作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

パルカニ四重奏団のOp.54(ハイドン)

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最近手に入れたアルバム。少し前に素晴らしい演奏を取り上げたオルランド四重奏団が名前を変えて活動していました!

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TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

パルカニ四重奏団(Párkányi Quartet)による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.54のNo.1、No.2、No.3の3曲を収めたSACD。収録は2010年5月17日から19日にかけて、プラハのドモヴィアスタジオ(Domovia Studio)でのセッション録音。レーベルはPRAgA Digitals。

オルランド四重奏団の記事はひと月前に取り上げたばかりです。

2017/08/27 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : オルランド四重奏団のOp.54(ハイドン)

しかも収録曲は今日取り上げるアルバムと同じOp.54からNo.1とNo.2です。オルランド四重奏団の収録が1981年(Pマーク)、今日取り上げるアルバムはその約30年後の録音ということになります。メンバーはチェロを除く3人がオルランドから変わらず。

第1ヴァイオリン:イシュトヴァン・パルカニー(István Párkányi)
第2ヴァイオリン:ハインツ・オーベルドルファー(Heinz Oberdorfer)
ヴィオラ:フェルディナント・エルブリヒ(Ferdinand Erblich)
チェロ:ミヒャエル・ミュラー(Michael Müller)

オルランド四重奏団は1997年に一旦解散したとのことですが、その後、1998年には新たなチェロ奏者ミヒャエル・ミュラーを迎えて現在のパルカニ四重奏団を結成しています。パルカニ四重奏団となった後には、メンバーのお国ものであるバルトークや、ラヴェル、ドビュッシー、ベートーヴェン、シューベルト、チャイコフスキーなどの録音も残しており、ハイドンについてはこのアルバムの他にOp.33とOp.42の録音を残しています。2007年から2009年にかけてOp.33とOp.42を録音しており、その後に別の曲を取り上げることもできたにもかかわらず、オルランド時代に録音したOp.54を再び取り上げたということは、この曲が彼らにとって特別な存在なのかもしれませんね。あの、オルランドの素晴らしい演奏から約30年を経た演奏はどうでしょうか?

Hob.III:58 String Quartet Op.54 No.1 [G] (1788)
ちょっと予想に反して非常にフレッシュかつ若々しい演奏に驚きます。残響は比較的多めですが、流石にSACDだけあって録音は非常に鮮明。響きの良いホールの最前列でクァルテットの音を浴びるような快感。冒頭から素晴らしい推進力と精緻なデュナーミクのコントロールでキレキレ。特に音の出端のエッジが剃刀のように鋭利なので非常にシャープに感じますが、そのあとの持続音の音量を実に巧みにコントロールしていくので冷たい感じはせず、巧みなコントロールの魅力が圧倒的な印象を残します。最初の曲の1楽章がアルバムの印象を大きく左右しますが、あまりに見事な入りに仰け反ります。続くアレグレットは実に豊かな表情をつけてデリケートなニュアンスを完璧に表現。弱音のさざめきに美しいメロディーがくっきり浮かび上がり、陰と陽の交錯の妙を味わえます。そしてメヌエットはしっかりとリズムをためて舞曲のリズムの面白さを強調し、チェロが踏み込んだ表現で存在感を発揮します。楽章間の対比をかなり鮮明につけて、ハイドンの曲の構成美を浮かび上がらせるのが彼らのスタイルとみました。そしてフィナーレは速いテンポで全員が妙技を披露しますが、表情が巧みにコントロールされ、フレーズごとにかなり表情を変化させてきます。ハイドンの仕込んだアイデアに隈取りをつけて強調するような踏み込んだ表現。1曲目からその表現意欲に圧倒されます。

Hob.III:57 String Quartet Op.54 No.2 [C] (1788)
ハイドンの創意が爆発するお目当てのNo.2。シャープな印象は前曲同様。冒頭から水も漏らさぬ集中力で4人の緊密なアンサンブルが進みます。力の入れどころ、抜きどころをわきまえているので力んだ感じは残さず、メリハリの効いた演奏になります。特にすっと力を抜いてハーモにを楽しむ余裕があるので音楽の流れが良い印象を残します。ゆったりとハーモニーが膨らんだかと思うとキリリと引き締めてきて、1楽章はまさに自在な表現。
2楽章はハイドンの時代の音楽とは思えない踏み込んだ音楽が流れます。特に前楽章ではあれほどくっきりシャープだったヴァイオリンがフラフラとさまようような表情を見せるあたりは、いつ聴いてもしびれます。そしてそこから救い出してくれるように優しく響くメヌエット。適度にコミカルな表情が安堵感を与えます。そして珍しいアダージョから入るフィナーレは予想通りしっかりと沈み込んでじっくりとした入り。深い淵をしっかりと覗いたからこそ続くプレストが華やかに映ります。

Hob.III:59 String Quartet Op.54 No.3 [E] (1788)
最後の曲。前2曲よりも落ち着いた曲想ゆえか、演奏の方もゆったりした感じ。曲に応じて変幻自在に演奏スタイルを変えてきます。表現のメリハリも前2曲よりも落ち着いて、逆に淡々と進めていきます。このあたりの表現はまさに円熟のなせる技。クリアばかりではない弦楽四重奏の魅力をたっぷりと伝えます。4本の楽器が響きあうハーモニーの美しさこそがこの曲のポイントとでも言いたげな演奏。そのまま続くラルゴ・カンタービレに入ると響きの深さがどんどん深くなり、パルカニのヴァイオリンは枯淡の響きを聴かせます。メリハリではなく音色の深さとバランスを巧みに組み合わせて長い楽章にしなやかな変化をもたらします。続くこの曲のメヌエットも非常にユニークなもの。ここでアンサンブルはクッキリとした響きを取り戻し、このユニークなメロディーを精緻に描き出します。そしてフィナーレはハイドンにしてはアクロバティックな音楽。各楽器の音域いっぱいを使って小気味好いメロディーを重ねながら次々と展開していく快感。最後は余裕たっぷりにこの技巧的な曲を軽々とこなして、キリリとまとめて終わります。

先にも書きましたが、彼らが若かりし頃、オルランド四重奏団として演奏した録音よりも、約30年の時を経て円熟を重ねた今回のアルバムの演奏の方が枯れているのではとの想像は見事に打ち砕かれ、もちろん円熟味も加わってはいるものの、逆に若々しくシャープな演奏にまとめてきました。もちろん、メンバーが1人入れ替わったことで、彼らの音楽の方向性が変化したのかもしれませんが、この鮮明かつ表現意欲に溢れた演奏は、このクァルテットが目指す音楽を研ぎ澄ましながら長い時間をかけて純度を上げてきた成果であろうと思います。飛ぶ鳥を落とす勢いを感じさせるオルランド、そして円熟を重ねながら純度を上げ、鮮明な音楽にまとめたパルカニといったところでしょう。私はどちらも甲乙つけがたい魅力を持っていると思います。ということで評価は全曲[+++++]といたします。未聴のOp.33とOp.42も間も無く入手できる見込みですので、こちらも楽しみです。

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