作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ラインハルト・カムラーによるニコライミサ、小オルガンミサ(ハイドン)

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たまにはCDを(笑)

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TOWER RECORDS / amazon / HMV&BOOKS onlineicon(いずれも別装丁10枚組)

ラインハルト・カムラー(Reinhard Kammler)指揮のアウグスブルク大聖堂聖歌隊(Soliesten und Kammerchor der Augsburger Domsingknaben), ミュンヘン・レジデンツ室内管弦楽団(Residenz-kammer-orchester München)の演奏で、ハイドンのニコライ・ミサ、小オルガン・ミサ、ミサ・ブレヴィスの3曲を収めたCD。収録は1985年、アウグスブルク西方のヴィオラウ(Violau)にある聖ミカエル巡礼教会(Wallfahrtskirche St. Michael)でのセッション録音。レーベルはEMIマークがついたdeutsche harmonia mundi。

このアルバムは最近オークションで仕入れたもの。ラインハルト・カムラーは手元に大オルガンミサを収めたdeutsche harmonia mundiの1978年録音のCDがありますが、これは少年合唱がかなり荒くちょっと楽しめませんでした。ということで、それから7年後に録音されたこちらのアルバムは、大オルガンミサの少し後に作曲された2曲と初期のミサ曲を収めたもので、コレクションを埋める目的で入手しましたが、これがなんと前アルバムとうって変わって素晴らしい演奏でびっくり! 指揮者の7年の熟成かはたまたプロデュサーの手腕かはわかりませんが、こういうこともあるものですね。

いつものようにラインハルト・カムラーについて調べてみました。1954年、ドイツのアウグスブルク生まれの合唱指揮者。地元アウグスブルクのレオポルド・モーツァルト音楽院、ミュンヘン音楽大学で学び、在学時にこのアルバムでコーラスを担当する少年合唱のアウグスブルク大聖堂聖歌隊を設立し、1982年ケルンで開かれたドイツ合唱コンクールで優勝しました。その後アウグスブルク大聖堂のオルガニストを経て、1995年に同音楽監督に就任。以後毎年クリスマスにはバッハのクリスマス・オラトリオ、イースターにはヨハネ受難曲やマタイ受難曲などを演奏するようになり、2003年からはカムラーとアウグスブルク大聖堂聖歌隊による「バッハインロココ(Bach in Rokoko)」という音楽祭を開催し、これは現在まで続いています。

ということでアウグスブルクで長らく活動を続けている合唱指揮者ラインハルト・カムラーによるハイドンのミサ曲ですが、天地創造も有名指揮者の演奏以上に合唱指揮者による渾身の演奏をいくつも聴いてきましたので、ちょっと納得の出来です。

Hob.XXII:6 "Missa Sancti Nicolai" "Nicolaimesse" 「ニコライミサ」 [G] (1772)
作曲年は1772年とハイドンマニアの方ならピンとくる年。そう、シュトルムウントドラング期のクライマックスの年で、告別交響曲や太陽四重奏曲が書かれた年に書かれたミサ曲。曲はこの創作期に漂う仄暗さとは無縁なほのぼのとした明るさを感じさせるもの。キリエの冒頭から深みのあるしなやかな響きが心地よい演奏。教会での録音らしく残響は多めながら鮮明さを失わない見事な録音。ソプラノからバスまでの歌手の配役を含めて少年合唱のようです。透き通るようなソロとコーラスは非常にレベルが高く大オルガンミサの録音は全く異なり安心して身を委ねられます。全体のコントロールは合唱指揮者らしく奇をてらったところがなく非常に誠実なもの。しかもソロとコーラス、オケが見事なバランスで調和しており、キリエからグロリア、クレド、サンクトゥス、ベネディクトゥスと大河の流れのような一貫した音楽で一気に聴かせ、最後のアニュス・デイの静謐な響きに神々しさが宿ります。最後に冒頭のキリエのメロディが流れると暖かい空気に一変。この曲のキーになる美しいメロディで最初と最後が美しく飾られるわけです。いつもながらハイドンの見事な構成力に唸ります。

Hob.XXII:7 "Missa brevis Sancti Joannis de Deo" "Klein Orgelmesse" 「小オルガンミサ」 [B flat] (c.1775)
ニコライミサとは異なる曲想ながら前曲以上に癒し成分に満ちた入りからグッときます。あくまでもコーラスが主体となる入りがこの演奏のポイントでしょう。華やぐキリエから、リズムを刻むグローリアと進み、クレドでしっとりと沈み込む展開の妙。終始一貫したカムラーのコントロールによって、この小ミサ曲のピュアな魅力が際立ちます。コーラスの響き純度の高さは少年合唱ならでは。サンクトゥスはフーガ的な幽玄な広がりを感じさせ、続くベネディクトゥスではオルガンの伴奏に乗ったボーイソプラノの魅力に圧倒されます。そして最後のアニュス・デイで前曲同様、険しさも感じさせる静謐な響きに至り、祈りの音楽たるミサ曲の核心に迫る見事な集中を見せます。透明な響きの彼方へワープしそうです。

Hob.XXII:1 Missa brevis [F] (1757)
最後の曲はぐっと作曲年代が遡ったハイドンの創作初期の音楽。曲のつくりはぐっと単純になりますが、メロディーラインの美しさはハイドンならでは。構成よりもメロディー自体で聴かせる音楽。カムラーのコントロールは前曲までと同様、非常に丹念なコントロール。曲の展開は前2曲とはかなり異なるので驚きに満ちた発見が多々あります。オケも落ち着いてハイドンの初期の名曲を丹念に描き、ソプラノとメゾソプラノ役の少年による掛け合いをゆったりと支えます。この初期の曲も見事に料理して、アルバム全体を通して敬虔な祈りを感じるピュアな演奏でした。

アウグスブルクの地元で一貫して活躍するラインハルト・カムラーと主兵のアウグスブルク大聖堂聖歌隊らによるハイドンの初期のミサ曲集ですが、この3曲については他の演奏を必要としないほどに一貫して誠実な演奏が心に残りました。オケのコントロールも、有名指揮者ならば聴かせどころを作るのでしょうが、これらの曲にはカムラーの誠実な演奏の方が映えるとの確信を持てる素晴らしい説得力に満ちた演奏です。評価はもちろん3曲とも[+++++]とします。

ちなみに上の写真につけたリンク先のアルバムはdeutsche harmonia mundiによるJ. Haydn Edition<完全生産限定盤>ということで、このアルバムを含む10枚組のCDで、内容も素晴らしい演奏ばかり集めたもので、しかも値段もCD1枚分くらいの廉価なものなので、いま手に入れるのはこのアルバムがいいと思います。

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