作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

マリス・ヤンソンス/ベルリンフィルの「驚愕」(ハイドン)

0
0
久々に映像ものを取り上げます。

Jansons94.jpg
TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

マリス・ヤンソンス(Mariss Jansons)指揮のベルリンフィルの演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」、モーツァルトのフルート協奏曲K.314 (285d)、ベルリオーズの幻想交響曲の3曲を収めたBlu-ray。収録は2001年5月1日、ベルリンフィル恒例のヨーロッパコンサートで会場はトルコのイスタンブールの聖イレーネ教会でのライヴ。レーベルはEUROARTS。

この映像、存在は知っていたものの、手に入れたのはごく最近のこと。

マリス・ヤンソンスのハイドンは過去に2度取り上げていますし、昨年バイエルン放送響との来日公演で「軍隊」も聴いています。

2016/11/27 : コンサートレポート : マリス・ヤンソンス/バイエルン放送響の「軍隊」(ミューザ川崎)
2013/05/11 : ハイドン–交響曲 : マリス・ヤンソンス/バイエルン放送響のロンドン、軍隊
2011/08/11 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番2】マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団のハルモニーミサライヴ

ヤンソンスは皆さんご存知の通り、世界の一流指揮者の一人であり、非常に丁寧なコントロールで音楽をしなやかに聴かせる人です。ヤンソンスのハイドンはそのしなやかな魅力がベースの演奏ですが、過去に取り上げた演奏では、少々磨き過ぎて丁寧に過ぎる印象もちょっと感じさせ、ハイドンの直裁な魅力を十分に表現しきれていない印象も持っていました。ただ、昨年聴いた「軍隊」のコンサートはやはり素晴らしく、ちょっと見直したのが正直なところ。そう思っている中、このBlu-rayが目に入ったので手に入れた次第。

過去に取り上げたアルバムではバイエルン放送響との交響曲集が2003年と2007年、ハルモニーミサが2008年ということで、今日取り上げる2001年の「驚愕」が最も古い演奏ということになります。

Hob.I:94 Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
聖イレーネ教会は荒い肌の積み石がむき出しのイスタンブール最古の教会。雰囲気はなかなか良いのですが録音に適するようには思えません。ただその辺はうまく音響処理しているのか、普通のコンサートホールでの録音と言われてもわからないほど自然な音に録られています。冒頭が「驚愕」ですが、序奏からヤンソンスの魔法にかかったようにベルリンフィルからビロードのような柔らかい響きが引き出されます。ヤンソンスは指揮棒を持たず、体全体を使って非常にリズミカルな指揮ぶり。そして驚愕の聴きどころである1楽章の緊密な構成を非常に自然に描いていきます。特に素晴らしいのがリズムのキレ。流れるような演奏とはこのことでしょう。そしてヤンソンスの面目躍如なのがすべてのフレーズが丁寧に磨かれているかのような美しさ。映像で見るとなおさら磨きっぷりまでよくわかります。1楽章は大理石の透明感まで伝わるような白亜の大神殿のような優美な姿を見せます。
続くびっくりのアンダンテもこれ以上美しく演奏するのは難しいほど流麗なもの。びっくりの部分は適度な迫力でこなしますが、続く変奏では速めのテンポで見通し良く展開するので抜群の面白さを味わえます。まさに古典の均衡を味わえる見事な演奏。ヤンソンスの指揮姿を見ていると、見通し良くリズムを刻むところに細心の注意を払っていることがよくわかります。
そしてハイドンの交響曲で意外に単調になってしまいがちなメヌエットもヤンソンスの手にかかると躍動感に溢れる舞曲として弾みます。ベルリンフィルもいつもの剛腕ぶりから華麗な響きに変わり、シェフが変わるととろけるような甘みを見せます。
そしてフィナーレもまろやかな入りから、徐々にオケに力が宿り、軽やかに、華麗に、そして時に図太く変化しながら最後のクライマックスに向けて盛り上がっていきます。これほど華麗なこの曲のフィナーレは聴いたことがありません。最後はベルリンフィルの底じからをさらりと聴かせ終わります。いやいや素晴らしい。

マリス・ヤンソンスの驚愕、オーソドックスな演奏ながら、極めて完成度の高い極上の演奏でした。先日実演で聴いた「軍隊」も素晴らしかったんですが、この驚愕も見事の一言。評価は[+++++]とします。ヤンソンスは旧バルト三国のラトビア出身ですが、独墺系の伝統とは少し異なるロマンティックな古典の美しさの表現が上手いですね。実演に接してからヤンソンス流のハイドンにも違和感を感じなくなってきました。先日ハイドン音盤倉庫特選としてザロモンセットの名演奏を選んだ中で、驚愕はクライバー盤を選んだのですが、この映像も驚愕の名演奏としておすすめできるものです。未聴の方は是非。なぜかローチケHMVだけBlu-rayにもかかわらず1000円ちょっとで手に入ります。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
関連記事

0 Comments

There are no comments yet.