アルミン・ジョルダンの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」(ハイドン)
最近手に入れたCD。いやいやこれは素晴らしい!

TOWER RECORDS / amazon
アルミン・ジョルダン(Armin Jordan)指揮のアンサンブル・オーケストラル・ド・パリ(Ensemble Orchestral de Paris)の演奏で、ハイドンの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」の管弦楽版を収めたCD。収録は1992年10月27日から29日にかけて、パリのナシオン広場近くにあるユージーン・ナポレオン修道院の礼拝堂(Chapelle de la Fondation Eugène Napoléon)でのセッション録音。レーベルはFnac Music。
アルミン・ジョルダンはアンセルメ以来のスイス人の国際的指揮者。少し前に取り上げたシャルル・ミュンシュ同様、ハイドンを振るイメージがあまりない人ですが、ジョルダンのハイドンは手元に「天地創造」と「四季」、エディト・マティスとのアリア集、アンヌ・ケフェレックとのピアノ協奏曲のアルバムがあります。オケはいずれもローザンヌ室内管。このうち「天地創造」とピアノ協奏曲のアルバムはレビューしています。
2013/04/03 : ハイドン–協奏曲 : アンヌ・ケフェレック/アルマン・ジョルダンのピアノ協奏曲(XVIII:11)
2010/08/28 : ハイドン–オラトリオ : アルミン・ジョルダンの天地創造
これまでの演奏から自然体でオケをおおらかに響かせるのが上手い人との印象があります。ケフェレックとの協奏曲の伴奏も見事、天地創造も伸び伸びとした音楽が印象的でした。これまで手元にあったアルバムはいずれも1970年代終わりから80年代初めにかけての録音で、今日取り上げるアルバムはそれより10年以上降った1992年の録音ということで、円熟を深めたジョルダンの演奏に期待が高まります。
Hob.XX:1 "Die sieben letzten Worte unseres Erlösers am Kreuze " 「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」 [D] (1785)
序章
非常に柔らかいオケの響き。残響が多めの教会堂での録音ですが、適度に鮮明さもありバランスの良い、音楽を楽しむにはなかなかいい録音。序章は予想通り自然な呼吸の美しい音楽に包まれます。太い筆で書いた書のように輪郭は柔らかいのですが、しなやかな筆の勢いとくっきりと露わになる骨格によって凡庸な印象は皆無。柔らかなオケの響きとともに幸福感に包まれる音楽。まさに円熟の響き。序章から見事な演奏に引き込まれます。
第1ソナタ
ソナタに入ると自然な流れの美しさが一層際立ってきます。やや速めのテンポが見通しの良さを感じさせ、メロディーのしなやかさは独墺系のテイストではなくやはりラテン系の艶やかさを感じます。一定の範囲の起伏が心地よい流れの良さを印象づけます。
第2ソナタ
少しテンポを落として、だんだんメロディーが深く響いてきます。実に自然な音楽の流れ。全奏者がジョルダンのしなやかなタクトに身を任せてゆったりとした音楽の演奏を楽しんでいるよう。川の流れに身を任せて漂っているような陶酔感に包まれます。弦の響きにはほんのりと色彩が乗って淡い色の繊細な変化が見どころのよう。絶美。
第3ソナタ
音楽が進んで、徐々に枯淡の域に近づいてきました。ここにきて少し音量を落としてきたのが効いています。ハイドンが書いた音楽の大きな流れを巧みに汲み取り、ソナタ一つごとに深みを増していく見事なジョルダンのコントロール。弦のメロディーにうっすらと重なるホルンの音色が心地よいですね。
第4ソナタ
波のうねりのような大きな起伏の音楽。ゆったりとしながらも絶妙な迫力を帯び、大きな流れと静けさの繰り返しから生まれる陶酔。一貫した流れが素晴らしい説得力を持ちます。弱音部の翳りと透明感が深い深い淵を感じさせます。
第5ソナタ
ピチカートの伴奏に乗った有名なメロディーのソナタ。ピチカートは目立たせずに切々としたメロディーにスポットライトを当ててきました。やはりジョルダンは全曲に渡る流れの良さを重要視しているようですね。絵巻物を見せられるように連続したソナタの醸し出す険しくも美しいメロディーライン。
第6ソナタ
終盤の慟哭のようなソナタ。木管によってくっきりと浮かび上がるメロディーが新鮮ですね。これまでの曲の流れを回想するような叙情的な雰囲気に酔いしれます。強奏部分でも決して力まない穏やかなコントロール。凄みさえ感じさせる尋常ではない穏やかさ。これがジョルダンの音楽の真髄でしょうか。そしてこのメロディーの美しさはハイドンの天才のなせる技。
第7ソナタ
最後のソナタ。あえて淡々と進めているよう。最後に向けて徐々に力が抜けていく様子の無常さがこの演奏の気高さを物語リます。
地震
地震は適度な迫力で駆け抜けるような演奏。曲全体の絶妙なバランス感覚を印象づけます。よく聴くとメロディーには巧みなアクセントがつけられ、やはり音楽を印象的に聴かせる技を感じる演奏でした。
アルミン・ジョルダンの振るアンサンブル・オーケストラル・ド・パリによる、ハイドンの名曲「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」の管弦楽版ですが、穏やかな表現の中に美しいメロディーが詰まった見事な演奏でした。緩徐楽章ばかりが並ぶこの曲で、一つ一つのソナタをしっかり描き分けながらも一貫した流れにまとめるコントロールは円熟のなせる技でしょう。ジョルダンの天地創造も素晴らしかったんですが、これはそれ以上の名演といっていいでしょう。ジョルダンの音楽に癒されました。評価は[+++++]とします。

