作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ハリー・クリストファーズ/ヘンデル&ハイドン・ソサエティのラメンタチオーネ、86番など(ハイドン)

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ちょっと仕事が忙しくて間が空いてしまいました。今日は新着CD。

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ハリー・クリストファーズ(Harry Christophers)指揮のヘンデル&ハイドン・ソサエティ(Handel and Haydn Society)の演奏で、ハイドンの交響曲26番「ラメンタチオーネ」、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲3番、ハイドンの交響曲86番の3曲を収めたアルバム。ヴァイオリン協奏曲のソロはアイスリン・ノスキー(Aisslinn Nosky)。収録は2017年1月27日、29日、ボストンのシンフォニーホールでのライヴ。レーベルはCORO。

ハリー・クリストファーズとヘンデル&ハイドン・ソサエティはこのところハイドンの初期の交響曲とパリセットの交響曲をセットにしたアルバムをシリーズ物としてリリースし続けています。その最新盤が今日取り上げるアルバム。このシリーズはこれまで2度ほど取り上げています。

2016/05/01 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ハリー・クリストファーズ/ヘンデル&ハイドン・ソサエティの昼、雌鶏など(ハイドン)
2013/09/26 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ハリー・クリストファーズ/ヘンデル&ハイドン・ソサエティの朝、熊など(ハイドン)

それぞれアメリカの古楽器によるハイドンの交響曲の演奏の現在を伝えるなかなかのものでした。このシリーズ、プログラミングについては明確な企画意図がありそうですね。これまでの演奏から今回のアルバムまでの曲構成を整理してみましょう。

交響曲6番「朝」、ヴァイオリン協奏曲VIIa:4、交響曲82番「熊」(2013年)
交響曲7番「昼」、ヴァイオリン協奏曲VIIa:1、交響曲83番「雌鶏」(2016年)
交響曲8番「晩」、ヴァイオリン協奏曲VIIa:3、交響曲84番(2017年)

そして今回のアルバムが、

交響曲26番「ラメンタチオーネ」、モーツァルトヴァイオリン協奏曲3番、交響曲86番(2017年)

ということで、この後パリセットの85番「王妃」、87番が来るのは確実でしょう。組み合わされる初期交響曲の方は44番「悲しみ」、49番「受難」と来るか、22番「哲学者」、31番「ホルン信号」と来るのか何となく楽しみです。間に挟まれる協奏曲はオケのヘンデル&ハイドン・ソサエティのコンサート・ミストレスのアイスリン・ノスキーがソロを担当するヴァイオリン協奏曲が続いていますので、こちらはモーツァルトのヴァイオリン協奏曲4番、5番というのが順当なところでしょう。このような企画ものの面白さを味合わせてくれる好企画ですね。

演奏の方も最初の方は硬さを感じさせるところもあったんですが、ここにきて響きの自然さが際立つようになり、いい感じになってきました。

Hob.I:26 Symphony No.26 "Lamentatione" 「ラメンタチオーネ」 [d] (before 1770)
この曲の刷り込みはハイドンにのめり込むきっかけとなったピノック盤ですが、ピノック盤に近い颯爽とした入りが好印象。速めのテンポで爽快感あふれる演奏。響きはピノックよりしなやかで、ファイやアントニーニらのようなキレキレな弾けた感じはなく、古楽器の響きの自然な美しさを生かした演奏。これまでリリースされた4枚の中では力が抜けて自然な美しさが聴きどころとなるまでの洗練を感じさせてきました。程よいしなやかさに、程よいアクセント。単調さはなく音楽がしっかり脈打ってハイドンの曲の面白さがいきいきと描かれます。
独特の美しいメロディーで知られるアダージョは、クリストファーズの自然なデュナーミクのコントロールによって淡々と演奏されることで、かえって深い情感を感じさせる秀演。このアダージョや哲学者の1楽章はシンプルな音形だからこそか、淡々とした演奏が深みを感じさせます。よく聴くとオケのパート間の音量バランスや溶け合うような響きが緻密なコントロールによって生まれていることがわかります。凛とした美しいいメロディーから時代の気配が立ち上ります。まさに至福のひととき。
意外に良かったのが終楽章のメヌエット。仄暗い短調のメロディーを適度な緊張感と透明感の心地よいバランスでまとめた演奏。そしてトリオではセンス良く力を抜いてメリハリをつけます。流れの良さと響きの自然さが際立つ見事なコントロールで曲をまとめました。

続くモーツァルトも基本的に外連味なく素直にまとめた演奏ですが、同様にバランスよくしなやかさで聴かせる演奏ですが、古楽器の響きの美しさが抜きん出ているので聴きごたえ十分。アイスリン・ノスキーのヴァイオリンも流石にこのオケのコンサート・ミストレスだけあって見事な調和。協奏曲のソロとしてはもう少し踏み込みを期待したいところもありますが、ソロの存在感ではなくアンサンブルの楽興で聴かせるという珍しい例として悪くありません。ライナーノーツに写るノスキーの姿はちょっとパンクロッカー風ですが、その姿でオーセンティックな響きの魅力を繰り出すという存在がパンクなのでしょう(笑) これはこれで楽しめる演奏でした。

Hob.I:86 Symphony No.86 [D] (1786)
さて、期待の86番。ラメンタチオーネの演奏から想像するに、悪かろうはずはありません。序奏はアッサリした感じも残しながら、響きの美しさで聴かせる演奏。主題に入ると予想通り速めのテンポで畳み掛けるようにグイグイいきます。やはりこの曲はリズムのキレが最もインパクトがありますね。起伏も見事について素晴らしい躍動感に包まれます。速めでキレのあるリズムの連続による血湧き肉躍る陶酔感。この曲に仕込まれたハイドンの機知を見事に汲み取り、様々な楽器が代わる代わるにリズムを打っていく見事な連携。ディティールも何気に凝ったところも散りばめられ、一筋縄では行かないところを印象付けます。1楽章の見事さにすっかり呑まれました。
続くラルゴもアッサリしなやかながら濃い情感をまといます。速めのテンポによる見通しの良さも併せ持ち、続くメヌエットでは、その見通しの良さを保ちながらダイナミックに弾みます。響きの余韻を味わいながらの重なる響きとのコントラストを楽しむ余裕があります。そしてトリオでのコミカルな展開でスッと力を抜いて再びダイナミクスに圧倒される見事な構成。一貫した推進力。
このアルバムの最後を飾るフィナーレはこのオケの機能美を見せつける素晴らしい展開。ハイドンのフィナーレはこうでなくては! 各パートのソロのふわりとした軽さとオケの全奏部の重厚感の対比をくっきりと浮かび上がらせながら頂点に向けて盛り上がっていく快感。強奏部分でもフォルムの美しさを保っているのが完成度の高さを印象付けます。最後は見事にフィニッシュ。これは名演ですね。

ハリー・クリストファーズと手兵、ヘンデル&ハイドン・ソサエティによる交響曲集の4枚目ですが、ここにきて演奏レベルが上がって、これまでの4枚の中では一番の出来。昨今古楽器、あるいは古楽器風の演奏も少なくありませんが、アントニーニやファイやアーノンクール、ピノックなどそれぞれに個性的な響きを持つ中、このアルバムの録音会場となったボストンのシンフォニーホールの響きの良さも手伝って、オーソドックスなタイプの演奏の中でも、最も聴きやすい録音の名演奏盤というのがこのアルバムの位置づけでしょう。もちろんファイやアントニーニもいいんですが、この演奏を聴くとハイドンの曲の純粋な良さを味わえる気がします。評価はハイドンの両曲とも[+++++]とします。

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