ラースロー・ショモギー/ウィーン放送管の78番、哲学者(ハイドン)

ラースロー・ショモギー(Laszlo Somogyi)指揮のウィーン放送管弦楽団(Vienna Radio Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲78番、22番「哲学者」を収めたLP。収録は1964年6月、ウィーンのコンツェルトハウスのモーツァルトザールでのセッション録音。レーベルは米Westminster。
ショモギーのアルバムは以前に1度取り上げております。
2014/08/06 : ハイドン–交響曲 : ラースロー・ショモギー/ウィーン響の89番、90番(ハイドン)
以前取り上げたアルバムですが、ラースロー・ショモギーという未知の指揮者の振る89番と90番という超地味な選曲ながら、あまりに素晴らしい演奏に痺れた思い出のアルバム。最近そのショモギーのことを調べていた毎日クラシックのcherubinoさんから、前記事にコメントをいただき、ショモギーという指揮者が1967年にウィーンで開催された芸術祭のマーラーの全作品演奏ツィクルスでバーンスタインやアバド、マゼール、クーベリックなど居並ぶ名指揮者に混じってウィーン響を振り5番の演奏を担当するほどの人だということがわかり、しかも、今日取り上げる哲学者と78番のアルバムの存在も教えていただいていました。そんなことがあったなあと思いながらこの週末にディスクユニオンを覗いてみると、まさにそのショモギーの哲学者のLPが売り場の棚にひっそりと置かれているではありませんか。おそらくここで私のことを待っていてくれたのだろうと、優雅に取り上げ、いつものように若干過呼吸気味になりながら、レジに向かったのは言うまでもありません(笑)
改めて確認してみると、以前取り上げたアルバムはウィーン交響楽団を振ったもので録音は1963年6月、レーベルは英HIS MASTER'S VOICE、今日取り上げる方はあまり馴染みのないウィーン放送管弦楽団を振ったもので録音は翌年1964年6月、レーベルは米Westminsterとレーベルは異なりますが、ジャケットのデザインはショモギーの同じ肖像画をあしらった似たようなデザイン。よく見るとSOMOGYIの名前のフォントが全く同一でした。HIS MASTER'S VOICE盤の記載をみてみると”Recorded by Westmister Recording Co, Inc., U.S.A,”と書かれており、Westminsterが原盤であることがわかりました。この2枚は見た目通りシリーズ物だった訳ですね。
ということで、いつものようにVPIのレコード洗浄機で盤を綺麗にして針を落としてみると、予想通り、素晴らしい響きが溢れ出しました。
Hob.I:78 Symphony No.78 [c] (1782?)
前盤もそうでしたが、ハイドンの数多ある交響曲の中からなぜこの地味な曲を選んで録音したのか定かではありません。Westminsterの当時のカタログ充足状況などが関係するのでしょうか。針を落とすと短調の引き締まった響きが流れ出します。非常に見通しの良い落ち着いたコントロールで入ります。録音は非常に鮮明で、LPは表面に少し汚れがありましたが再生には全く影響なくノイズレスなグッドコンディション。徐々に力感が満ちてきて低音弦のザクザクとキレのいい力強さが印象的。パリセットの作曲を目前に控え、メロディーの派手さはないものの、曲の構成の緊密さはかなりのもので、曲の構造も完成度が上がっています。その構成を落ち着いて見事に組み上げるショモギーの手腕はかなりのもの。
続くアダージョは癒されるような気配を感じさせながら、静かな音楽に時折オケの大波が押し寄せるハイドンには珍しい構成。特に弦の響きは鍛え上げられた筋肉のように引き締まった見事なもので、気にトスカニーニ的な険しさを感じさせる見事な造形。この曲を辛口にまとめるあたりのショモギーのセンスとオケのコントール能力も抜群です。
そして、辛口の酒の後に出汁の旨味の効いた椀ものをいただいた可能ような愉悦感に満ちたメヌエットに入ります。明るいメロディーが弾むのですが、ショモギーの眼力が演奏にただならぬ緊張感を与え、実に風雅で引き締まった演奏。隅々にまで料理人の感性が行き渡っています。
短調のフィナーレは険しい慟哭のようなメロディーの連続からふと素朴なユーモアを垣間見せる見事な展開。ショモギーはオケをキリリと引き締めると同時にユーモラスな部分でさっと気配を変え、ハイドンの機知を見事に表現。最後は大団円で終えます。この演奏を聴くと100曲以上あるハイドンの交響曲からこの曲をなぜショモギーが選んだか、なんとなくわかる気がしました。

Hob.I:22 Symphony No.22 "Philosopher" 「哲学者」 [E flat] (1764)
さて、盤をひっくり返してお目当ての哲学者です。なぜか、前曲の引き締まったオケの響きとは全く異なり、とろけるように柔らかい響きに包まれます。各パートは鋭さを隠して楽器を実に柔らかく響かせ、冒頭からこの素朴なメロディーの醸し出す夢見心地のような雰囲気にどっぷりと浸かることができます。よく聴いてみるとゆったりとしたメロディーにゆったりと意外にも大きな起伏をつけて音楽に生気を与えていることがわかります。ハイドンだけが書ける見事なハーモニーに酔いしれます。大河のようにゆったりと流れる音楽。
2楽章のプレストはもっと険しくくるかと思いきや、1楽章の流れを受けてむしろしなやかな演奏にまとめてきました。前曲が凛とした筆の運びが印象的な楷書だったのに対し、こちらは力の抜けた行書のように流れの良さとハーモニーのまとまりを意識した演奏。曲によって明確にコンセプトを変えてきますが、そのコンセプト自体がよく考えられていて深い。
メヌエットも行書のままですが、筆の勢いがよく硬軟織り交ぜながら、流れよくしなやかに流します。そしてフィナーレも同様、見事に力が抜けて1楽章から一貫した流れの一部のように通してきました。最後にくっきりメリハリをつけてまとめました。
今ではその存在がほとんど知られていないラースロー・ショモギーの振るハイドンの交響曲2曲を収めたLPでしたが、前盤同様、絶品の出来。このアルバムを聴くと、ショモギーという人、曲の本質に迫ろうとする類い稀な洞察力の持ち主と見ました。地味な78番についてはこの曲の見事な構成をキリリと描ききり、哲学者の方は夢見るように美しいハーモニーを活かしてしなやかにまとめてきました。記事を書くために2度聴きましたが、最初は哲学者が図抜けて素晴らしいという印象を持ったんですが、よく聴くと78番も見事。評価はもちろん両曲とも[+++++]とします。78番は録音も少ないため、ニコラス・ウォード盤とともに曲のベスト盤といってもいいでしょう。
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