると同時にイキイキとした推進力に満ち溢れます。ハイドンらしい古典の均衡を踏まえた見事な構成。展開部に差し掛かると曲想の変化をさらりとこなして、推進力はそのまま。このさりげないセンスもハイドンの演奏では非常に重要な要素。1楽章のあまりの完成度に驚きます。
続くアダージョはハイドンの美しいメロディーの見本帳のような楽章。ここでもさらりとした表情の中からジワリと湧き上がる暖かな音楽が絶品。オケの響きの美しさと録音の素晴らしさに圧倒されます。一貫して淀みなく流れる音楽。内声部が実に雄弁で何気に起伏がしっかりとついているので聴きごたえ充分。
メヌエットはオケの吹き上がりの良さを楽しむよう。パート間のバランスも音の溶け合いも完璧。これぞハイドンのメヌエット。トリオはそよ風が吹き抜けるように爽やかにこなし、再びオケが活躍してキレ味抜群な演奏で結びます。
ここまで完璧なオーケストラコントロールを聴かされると嫌が応にもフィナーレに期待が集まります。力むことなく実に軽快にオケがマリナーの指示に応えます。木管陣の軽やかさといったら並ではありません。終盤すっと力を抜くところのセンスも抜群。これぞ最上の演奏と言っていいでしょう。見事。

Hob.I:102 Symphony No.102 [B flat] (1794)
99番の出来の良さに惚れ惚れとしていたんですが、続く102番はそれを上回る素晴らしさ。力感の表現が図抜けています。冒頭から不気味な迫力に溢れ、序奏は見事な緊張感に包まれたまま進行します。徐々に力感を増していく件の素晴らしさは他に類を見ないほど。まさに白亜の大神殿が眼前に聳えているような迫力。1楽章だけでもこの曲の真髄をえぐるように押し寄せてきます。
この曲のアダージョも前曲同様美しいメロディーの宝庫です。表現の幅が広がり、奏者もリラックスしての演奏だけに、ゾーンに入って音楽に類希れな一体感が宿ります。メヌエットにも何かが宿ってこちらも類希れな迫力。あえて力を抜いて柔らかくまとめたトリオとの対比も見事。オケも絶好調。フィナーレはオケが指示を待つまでもなくどんどん展開しながらクライマックスに近づいていきます。低音弦の迫力に支えられながら、木管群が響きを乗せていき、最後までセンス良く遊び心を散りばめて終わります。

いやいや、これは素晴らしい。オーソドックスなハイドンの交響曲の演奏を極めた録音と言っていいでしょう。選曲も99番と102番ということで問題なし。もしかしたらマリナーは名前のないザロモンセットの録音をすることで、パリセットに続いてザロモンセットの完成を目指していたのかもしれません。このレベルの演奏が補完されればさぞかし素晴らしいザロモンセットが完成していたでしょうね。ということでこのアルバム、評価は両曲とも[+++++]を進呈です。未聴の方、是非聴いてみてください!

(参考:これまで取り上げたマリナーの演奏)
2012/10/26 : ハイドン–交響曲 : ネヴィル・マリナー/アカデミー室内管の「悲しみ」
2012/08/21 : ハイドン–交響曲 : マリナー/アカデミー室内管の86番
2011/08/10 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番1】マリナー/ドレスデン・シュターツカペレのネルソンミサ
2011/04/24 : ハイドン–協奏曲 : バリー・タックウェル/マリナーのホルン協奏曲
2011/03/03 : ハイドン–協奏曲 : ハーデンベルガー、マリナー/ASMFのトランペット協奏曲
2011/02/27 : ハイドン–オラトリオ : フィッシャー=ディースカウフル登場、マリナー/ASMFの天地創造-2
2011/02/27 : ハイドン–オラトリオ : フィッシャー=ディースカウフル登場、マリナー/ASMFの天地創造
2010/12/06 : ハイドン–声楽曲 : マリナー/ドレスデン・シュターツカペレの戦時のミサ

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