作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

リステンパルト/ザール室内管の交響曲21番、マリア・テレジア(ハイドン)

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その存在を最近知ったアルバム。LPの音がこれほどまでに美しいとは。

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カール・リステンパルト(Karl Ristenpart)指揮のザール室内管弦楽団(Chamber Orchestra of The Saar)の演奏で、ハイドンの交響曲21番、48番「マリア・テレジア」と、ギュンター・ヴァント(Günter Want)指揮のギュルツェニヒ交響楽団(Gürzenich Symphony Orchestra of Cologne)の演奏で交響曲82番「熊」の3曲を収めたアルバム。リステンパルトの方の収録は同じ音源と思われるマリア・テレジアのCDの収録情報から1965年1月、ドイツ南部のフラウラウターン(Fraulautern)でのセッション録音。レーベルは優秀録音で知られる米nonsuch。(2017/11/23収録情報を修正:cherubinoさんご指摘ありがとうございます!)

今日はリステンパルトの演奏を取り上げましょう。リステンパルトのハイドンは私の溺愛する演奏の一つ。ブログ最初期にホルン信号の記事を書いて以来、録音が手に入ると取り上げてきました。今年の夏に気まぐれで始めたザロモンセットの名演奏では時計のベスト盤にリステンパルトを選んでいます。

2017/08/20 : Best Choice of Works : 【ハイドン音盤倉庫特選】ザロモンセットの名演奏(後編)
2015/12/31 : ハイドン–交響曲 : カール・リステンパルト/ザール室内管の81番、王妃(ハイドン)
2013/01/07 : ハイドン–交響曲 : カール・リステンパルトの驚愕、軍隊、時計
2010/02/04 : ハイドン–交響曲 : 絶品! リステンパルトのホルン信号

今日取り上げるアルバムに含まれる演奏のうち、マリア・テレジアはホルン信号のアルバムにも収録されていますので、初出は21番だけということになりますが、ホルン信号の記事を書いた頃には具体的なレビューを書いておりませんので、改めてマリア・テレジアもちゃんと取り上げることにします。最初の記事に書いた通り、「一言でいうとごく普通の演奏なんですが、まろやかなオケの音色、中庸なテンポ、すべての奏者の息がぴたりと合って大きな音楽を奏でていて、これ以上の演奏はないというような完成度。」といえも言われぬ演奏を期待してしまいますね。

Hob.I:21 Symphony No.21 [A] (1764)
いつものようにVPIのクリーナーで綺麗にクリーニングしてアルバムに針を落とした途端、まさにとろけんばかりのまろやかなオケの響きに包まれます。1楽章はアダージョで、弦はまろやかな上に分厚い低音をベースに無限に広がるような広い空間にゆったりと響きわたり、木管、金管陣はクッキリと浮かび上がります。いきなり脳内が快楽物質で満たされます。続く2楽章に入ると未曾有の推進力に満ち溢れ、さらに空間が広がります。何でしょう、このエネルギーに満ちた軽快さは。LPから素晴らしいエネルギーが湧き出てきます。そしてそのエネルギーがキレの良さに変わる3楽章のメヌエット。フレーズの一つ一つが波打つように弾みます。そしてフィナーレに到るまでキレキレのオケはエネルギーを放ち続けます。恐ろしいまでの集中力。これはこれまで聴いたリステンパルトのハイドンの中でも別格の素晴らしさ。そして超絶的名録音。

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Hob.I:48 Symphony No.48 "Maria Theresia" 「マリア・テレジア」 [C] (before 1769?)
そしてCDでも聴いているマリア・テレジアですが、このエネルギー溢れる音はLPならでは。このエネルギーはデジタルでは出ません! 日曜の夜だからか、アンプも絶好調でゾーンに入って、スピーカーからオケのピラミッドのような分厚い低音をベースとした響きが轟きます。続く2楽章は弱音器付きの弦楽器のしっとりとした入りからホルンのメロディーが重なっていきますが、ホルンの響きのなんたる美しさ。静寂の中に各楽器の織りなす綾が光沢を伴って揺らめきます。絶美。
2楽章の終わりでLPをひっくり返します。メヌエットはゆったりとしたテンポで余裕たっぷりの演奏と思いきや、すぐにずしりと響く迫力を帯びて険しさを垣間見せます。そしてメヌエットの力感を抜くように、爽やかにフィナーレに入りますが、弦楽器の恐ろしいまでのボウイングのキレの迫力ですぐに図太い流れを作ります。このLP、特に低音の迫力が見事でした。