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アルミン・ジョルダン(Armin Jordan)指揮のアンサンブル・オーケストラル・ド・パリ(Ensemble Orchestral de Paris)の演奏で、ハイドンの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」の管弦楽版を収めたCD。収録は1992年10月27日から29日にかけて、パリのナシオン広場近くにあるユージーン・ナポレオン修道院の礼拝堂(Chapelle de la Fondation Eugène Napoléon)でのセッション録音。レーベルはFnac Music。
アルミン・ジョルダンはアンセルメ以来のスイス人の国際的指揮者。少し前に取り上げたシャルル・ミュンシュ同様、ハイドンを振るイメージがあまりない人ですが、ジョルダンのハイドンは手元に「天地創造」と「四季」、エディト・マティスとのアリア集、アンヌ・ケフェレックとのピアノ協奏曲のアルバムがあります。オケはいずれもローザンヌ室内管。このうち「天地創造」とピアノ協奏曲のアルバムはレビューしています。
2013/04/03 : ハイドン–協奏曲 : アンヌ・ケフェレック/アルマン・ジョルダンのピアノ協奏曲(XVIII:11)
2010/08/28 : ハイドン–オラトリオ : アルミン・ジョルダンの天地創造
これまでの演奏から自然体でオケをおおらかに響かせるのが上手い人との印象があります。ケフェレックとの協奏曲の伴奏も見事、天地創造も伸び伸びとした音楽が印象的でした。これまで手元にあったアルバムはいずれも1970年代終わりから80年代初めにかけての録音で、今日取り上げるアルバムはそれより10年以上降った1992年の録音ということで、円熟を深めたジョルダンの演奏に期待が高まります。
Hob.XX:1 "Die sieben letzten Worte unseres Erlösers am Kreuze " 「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」 [D] (1785)
序章
非常に柔らかいオケの響き。残響が多めの教会堂での録音ですが、適度に鮮明さもありバランスの良い、音楽を楽しむにはなかなかいい録音。序章は予想通り自然な呼吸の美しい音楽に包まれます。太い筆で書いた書のように輪郭は柔らかいのですが、しなやかな筆の勢いとくっきりと露わになる骨格によって凡庸な印象は皆無。柔らかなオケの響きとともに幸福感に包まれる音楽。まさに円熟の響き。序章から見事な演奏に引き込まれます。
第1ソナタ
ソナタに入ると自然な流れの美しさが一層際立ってきます。やや速めのテンポが見通しの良さを感じさせ、メロディーのしなやかさは独墺系のテイストではなくやはりラテン系の艶やかさを感じます。一定の範囲の起伏が心地よい流れの良さを印象づけます。
第2ソナタ
少しテンポを落として、だんだんメロディーが深く響いてきます。実に自然な音楽の流れ。全奏者がジョルダンのしなやかなタクトに身を任せてゆったりとした音楽の演奏を楽しんでいるよう。川の流れに身を任せて漂っているような陶酔感に包まれます。弦の響きにはほんのりと色彩が乗って淡い色の繊細な変化が見どころのよう。絶美。
第3ソナタ
音楽が進んで、徐々に枯淡の域に近づいてきました。ここにきて少し音量を落としてきたのが効いています。ハイドンが書いた音楽の大きな流れを巧みに汲み取り、ソナタ一つごとに深みを増していく見事なジョルダンのコントロール。弦のメロディーにうっすらと重なるホルンの音色が心地よいですね。
第4ソナタ
波のうねりのような大きな起伏の音楽。ゆったりとしながらも絶妙な迫力を帯び、大きな流れと静けさの繰り返しから生まれる陶酔。一貫した流れが素晴らしい説得力を持ちます。弱音部の翳りと透明感が深い深い淵を感じさせます。
第5ソナタ
ピチカートの伴奏に乗った有名なメロディーのソナタ。ピチカートは目立たせずに切々としたメロディーにスポットライトを当ててきました。やはりジョルダンは全曲に渡る流れの良さを重要視しているようですね。絵巻物を見せられるように連続したソナタの醸し出す険しくも美しいメロディーライン。
第6ソナタ
終盤の慟哭のようなソナタ。木管によってくっきりと浮かび上がるメロディーが新鮮ですね。これまでの曲の流れを回想するような叙情的な雰囲気に酔いしれます。強奏部分でも決して力まない穏やかなコントロール。凄みさえ感じさせる尋常ではない穏やかさ。これがジョルダンの音楽の真髄でしょうか。そしてこのメロディーの美しさはハイドンの天才のなせる技。
第7ソナタ
最後のソナタ。あえて淡々と進めているよう。最後に向けて徐々に力が抜けていく様子の無常さがこの演奏の気高さを物語リます。
地震
地震は適度な迫力で駆け抜けるような演奏。曲全体の絶妙なバランス感覚を印象づけます。よく聴くとメロディーには巧みなアクセントがつけられ、やはり音楽を印象的に聴かせる技を感じる演奏でした。
アルミン・ジョルダンの振るアンサンブル・オーケストラル・ド・パリによる、ハイドンの名曲「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」の管弦楽版ですが、穏やかな表現の中に美しいメロディーが詰まった見事な演奏でした。緩徐楽章ばかりが並ぶこの曲で、一つ一つのソナタをしっかり描き分けながらも一貫した流れにまとめるコントロールは円熟のなせる技でしょう。ジョルダンの天地創造も素晴らしかったんですが、これはそれ以上の名演といっていいでしょう。ジョルダンの音楽に癒されました。評価は[+++++]とします。
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