作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アンドレ・ワッツ デビュー25周年記念ライヴ(ハイドン)

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久々にCDです(笑)

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アンドレ・ワッツ(André Watts)のデビュー25周年記念で行われたカーネギー・ホールでのコンサートの模様を収録したアルバム。この1曲目にハイドンのピアノソナタ(Hob.XVI:48)が収められています。その他の収録曲はモーツァルトのK.332、シューベルトのD.784、ブラームスの4つの小品Op.119。収録は1988年4月6日、ニューヨークのカーネギーホールでのライヴ収録。レーベルは今は亡き英EMI。

アンドレ・ワッツは私にとっては懐かしい人。昔、父がFM放送から何曲かエアチェックしたカセットテープあり、好んで聴いましたが、それが誰の曲だったか、記憶があまりにもおぼろげでもはや覚えていません。その記憶以来ワッツの演奏を意識して聴いたことはありませんでしたが、このアルバムのジャケットでにこやかに微笑む姿を見て、懐かしく思った次第。特段ハイドンを演奏するという印象がある人ではありませんでしたが、このアルバムにハイドンの曲が含まれているとわかり手に入れました。

アンドレ・ワッツはWikipediaなどを調べてみると、1946年、ドイツのニュルンベルクでアフリカ系アメリカ人の父とハンガリー人の母の間に生まれました。フィラデルフィア音楽院でピアノを学び、何と9歳でフィラデルフィア管弦楽団とハイドンのピアノ協奏曲を演奏したそう。その後1963年、バーンスタインがCBSテレビの全国放送である「青少年コンサート」に招き、有名になりました。以来ワッツのコンサートはテレビ放送で幾度も取り上げられるなど、テレビによってキャリアを築いてきた人のようです。ワッツの録音を調べてみると、ハイドンのソナタを収めたディスクは他にもあり、コンサートでもハイドンを取り上げていたようです。今日取り上げるディスクはワッツのデビュー25周年を記念してニューヨークのカーネギー・ホールで開催されたリサイタルの模様を収めたものですが、同時期にリンカーンセンターでメータ指揮のニューヨークフィルとの共演 で、ベートーヴェン、リスト、ラフマニノフの協奏曲を演奏したコンサートも催され、こちらもテレビ中継されたとのこと。特にリストを得意とするということで、テクニックには自信があるようです。日本にも1969年に初来日しており、以降何度も来日しているようですので、実演に接した方もいらっしゃるかもしれませんね。

Hob.XVI:48 Piano Sonata No.58 [C] (1787/9)
カーネギーホールに降り注ぐ暖かい拍手から始まる雰囲気たっぷりの録音。非常にデリケートなタッチで優しく音を響かせて入ります。聴衆が耳を澄ましてワッツの美音に聴き入るピンと張りつめた気配包まれての演奏。美しい音階が特徴の曲ですが、その音階を力を抜いてサラサラと清水が流れるように響かせる円熟のタッチ。一音一音を丁寧に置いていきながら、余裕たっぷりに流れをコントールして、淀みを作ったり、さらりと流したりしながら、ハイドンの楽興の彼方に引き込まれていく快感。ホールの空気感が伝わる名録音。1楽章は未曾有の緊張感にしびれます。そして2楽章に入ると指が気持ちよく回り、ハイドンの曲を軽々と弾きこなしていきます。素晴らしいテクニックの持ち主が、力を抜いてさらりとこなす粋な演奏。殺気がみなぎるようなアムランとも異なり、シフのような濃い目の情感を伴うこともなく、純粋無垢な響きに包まれる演奏。純粋に音楽の躍動とハーモニーの透明感、そしてリズムの戯れを味わえる名演奏。最初の1曲目から聴衆を釘付けにする見事な演奏。拍手の前にブラヴォーが気持ちよく響きます。ハイドンのソナタの最上の姿にこの日の聴衆はいきなり幸福感に包まれたことでしょう。

続いてモーツァルトのK.332。これまた素晴らしいモーツァルト。これほど美しく響くモーツァルトは久しぶり。ハイドンも絶品だったんですが、こちらも極上の演奏。まるでカーネギーホールで当時の興奮を味わっているような至福のひととき。自身の四半世紀の活躍の節目というタイミングのコンサートにワッツがどれだけの準備をしたのでしょうか。あまりに完璧な演奏にとろけそうです。そして、シューベルトもブラームスも集中力が途切れることなく完璧な音楽が流れます。

アンドレ・ワッツのデビュー25周年を記念したライヴですが、まさに宝物のようなアルバム。この日のコンサートを聴いた聴衆はワッツのピアノの素晴らしさに打ちひしがれたでしょう。冒頭に置かれたハイドンのソナタのなんたる美しさ。ワッツの円熟のタッチから生み出される美しい響きにノックアウトです。ピアノの好きな方は必聴のアルバムでしょう。もちろんハイドンの評価は[+++++]とします。てにはいるうちにどうぞ。

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