作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

リステンパルト/ザール室内管の朝、昼、晩(ハイドン)

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今日は秘蔵お宝盤。

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カール・リステンパルト(Karl Ristenpart)指揮のザール室内管弦楽団(Chamber Orchestra of The Saar)の演奏で、ハイドンの交響曲6番「朝」、7番「昼」、8番「晩」の3曲を収めたLP。ヴァイオリンソロはヘンデル(G. F. Hendel)、チェロソロはヒンドリクス(B. Hindrichs)、フルートソロはクロム(K. Cromm)。収録情報は記されていませんが、ネットを色々調べてみると1965年頃の録音かと思われます。このアルバムはモノラルですが、nonesuchからステレオ盤もリリースされています。レーベルは仏Le Club Français du Disque。

リステンパルトのハイドンはこれまでに何度か取り上げてきています。

2017/11/19 : ハイドン–交響曲 : リステンパルト/ザール室内管の交響曲21番、マリア・テレジア(ハイドン)
2015/12/31 : ハイドン–交響曲 : カール・リステンパルト/ザール室内管の81番、王妃(ハイドン)
2013/01/07 : ハイドン–交響曲 : カール・リステンパルトの驚愕、軍隊、時計
2010/02/04 : ハイドン–交響曲 : 絶品! リステンパルトのホルン信号

特に昨年11月に取り上げたnonesuchの21番、マリアテレジアのアルバムはあまりに素晴らしい演奏と、超絶的な録音によってノックアウトされた名盤。文字通り高雅な演奏によりハイドンの名曲のまろやかな響きに包まれる幸福感に満たされるアルバムでした。ということで今日は手元にあるアルバムからまだ取り上げていないアルバムを選びました。

リステンパルトのハイドンについてはcherubinoさんのブログで何度かに渡って取り上げられていますので、こちらもご参照ください。

毎日クラシック:リステンパルトのハイドン演奏まとめ(その1)
毎日クラシック:リステンパルトのハイドン演奏まとめ(その2)
毎日クラシック:リステンパルトのハイドン演奏まとめ(その3・板起こしCD編)

Hob.I:6 Symphony No.6 "Le matin" 「朝」 [D] (1761?)
朝の霞の中からほのかに光が射してくるような独特の入りのアダージョを得も言われぬような柔らかな響きで見事に描くリステンパルト。最初からあまりに見事な演奏に惹きつけられます。アレグロに入るとテンポは心地よい速さで非常に見通しの良い演奏。オケのアンサンブルは微塵の乱れも外連味もなく、淡々とリステンパルトの棒に合わせた自然極まりない演奏。ソロの多いこの曲だけに各奏者の腕の見せ所が多い曲ですが、木管を中心に実に味わい深い、しかも全てのパートの音楽性がピタリと揃った完璧な演奏。肝心の録音はモノラルながら絶妙な柔らかさで豊かな低音と抜群の安定感。LPのコンディションはほどほどながらモノラルカートリッジの盤石の安定感で非常に聴きやすい録音です。
2楽章のアダージョに入ると今度は弦楽器の艶やかつ味わい深い音色に耳を奪われます。あまりに見事なヴァイオリンソロに昇天。少々古びてはいるものの、独特の弦楽器の燻らせたような響きの味わい深さは異次元。フレーズの一つ一つがかくあるべしと言わんばかりに決まって、素晴らしいまとまり。この楽章の音楽の深さをこれほどまでに感じさせる演奏はありません。
メヌエットは後年のシュトルム・ウント・ドラング期の傑作交響曲の完成度を先取りしたようなわずかに仄暗い雰囲気を感じさせる曲ですが、その独特の響きの香りを見事に描いていきます。フルートやファゴットの見事な演奏が独特の気配を色濃く描きます。
そしてフィナーレは少しテンポを落としてじっくりと描いていこうということでしょう。フルートが軽やかに響き渡るたびに華やかな響きに包まれます。ゆったりと音楽に身を任せる至福のひととき。1曲目からノックアウト気味です。

Hob.I:7 Symphony No.7 "Le midi" 「昼」 [C] (1761?)
朝の完成度そのままに昼に入ります。演奏も録音も聴き進めるうちに全く古さを感じることはなくなります。それどころかハイドンの音楽のあまりに自然であまりに美しい解釈に普遍性を帯びて聴こえるほど。この曲でもヴァイオリンソロの美しさは突き抜けてます。今度は少しゆったりとした弦楽器の刻むリズムに身を任せながら、各楽器のソロが愉悦感たっぷりに飛び回るように自在に妙技を聴かせます。
続く2楽章はレチタティーヴォですが、いつもながら交響曲としては意外な展開に驚くばかり。劇的な楽章を挟んだことで続くアダージョの幸福感が際立つという寸法。この楽章の美しさは筆舌に尽くしがたいもの。柔らかいオケの音色に様々な楽器の音色が織り込まれて、まさに極上の響き。終盤のソロの応酬の部分は雰囲気満点。

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レコードをひっくり返してメヌエット。実に落ち着いたテンポでゆったりとリズムを刻みます。トリオのゆったりと演奏を楽しむ雰囲気も絶品。何気にホルンのとろけるような音色が心地よいですね。そしてフィナーレに入ると各パートの妙技はさらに冴え渡り、全くブレずに曲をまとめます。

Hob.I:8 Symphony No.8 "Le soir" 「晩」 [G] (1761?)
前2曲ですっかりメロメロになってますので、もはやリステンパルトの術中にハマってます。どこを取っても高雅でゆったりとしたオケの響きの美しさに圧倒されます。モノラル録音にもかかわらず奥行きと広さを感じる素晴らしい録音によって、この曲の真の姿を間近で見るよう。続くアンダンテはただでさえ美しいメロディーがさらに磨かれて聴くものの心に刺さるような浸透力を帯びてきます。時にしなやかに、時に大胆に大きく変化をつけて、この名曲をしっかりと料理していきます。メヌエットは情に溺れることなく堂々とした演奏のなか静けさとくっきりとしたメロディーの余韻がよくマッチしています。最後の大胆な構成のフィナーレも攻めた形になっています。古典のバランスを保ち、オケが破綻しない範囲で、力強いアクセントと大胆なフレージングを印象付けるあたり、ただの古き良き時代の演奏ではありませんね。最後まで刺激に満ちた素晴らしい演奏でした。

リステンパルトと手兵ザール室内管によるハイドンの朝、昼、晩でしたが、この曲集の最良の演奏と言ってもいいでしょう。古い録音でしかもモノラルながら、この曲に仕込まれたアイデアや機知を見事に浮かび上がらせ、しかも絶妙なるセンスの良さでまとめあげた稀有なる名盤です。先日聴いたnonesuchの21番、マリアテレジアはさらに素晴らしい録音で見事な演奏を収録していましたので、この曲のnonesuch盤も捕獲予定リストに追記ですね。もちろん評価は3曲とも[+++++]としました。

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