作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ダヴィド・ゲリンガス/北ドイツ放送響のチェロ協奏曲2番(ハイドン)

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お宝アルバム、見つけました! ディスクユニオンの店頭で見かけたとき、もちろん過呼吸気味(笑)

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ダヴィド・ゲリンガス(David Geringas)のチェロ、ヴォルデマール・ネルソン(Woldemar Nelsson)指揮の北ドイツ放送交響楽団(Das Sinfonieorchester des Norddeutschen Rundfunks)の演奏で、ハイドンのチェロ協奏曲2番、プロコフィエフのチェロ協奏曲Op.132の2曲を収めたLP。収録は1979年7月、ハンブルクにてとだけ記されています。レーベルはeurodisk。

ダヴィド・ゲリンガスといえばチェロの名手。特にハイドンの演奏はどれも素晴らしいもので、当ブログでも色々取り上げています。

2014/07/05 : ハイドン–協奏曲 : ダヴィド・ゲリンガス/チューリンゲン・ヴァイマル室内管のチェロ協奏曲2番(ハイドン)
2014/03/23 : ハイドン–室内楽曲 : ダヴィド・ゲリンガス/エミール・クラインのバリトン二重奏曲集(ハイドン)
2013/11/14 : ハイドン–室内楽曲 : ゲリンガス・バリトン・トリオのバリトン三重奏曲集(ハイドン)
2013/09/14 : ハイドン–協奏曲 : ダヴィド・ゲリンガス/チェコフィルのチェロ協奏曲集

今日取り上げるチェロ協奏曲の2番については、レビューに取り上げた2002年録音のチューリンゲン・ヴァイマル室内管との演奏、1993年録音のチェコフィルとの演奏の2種よりさらに古く1979年の録音。ゲリンガスは1946年生まれということで、33歳という年齢での録音となります。ジャケットに写るゲリンガスの姿も若い! これまでも色々な奏者の演奏を色々聴いてきましたが、後年有名になった奏者の若い頃の録音はおしなべて覇気に溢れた素晴らしい演奏であることが多いですので、今回入手したアルバムも期待すること大であります。

ゲリンガスの略歴についてはチェコフィルとの協奏曲の記事をご参照ください。

指揮者のヴォルデマール・ネルソンははじめて聴く人。1946年、ウクライナやベラルーシ国境に近いロシアのクリンツィ(Klinzy)生まれの指揮者で、1976年に西ドイツに亡命し、以後国際的に活躍した人とのこと。ロシア時代はヴァイオリニストとして中央ロシアのノヴォシビルスク交響楽団で活躍し、その後指揮を学んで、コンドラシンに見出されてモスクワフィルのアシスタント指揮者となり、オイストラフ、ロストロポーヴィチ、クレーメルなどの奏者と共演したり、ペルトやシュニトケと親交を持ったそう。亡命後はこのアルバムのオケである北ドイツ放送響とツアーを行い、西ドイツに定住。それまでオペラを振った経験がないにもかかわらずバイロイトに招かれローエングリンやさまよえるオランダ人を振ったそう。またカラヤンの招きでザルツブルク音楽祭に参加し、ペンデレツキのオペラを初演するなど、日本ではあまり知られていないもののなかなかの経歴の持ち主ですね。亡くなったのは2006年とのことです。

Hob.VIIb:2 Cello Concerto No.2 [D] (1783)
LPのコンディションは最高。柔らかなオケの序奏が心地よく響きます。律儀でオーソドックスなオケの入り。ゲリンガスのチェロはいきなりむせび泣くように入ります。健康的に響くオケに対しちょっと影のある音色で深みを感じさせます。徐々にオケの各パートもゲリンガスの音色に寄り添うようになっていくのが面白いところ。徐々にゲリンガスは深みのある響きを繰り出し、非凡なところを感じさせ始め、特に高音域の独特の輝きが眩しくなってきます。オケの方も純度の高い音色でゲリンガスのソロに呼応。オケは迫力よりは純度というか透明感で聴かせる感じ。これがヴォルデマール・ネルソンのセンスでしょう。中盤からはゲリンガスの美音とのびのびとしたボウイングに釘付け。この若さですでに至芸と言っていいでしょう。常に冷静に室内楽のように精妙にサポートするオケも非常にいい感じ。聴き進むうちにハイドンのめくるめくような名旋律の美しさにのまれるよう。1楽章のカデンツァはゲリンガスの自作。ここにきてゲリンガスの表現意欲が炸裂。糸を引くように美音を重ねて孤高の演奏が続きます。力まずまるで老成した奏者のような自在なボウイングの魅力を聴かせます。なんでしょう、この気高さは。
アダージョは、もはや燻し銀の響きと言っていいでしょう。1楽章では律儀に振っていたネルソンもここではゆったりと深い音楽を創り、ゲリンガスの音楽にスタイルを合わせてきます。ゲリンガスもネルソンも枯淡の境地。この楽章のカデンツァ、深い。オケの響きが消えた後の静寂にゲリンガスのチェロの響きだけが静かに置かれる名演奏。心が鎮まる音楽です。
そしてフィナーレでもオケはしなやかなまま。ゲリンガスのボウイングは力が抜けて魂そのものの音楽のように昇華されていきます。途中からオケが襟を正すように響きがフレッシュになって響きを引き締めることで曲が締まります。最後のカデンツァは音量を落として神がかったような透明感。ゾクゾクします。最後もオケがキリリと締まって曲を終えます。

いやいや絶品。ゲリンガスのこの曲の演奏の中で最もゲリンガスの個性が良く出た演奏と言っていいでしょう。サポートするヴォルデマール・ネルソン指揮の北ドイツ放送響も実に味わい深い演奏で華を添えます。今一度ジャケットに写るゲリンガスの表情を眺めると、ほのかに微笑むような優しい表情でこちらを見つめていますが、その表情にこの演奏の味わい深い響きがオーバーラップして見えるのは私だけでしょうか。若きゲリンガスが世に問うた素晴らしい演奏と言っていいでしょう。これは宝物になりそうです。もちろん評価は[+++++]とします。

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