トーマス・ファイの69番、86番、87番
8月最初の記事は、トーマス・ファイのハイドンの交響曲集を取り上げましょう。

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トーマス・ファイのハイドンの交響曲はhänsslerから、たしか12枚目までリリースされいますが、これは7枚目にあたるもの。収録は2006年3月、7月。収録曲は69番ラウドン、86番、87番の3曲。ジャケットには”Joseph Haydn Complete Symphonies”との看板が掲げられていますので、ハイドンの大山脈、交響曲全集を目指した壮大な企画です。完成すればドラティ、アダム・フィッシャー、デニス・ラッセル・ディヴィスに続いて4番目の全集(多数の演奏家の合作であるNAXOS盤を含めると5番目)となるわけですが、今までの録音ペースからすると完成するのはだいぶ先になるんでしょうね。
手元にもファイのシリーズはこのアルバムを含めて9枚のアルバムがありますが、このアルバムを最初に紹介するのは好きな86番が含まれているため。
トーマス・ファイはライナーノーツによれば、ハイデルベルク-マンハイム音楽学校でピアノと指揮を学び、その後古楽器奏法をザルツブルクのモーツァルテウムでアーノンクールに学んだとのこと。また、バーンスタインの指揮コースにも参加しているということで、一聴してわかる激しい表現はアーノンクールとバーンスタインに学んだことに端を発している訳ですね。
指揮者としての活動も精力的で、このアルバムのオケであるハイデルベルク交響楽団も彼自身が立ち上げ1994年にデビューしたオケとのこと。金管楽器のみ古楽器で、ピッチは現代楽器にあわせているそうです。前身は自ら学生時代の87年に古楽を主に演奏するために組織したシュリアバッハ室内管弦楽団。最近も2003年にアンサンブル・ラ・パッショーネというバロックオーケストラ、マンハイム・モーツァルト・オーケストラというオケなどを立ち上げ、演奏活動をしているということで有名楽団のポストにおさまるということではなく、次々と自身でオケを作っているあたり、既存の枠には収まらないというか、音楽は創造だとの意気込みも感じます。
ハイデルベルク交響楽団HP(英文)
肝心のこのアルバムの演奏ですが、ハイドンの創意をファイの創意溢れる演奏で浮き彫りにした見事なもの。
冒頭の69番ラウドン。いきなりアーノンクールばりのメリハリの利いた音響が眼前に広がります。音色はアーノンクールに近いものがありますが、メリハリの付け方が違います。アーノンクールは灰汁の強い溜の利いたアクセントが特徴ですが、ファイの場合、変化はフレーズ単位というより音単位でときおりレガートを利かせたり千変万化する多彩さ。速めのテンポのせいかフレーズのつながりはアーノンクールより滑らかで、構成感は緊密さを保ってます。フィニッシュのティパニや金管のアクセントはアーノンクール直系のキレを感じます。
2楽章は意外に穏やかさが引き立ちます。静けさの中に浮かび上がる弦と木管系の音色の変化にスポットライトを当ててつぶやくようなフレージング。3楽章のメヌエットは一転して端正。
フィナーレは期待通りファイの持ち味炸裂。インテンポで畳み掛けるように盛り上げ、びしっと終わります。
続いて、作曲順に87番。87番は序奏なしにいきなり主旋律から始まるちょっと変わった曲。この主旋律の表情づけがきわめて面白い。主旋律の変奏がつづきますが、ファイの千変万化する表情づけが非常に効果的。メロディーラインの面白さがこれだけ表現されている演奏はないでしょう。
2楽章はここでも木管楽器の美しさが引き立ちますね。メヌエットとフィナーレもラウドンと同様の傾向ですが、完成度はこの曲の方が上。特にフィナーレの素晴らしさは息をのむほど。87番は名演です。
そして、お目当ての86番。基本的な構成は前2曲と同様すばらしい完成度ですが、先人の演奏によるこの曲の純音楽的な偉大な側面が刷り込まれているせいか、どうにも表現が小手先に聴こえてしまう印象が否めません。これは私の個人的な好みによるものだと思いますが、86番というパリセットのなかでは群を抜いた非常に純音楽的な構成を持った曲であることに起因しているかもしれません。
そんな中、ファイの表現が効果的なのが3楽章のメヌエット。今までの演奏では聴いたことがない装飾音が効果的に配され、新鮮な響き造り出しています。
そしてフィナーレはやはりファイの独壇場。
ファイの演奏をまとめると、古楽器風のノンヴィブラートの弦と古楽器風の奏法による一見アーノンクール風の祝祭的演奏ながら、音色とフレージングを千変万化させることで曲の本質に達しようという表現意欲漲る演奏ということでしょう。ハイドンの古楽器演奏による新次元を切り開いている演奏です。この感じはラトルがウィーンフィルでベートーヴェンの全集を入れた時、そして最近ではパーヴォ・ヤルヴィのベートーヴェンを聴いたときとおなじ感触ですね。
評価は87番が最高評価の[+++++]、69番ラウドンと名演ひしめく86番が[++++]としました。86番目当てでこのアルバムを取り上げましたが、意外にもこのアルバムの聴き所は87番でした。
古楽器系の演奏ではホグウッド、グッドマン、ブリュッヘンと何れもハイドンの交響曲全集の完成を見ていません。このすばらしいファイの企画が完成を見ることを祈らんばかりです。
全集が完成したときのファイのジャケット写真は、アダム・フィッシャーのアルバムに含まれる着手時の若々しい写真と完成時の老いた姿と同様な時の流れを感じさせるのでしょうね。
第4のハイドンの交響曲全集が完成にいたるよう、ファイのアルバムの売上げを支えなくてはいけませんね(笑)
私も未入手のアルバムを注文することにしましょうかね。

