作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ジョヴァンニ・アントニーニの交響曲全集第5巻(ハイドン)

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現在進行中のハイドンの交響曲全集。順調にリリースが続いています。

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TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

ジョヴァンニ・アントニーニ(Giovani Antonini)指揮のバーゼル室内管弦楽団(Kammerorchester Basel)の演奏で、ハイドンの交響曲80番、81番、ヨーゼフ・マルティン・クラウスの交響曲ハ短調(VB 142)、ハイドンの交響曲19番の4曲を収めたCD。このアルバムはアントニーニによるハイドンの交響曲全集の第5巻。収録は80番が2016年10月24日から25日にかけてスイスのバーゼル近郊のリーエンという街にあるランドガストホフ・リーエンでのセッション録音。その他の曲が2016年6月23日から27日にかけて、ベルリンのテルデクス・スタジオでのセッション録音。レーベルはレーベルはouthereグループのALPHA-CLASSICS。

私が手に入れたのはマーキュリーがリリースする解説付き国内仕様。解説の翻訳はおなじみの白沢達生さん。このシリーズはパッケージも解説も非常に凝ったものなので、やはり翻訳付きはありがたいですね。

このアルバムは先に触れたようにアントニーニによるハイドンの交響曲全曲録音の第5巻。これまでの4巻はアントニーニの率いるイル・ジャルディーノ・アルモニコが演奏したものでしたが、5巻目となってオケがバーゼル室内管がようやく登場したことになります。

2017/04/18 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第4巻(ハイドン)
2016/10/09 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第3巻(ハイドン)
2015/06/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第2巻(ハイドン)
2014/11/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第1巻(ハイドン)

もともとこのシリーズは、制作当初からオケはイル・ジャルディーノ・アルモニコとバーゼル室内管を振り分けるものとアナウンスされており、これまでの4巻に収録された演奏がいずれもパリセット以前の曲だったので、なんとなくオケを振り分けるポイントはパリセット以降などの曲の規模や時代の流れでのことと想像していました。ところが、今回80番、81番という収録曲でオケを変えてきたのを見て、概ねそうした想像通りと思いきや、初期の19番も含まれており、ちょっと想像とも違った展開でもあります。

解説によれば、今回の企画は1巻ごとにテーマを決めて選曲されているとのことで、アルバムも巻ごとにタイトルが付けられ、そのテーマに従って選曲されています。第1巻「受難」、第2巻「哲学者」、第3巻「ひとり物思いに沈み」、第4巻「迂闊者」ときていますが、これらはそれぞれの巻に収録されている曲のタイトルそのものでした。そしてこの第5巻のタイトルは「才気の人(L'Homme de Génie)」という含蓄のあるもの。詳しくは解説によりますが、ハイドンの中期の交響曲と、ハイドンと同時代のスウェーデンのヨーゼフ・マルティン・クラウスの作品を並べてまとめるにふさわしいテーマだったのでしょう。いずれにしてもオケを振り分けるポイントは時代ごとと言った割り切れたものではなさそうですので、今後の展開がどうなるか楽しみが増えましたね。

また、これまでのジャケットデザインも巻ごとにアーティスティックな素晴らしい仕上がりとなっていましたが、これは1947年に発足された写真家同盟である「マグナム・フォト」と連携して作品のテーマにふさわしい写真家の作品が選ばれているとのこと。第5巻はイギリスのスチュアート・フランクリンという写真家の作品で、「才気の人」というテーマに相応しい写真に彩られています。この辺りのプロダクションの見事さはこれまでの全集とはレベルの違うものであり、こちらも1巻ずつ集める楽しみがあるものですね。

さて、肝心の演奏についてはどうでしょうか。

Hob.I:80 Symphony No.80 [d] (before 1784)
短調の鬼気迫る入り。パリセットの直前の曲ということで録音も少ない曲ですが、改めてアントニーニのエッジの立った先鋭的な響きによって、この曲の迫力が浮かび上がった感じ。もちろんこの鬼気迫る入りはハイドンの才気とアントニーニの才気がぶつかり合って素晴らしい緊張感。ただしこの緊張感をすっとコミカルなメロディーで緩めては引き締める緊張一辺倒ではないところがハイドンらしいところ。対比によって曲の構成を見事に描いていきます。
続くアダージョはしなやかな弦の魅力で聴かせ、あえて音量の起伏を大きめにとって彫りの深い音楽を作ります。このアダージョの落ち着きながらも構えの大きな音楽こそハイドンの魅力をしっかりと踏まえてのもの。そしてメヌエットの適度なキレとバランスの良い展開も全集当初見られた力みが完全に抜けた証でしょう。いいですねこれは。
フィナーレはハイドンの奇抜なアイデアのオンパレード。ウィットに富んだテーマを軸にオケがフル回転でメロディーを膨らませながら盛り上げていきます。メロディーもリズムも楽器の掛け合いも全てがアイデアに満ち溢れ、その芽を全て拾って膨らませるアントニーニの見事なコントロールに唸ります。いやいやいきなり見事な完成度!

