作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ジョナサン・ノット/東響の86番、チェロ協奏曲1番(東京オペラシティ)

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10月15日日曜は以前からチケットを取ってあったコンサートに出かけました。

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東京交響楽団:東京オペラシティシリーズ 第100回

最近、ちょっとお気に入りのジョナサン・ノット。昨年末に聴いた演奏会形式の「コジ・ファン・トゥッテ」があまりに素晴らしかったので、その後も何回かコンサートに通っています。

2017/07/23 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の「浄められた夜」、「春の祭典」(ミューザ川崎)
2017/07/17 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響のマーラー「復活」(ミューザ川崎)
2016/12/12 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の「コジ・ファン・トゥッテ」(東京芸術劇場)

コジ・ファン・トゥッテはキビキビとした進行に実に多彩な表情をつけて長いオペラを一気に聴かせる素晴らしい演奏でしたし、復活はオケを鳴らしきるど迫力の演奏。そして「浄められた夜」の精緻な透明感と曲ごとに多彩な表情を見せる人。そのノットがハイドンを振る、それも好きな86番にチェロ協奏曲ということでチケットを取ったもの。プログラムは以下のとおり。

ハイドン:交響曲第86番 ニ長調 Hob.I:86
ハイドン:チェロ協奏曲 第1番 ハ長調 Hob.VIIb:1 チェロ独奏:イェンス=ペーター・マインツ(Jens Peter Maintz)
モーツァルト:交響曲 第39番 変ホ長調 K.543

ハイドンを振るのにいきなり玄人好みの86番を取り上げるあたりが流石のプログラミングセンス。ハイドンとモーツァルトという2人の作曲家の代表曲の影の傑作交響曲を並べるという趣向でしょう。そして協奏曲にはチェロ協奏曲1番ということで完璧に私好みのプログラムなんですね。



さて、日曜のコンサートということで、少し早めにオペラシティについて、こちらもお気に入りのお店で腹ごしらえ。

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食べログ:HUB 東京オペラシティ店

東京オペラシティの地下1階にある英国風パブチェーンのHUB。コンサート前の腹ごしらえはここです。

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ギネスにレッドアイを頼んで、まずは喉を潤します。

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そして、なぜかいつも頼むザ・フィッシュ&チップス。ビールのつまみになります。のんびりとビールを楽しんでいるうちに開場時刻となり、ホールに向かいます。

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この日の席は2階席のステージ右の一番奥の方。オケを上から眺める席です。しかも指揮者の指示が非常によく見える席。ステージ上は小規模オケということで余白たっぷり。ステージの真ん中だけ使うくらいで、マーラーやブルックナーの時のステージいっぱいに席が並ぶのとは異なりスッキリした感じ。客席の入りは5〜6割とあまりぱっとしません。やはりこのプログラムではお客さんが入らないのでしょうか。

定刻になりオケが入場し、ジョナサン・ノットもいつものようにステージに勢いよく駆け出てきて、注目の86番。ノットがタクトを下ろすと聴き慣れた序奏のメロディーが響きますが、最初はオケがまだ硬い感じなのに加えて、オケの直上の直接音主体の響きも手伝って、奏者の微妙な入りのタイミングの差が少々気になります。ノットのコントロールはフレーズごとにかなり表情をはっきりつけながらも、古楽器風の清透な響きを意識したもの。主題に入って86番独特の規則的なリズムを刻んでいく部分もちょっとリズムを重くしたり、軽くしたりと念入りな表情づけ。ノットの指揮も特に強音部ではかなり細かくタクトを振り回すので忙しい印象を与えます。なんとなくリズミカルなこの曲の魅力が、演出過剰でゴテゴテした印象もついてしまった感じ。ただし聴き進むうちにオケも徐々にこなれて、音楽の流れも良くなっていきます。1楽章も終盤になるとノットの激しい煽りでライブらしい高揚感に包まれます。
続く2楽章のカプリッチョは、古楽器風に少し速めのテンポで、この楽章もノット風のテンポを微妙に細かく変えながらの演奏。アクセントをかなり明確につけるので、メリハリは十分。そしてメヌエットは覇気十分で活気ある舞曲。今少し優雅さがあればとも思いますが、このゴツゴツとした感触を感じるデフォルメがノットの特徴でしょう。そして終楽章は渾身の力演。これは生ならではの盛り上がりを感じさせます。最後はノットの煽りで小規模なオケといってもホールに轟く大音響で終わり、盛大な拍手に迎えられました。