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トーマス・ファイのハイドンの交響曲はhänsslerから、たしか12枚目までリリースされいますが、これは7枚目にあたるもの。収録は2006年3月、7月。収録曲は69番ラウドン、86番、87番の3曲。ジャケットには”Joseph Haydn Complete Symphonies”との看板が掲げられていますので、ハイドンの大山脈、交響曲全集を目指した壮大な企画です。完成すればドラティ、アダム・フィッシャー、デニス・ラッセル・ディヴィスに続いて4番目の全集(多数の演奏家の合作であるNAXOS盤を含めると5番目)となるわけですが、今までの録音ペースからすると完成するのはだいぶ先になるんでしょうね。
手元にもファイのシリーズはこのアルバムを含めて9枚のアルバムがありますが、このアルバムを最初に紹介するのは好きな86番が含まれているため。
トーマス・ファイはライナーノーツによれば、ハイデルベルク-マンハイム音楽学校でピアノと指揮を学び、その後古楽器奏法をザルツブルクのモーツァルテウムでアーノンクールに学んだとのこと。また、バーンスタインの指揮コースにも参加しているということで、一聴してわかる激しい表現はアーノンクールとバーンスタインに学んだことに端を発している訳ですね。
指揮者としての活動も精力的で、このアルバムのオケであるハイデルベルク交響楽団も彼自身が立ち上げ1994年にデビューしたオケとのこと。金管楽器のみ古楽器で、ピッチは現代楽器にあわせているそうです。前身は自ら学生時代の87年に古楽を主に演奏するために組織したシュリアバッハ室内管弦楽団。最近も2003年にアンサンブル・ラ・パッショーネというバロックオーケストラ、マンハイム・モーツァルト・オーケストラというオケなどを立ち上げ、演奏活動をしているということで有名楽団のポストにおさまるということではなく、次々と自身でオケを作っているあたり、既存の枠には収まらないというか、音楽は創造だとの意気込みも感じます。
ハイデルベルク交響楽団HP(英文)
肝心のこのアルバムの演奏ですが、ハイドンの創意をファイの創意溢れる演奏で浮き彫りにした見事なもの。
冒頭の69番ラウドン。いきなりアーノンクールばりのメリハリの利いた音響が眼前に広がります。音色はアーノンクールに近いものがありますが、メリハリの付け方が違います。アーノンクールは灰汁の強い溜の利いたアクセントが特徴ですが、ファイの場合、変化はフレーズ単位というより音単位でときおりレガートを利かせたり千変万化する多彩さ。速めのテンポのせいかフレーズのつながりはアーノンクールより滑らかで、構成感は緊密さを保ってます。フィニッシュのティパニや金管のアクセントはアーノンクール直系のキレを感じます。
2楽章は意外に穏やかさが引き立ちます。静けさの中に浮かび上がる弦と木管系の音色の変化にスポットライトを当ててつぶやくようなフレージング。3楽章のメヌエットは一転して端正。
フィナーレは期待通りファイの持ち味炸裂。インテンポで畳み掛けるように盛り上げ、びしっと終わります。
続いて、作曲順に87番。87番は序奏なしにいきなり主旋律から始まるちょっと変わった曲。この主旋律の表情づけがきわめて面白い。主旋律の変奏がつづきますが、ファイの千変万化する表情づけが非常に効果的。メロディーラインの面白さがこれだけ表現されている演奏はないでしょう。
2楽章はここでも木管楽器の美しさが引き立ちますね。メヌエットとフィナーレもラウドンと同様の傾向ですが、完成度はこの曲の方が上。特にフィナーレの素晴らしさは息をのむほど。87番は名演です。
そして、お目当ての86番。基本的な構成は前2曲と同様すばらしい完成度ですが、先人の演奏によるこの曲の純音楽的な偉大な側面が刷り込まれているせいか、どうにも表現が小手先に聴こえてしまう印象が否めません。これは私の個人的な好みによるものだと思いますが、86番というパリセットのなかでは群を抜いた非常に純音楽的な構成を持った曲であることに起因しているかもしれません。
そんな中、ファイの表現が効果的なのが3楽章のメヌエット。今までの演奏では聴いたことがない装飾音が効果的に配され、新鮮な響き造り出しています。
そしてフィナーレはやはりファイの独壇場。
ファイの演奏をまとめると、古楽器風のノンヴィブラートの弦と古楽器風の奏法による一見アーノンクール風の祝祭的演奏ながら、音色とフレージングを千変万化させることで曲の本質に達しようという表現意欲漲る演奏ということでしょう。ハイドンの古楽器演奏による新次元を切り開いている演奏です。この感じはラトルがウィーンフィルでベートーヴェンの全集を入れた時、そして最近ではパーヴォ・ヤルヴィのベートーヴェンを聴いたときとおなじ感触ですね。
評価は87番が最高評価の[+++++]、69番ラウドンと名演ひしめく86番が[++++]としました。86番目当てでこのアルバムを取り上げましたが、意外にもこのアルバムの聴き所は87番でした。
古楽器系の演奏ではホグウッド、グッドマン、ブリュッヘンと何れもハイドンの交響曲全集の完成を見ていません。このすばらしいファイの企画が完成を見ることを祈らんばかりです。
全集が完成したときのファイのジャケット写真は、アダム・フィッシャーのアルバムに含まれる着手時の若々しい写真と完成時の老いた姿と同様な時の流れを感じさせるのでしょうね。
第4のハイドンの交響曲全集が完成にいたるよう、ファイのアルバムの売上げを支えなくてはいけませんね(笑)
私も未入手のアルバムを注文することにしましょうかね。
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