この後に収められたヴァントの熊ですが、録音は高音がこもり気味で今ひとつ。というより、前2曲が素晴らしすぎました。

カール・リステンパルト指揮のザール室内管による交響曲2曲でしたが、素晴らしい演奏と素晴らしい録音が揃った超名盤と言っていいでしょう。nonesuchといえば長岡鉄男さんが民族音楽などの名録音盤を数多く紹介していたこともあって録音の素晴らしさで知られるレーベルですが、このアルバムはこれまで聴いたnonesuchの中でも飛び抜けて素晴らしいもの。1966年のプロダクションですが、現在でもこれを超える録音は見つからないでしょう。もちろん演奏もリステンパルトのハイドンの最上のもの。これは宝物レベルのアルバムですね。もちろん評価は2曲とも[+++++]です。LPの再生環境がある人はこのアルバムを是非入手して、リステンパルトとnonesuchの陶酔を味わってほしいものです。

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5 Comments

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cherubino

No title

Daisy 様、いつも楽しみに読ませていただいております。
上記リステンパルトの演奏ですが、我が家には第31、21、48番入りのフランス盤があります(club français du disque / CFD 347)。当方のサイトにその画像を貼ってみました。
http://gospels.cocolog-nifty.com/classic/2014/08/22-98e6.html
ただ、こちらは重量感のある盤ですがどうやらペラジャケの廉価盤のようです。調べてみると、Daisy さんが「カール・リステンパルト/ザール室内管の81番、王妃(ハイドン)」としてご紹介されている「LES DISCOPHILES FRANÇAIS」からも第7、21、48番収録のLPが出ているようです。参考までにクラシックLPレコード専門店のSilent Tone Record さんのサイトに出ていました(DF 183)。高い!
http://silent-tone-record.com/?mode=grp&gid=1198022
あと、これまた余談ですが、「絶品! リステンパルトのホルン信号」でご紹介のアコードのCDの方ですが、この裏面?に1965年にフラウラウターン(Fraulautern)で録音されたようなことがクレジットされていませんか? フランス語は大学でかじっただけなので間違っているかもしれませんが。このフラウラウターンは、驚愕、軍隊、時計も録音された場所のようですね。以上、蛇足ながら。
でも、この「マリア・テレジア」。演奏・録音ともに独特の雰囲気のあり、僕も大好きです。

Daisy

Re: No title

cherubinoさん、コメントありがとうございます。

コメントが入力されるとfc2からメールが来るのですが、このコメントのみ何故かメールが来なくて気づくのが遅くなりました、すみません。

まずは収録情報のご指摘ありがとうございました。早速ブログ記事の方と所有盤リストの方を修正させていただきました。
今回入手したnonsuch盤ですが、あらためてCDと聴き比べてみると、やはり立体感というか空気感が違います。名録音で名を馳せたnonesuchのカッティングが良いのでしょう。手元のLES DISCOPHILES FRANÇAISのリステンパルトの音よりもnonesuch盤の方が音が良いような気がします。未入手盤もまだあり、nonesuchのリステンパルトも集めようかと思います。東京のディスクユニオンではリステンパルトはそこそこ見かけますので、気長に探してみようかと思います。