Hob.I:81 Symphony No.81 [G] (before 1784)
録音時期と収録場所は異なりますが、音色の差はそれほど気になりません。あえて言えばこちらの方が少々響きがダイレクトな感じがします。冒頭からキレ味鋭いオケが素晴らしい推進力で覇気溢れる響きを聴かせます。鋭利ながら迫力も素晴らしく、グイグイ引っ張って行きます。エネルギーに満ち溢れているとはこのこと。これ以上だと強引に聴こえてしまうギリギリのラインを保ってのコントロール。このほんのすこしの差が演奏の印象を大きく変えてしまうリスクがありますが、その線をギリギリ保つことで類まれな生命感を帯びた音楽になります。力を抜くところでしっかりと抜けているのがポイントでしょう。1楽章から圧倒的!
前曲同様緩徐楽章は正攻法で彫りの深い音楽を奏でます。小細工なしに曲の良さを素直に生かす演奏こそ、ハイドンの真髄に迫る演奏になるとの確信があるよう。後半は意外にもかなり穏やかな音楽にほっこりします。
その穏やかさは鋭利なメヌエットへの対比のためだったのでしょう。このメヌエットも驚くべきアイデアに満ちたもの。アントニーニがそのアイデアをクッキリと浮かび上がらせて本質的な面白さを見抜きます。
そしてフィナーレももちろん千変万化する響きに目がクラクラするほど豪華な響きに圧倒されます。オケにもエネルギーが満ちてまるでライヴのような高揚感に包まれます。これまた見事!

この後ヨーゼフ・マルティン・クラウスの交響曲です。手元に何枚かクラウスの曲はありますが、この曲を聴いてあまりの構成感の見事さに驚いた次第。ハイドンがその才能を認めただけのことはありますね。まさに才気の人。アントニーニも渾身の演奏でクラウスの才気に応えます。

Hob.I:19 Symphony No.19 [D] (before 1766)
ハイドン中期の交響曲2曲にあまりに本格的なクラウスの交響曲というメインディッシュに対して、最後にデザートのように置かれたハイドン初期の交響曲。リズムのキレの良さでさらりと入ったかと思いきや、デザートも力が入っていました。パティシエ渾身の細工の見事さを見せつけらるようなメロディーのキレに唸ります。聴きどころは続くアンダンテでした! ここでもさらりと入った後に音楽が深く響いていく様子の見事さに唸らされます。この曲のアンダンテがこれほど素晴らしい曲だと初めて気づかされた気分。そしてフィナーレも短いながらアントニーニのコントロールが行き届いて軽やかさとオケの吹き上がりの見事さでまとめました。

第5巻でオケがバーゼル室内管に変わった、ジョヴァンニ・アントニーニのハイドン交響曲全集。これまでリリースされた中では間違いなく一番いい出来。特にこれまであまり重んじられてこなかった80番、81番というパリセット直前の2曲の面白さをこれまでで最も引き出した演奏と言っていいでしょう。ハイドン3曲の評価はもちろん[+++++]とします。そしてヨーゼフ・マルティン・クラウスのハ短調交響曲にもびっくらこきました! この全集、企画、演奏、アートワークが三拍子揃った素晴らしいものであり、1巻1巻揃える楽しみがあります。今から次のリリースが楽しみです!

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2 Comments

There are no comments yet.

michael

第5巻

こんにちは

ひょっとして、と予感していたら、同じ音盤の話になりましたね^^

ハイドンの全集作りは「鬼門」?だったりしますが、アントニーニの質の揃った全集は
無事完成させてほしいです、先は長いですが;

Daisy

Re: 第5巻

michaelさん、コメントありがとうございます。

こちらもひょっとしてと覗いてみたところ、ひょっとしました(笑) それだけ期待が集まるアルバムだということでしょう。

  • 2017/11/23 (Thu) 12:04
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