ステージ上にチェリストが乗る台が運ばれ、一部の奏者が入れ替わって、次のチェロ協奏曲。チェロのイェンス=ペーター・マインツとノットが登壇。マインツは長身ですね。チェロ協奏曲の伴奏は86番同様、ノット風に小刻みな表情づけが行われますが、協奏曲ゆえ基本的に流れの良い演奏なので、86番ほどノットの表情づけが気になることはありません。チェロのマインツは非常にキレの良いボウイングでいきなり観客の耳を釘付けにします。特に早いパッセージの鮮やかさは目もくらむほど。テンポよくキレの良いチェロでハ長調のこの曲の明るい推進力あるメロディーを先導します。1楽章のカデンツァはマインツの美音とボウイングの鮮やかさを印象付けるもの。オケも86番よりも流れが良くなり、マインツのキレの良さがノットの鮮やかな面を引き出し、掛け合いの面白さも活きる演奏でした。
続く2楽章のアダージョはマインツの美音の鮮やかさが際立ちました。大柄なマインツが弾くとチェロが小さく見えるほどで、楽器をコントロールし尽くしている感じ。2楽章のカデンツァは現代音楽風の不協和音をも織り交ぜ静寂を印象付ける踏み込んだもの。マインツが完全に観客をのんでいました。フィナーレはチェロの超絶テクニックの聴かせどころ。特に速いパッセージのボウイングの鮮やかさは素晴らしいものがありました。あまりの鮮やかさに聴衆からは嵐のような拍手が降り注ぎました。やはりソロがキレると協奏曲はいいですね。何度かのカーテンコールで、マインツが平台からノットを指揮台に乗せる場面があり、指揮台に乗ったノットがようやくマインツに背が届くとわかって会場は笑いに包まれました。アンコールはバッハの無伴奏チェロ組曲3番からサラバンド。チェロの豊かな低音の唸りを祈りに昇華させるようなアーティスティックな演奏に聴き惚れました。

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休憩を挟んで後半はモーツァルトの39番。オケの編成はほぼ変わらず、コントラバスが2本から3本に増えたくらい。このモーツァルトはハイドンとはまたスタイルを大きく変えてきました。ほぼ古楽器の演奏と思わせるようなリズムの早打ちに、ほぼノンヴィブラートで澄み切った音色を強調するヴァイオリン、そして細かい表情づけは少し後退して優雅さを感じさせるような大らかさも持ち合わせた演奏。1楽章の美しいメロディーの繰り返しにうっとり。ハイドンではあれだけ緻密に表情づけをしていたのに対し、モーツァルトの天真爛漫なメロディーに触発されたのか、流れの良さはだいぶ上がってきています。演奏のテイストは一貫して、2楽章、3楽章、フィナーレと安心して身を任せられる演奏でした。もちろん観客は大満足の演奏だったようで、最後も盛大な拍手に包まれました。



これで4回目のジョナサン・ノットのコンサート。今回は私好みのハイドンの曲中心のプログラムでしたが、このハイドンが演奏の難しさを感じさせるものでもありました。期待の86番はノットのせわしない指揮が曲のシンプルな魅力を表現しきれていない印象も残してしまいました。チェロ協奏曲はソロも含めてなかなかいい演奏、そして後半のモーツァルトは期待以上の素晴らしさでした。86番については好意的に聴いた人も多かったかと思いますが、日頃ハイドンばかり聴いている私ゆえの辛口コメントということでお許しください。

さて、次のノットはドン・ジョバンニです。昨年のコジ・ファン・トゥッテは名歌手トーマス・アレンの魅力もあり素晴らしい舞台でしたが、ドン・ジョバンニは如何に仕上がってくるでしょうか。今から楽しみです。

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