  • 2017/11/23 (Thu) 12:03
  • REPLY

cherubino

No title

Daisy 様、コメントありがとうございます。先のコメントでは、「Club Français du Disque」について、そのジャケットの仕様等から「廉価盤のよう」と書きましたが、調べてみるとフランスで会員制で頒布されていたシリーズのようです。Nonesuch 盤のレーベルにも、「Recorded in Europe by Club Français Du Disque, Paris」とあります。なので、もしかするとこちらのクラブ盤の方が先に出て、その一般販売バージョンが「LES DISCOPHILES FRANÇAIS」盤なのでは、と考え直しました。
「Club Français du Disque」レーベルは、ギュンター・ヴァントがケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団と多くの録音を残したことでも知られています(近年、TESTAMENT が、原盤を引き継いだミュジディスク(Musidisc)を通じ、いくつか復刻CDを出しています)。その意味で、リステンパルトの録音と組み合わされて出たのも納得できます。以上、本日の調査結果でした。
追伸 音が良いとご指摘の nonesuch 盤、私も手に入れてみたくなりました。

cherubino

リステンパルトのLP情報(修正版)

Daisy 様、遅ればせながら新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
また、今回は「リステンパルト/ザール室内管の交響曲21番、マリア・テレジア」を、「H. R. A. Award 2017」に選んでいただき、ありがとうございます(笑)。ファイやアントニーニなどの鮮烈なハイドンもいいですが、こうした地味な?発掘盤を取り上げていただくことで、ハイドンの大らかさ、ユーモアが世界中に広がっていくことを期待しております。
さて、前回のコメントからいろいろ気になって調べておりましが、なんとか皆さまにご報告できるくらいに調べがつきましたので、拙ブログにおいて「リステンパルトのハイドン演奏まとめ」という記事を書いてみました。
http://gospels.cocolog-nifty.com/classic/2018/01/1-687b.html
結論から言えば、Nonsuch 盤の原盤である「Le club francais du disque」盤(以上ステレオ、1965年録音)と、私が前コメントに書いた「Les Discophiles Francais」盤(以上モノラル、1956年?録音)は、まったく別物でした。第7、21、48番で1枚のLPを作るというような不思議な組み合わせなので、てっきり上記「クラブ・フランセ」盤(第31、21、48番)と、下記4)の「クラブ・フランセ」盤(第6、7、8番)からの組み替えバージョンかと思い、現物を見ずに先のコメント欄にそのような趣旨のことを書いてしまいました。申し訳ありません。
もしかして、Daisy さんはそれらの事情もご存じだったのかもしれませんが、また他のフォロワーさんが誤解されるといけないので、お手数ですが本コメントを掲載していただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

Daisy

Re: リステンパルトのLP情報(修正版)

cherubinoさん、度々のコメントありがとうございます。

こちらこそ、遅ればせながら明けましておめでとうございます。また、当ブログについて過分なるお言葉で紹介いただき改めて感謝申し上げます。

「H. R. A. Award」はタイトルは大げさですが、個人的に最も感銘を受けたアルバムを個人のブログで勝手に表彰するという、冷静に考えると誠にテキトウな賞ではありますが、こうして同好の諸氏の皆様から賛同が得られることで、ジワリと価値が増すものであると思ってます。リステンパルトのハイドンはまさに、現代の演奏からは失われてしまったかもしれない真のおおらかさやユーモア、素朴さが滲み出る素晴らしいもので、ハイドンの交響曲の最良の演奏だと思います。

今回、こちらの勝手な賞をきっかけに、リステンパルトの演奏を体系的に調べていただき、素晴らしい調査力に感服しております。また、各演奏の記述から当ブログの記事にリンクしていただき、私も昔書いた自分の記事を読み直して、我ながらいいこと書いているなとニンマリしたりして楽しませていただきました。

実は私もリステンパルトの録音については簡単なメモを作っていて、入手済みのアルバムと未入手のアルバムを一覧にしているのですが、今回記事を拝見すると、49番の録音があるとのこと。これはこちらでは把握していませんでしたので、早速聴いてみたいと思っています。

前回のショモギーの演奏をきっかけとした「1967年のマーラー・ツィクルス」の記事も4回とも興味深く読ませていただきましたが、今回のリステンパルトの記事もこの先が楽しみです。

今後ともよろしくお願いいたします。

  • 2018/01/12 (Fri) 00:31
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