作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

マルク・ミンコフスキ/都響の102番(東京文化会館)

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昨日7月10日は気になっていたコンサートに出かけました。

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東京都交響楽団:第836回定期演奏会Aシリーズ

場所は上野の東京文化会館。プログラムはマルク・ミンコフスキ(Marc Minkowski)指揮の東京都交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲102番、ブルックナーの交響曲3番(ノヴァーク1873年初稿版)の2曲。もちろんお目当はハイドンです。

ミンコフスキはハイドン好きの方ならご存知のことでしょう。主兵のルーブル宮音楽隊とのザロモンセットやチェチーリアミサの録音があり、当ブログでもかなり前に取り上げています。

2012/05/18 : ハイドン–声楽曲 : マルク・ミンコフスキ/ルーブル宮音楽隊によるチェチーリア・ミサ
2010/05/15 : ハイドン–交響曲 : 流石だったぜ、ミンコフスキ
2010/05/15 : ハイドン–交響曲 : 古楽器新世代、弾む機知
2010/05/14 : ハイドン–交響曲 : ミンコフスキのザロモンセット到着

ザロモンセットの方は太鼓連打の奇抜な入りといい、遊び心たっぷりの演奏は世評もかなり良かったように記憶しています。録音では聴いていたものの、この演奏スタイルは是非一度生の演奏を聴いて見たいと思っていた人でした。そのミンコフスキが来日してハイドンの、それも実に通好みの102番を振ると聞いてチケットをとった次第。

ミンコフスキは1962年パリ生まれと私と同世代。米ピエール・モントゥー・スクールで指揮を学び、1982年に自身でルーブル宮音楽隊を設立し、バロックオペラを中心に活動してきました。ハイドンでは上記の通り、ザロモンセットの録音が話題になりましたね。有名オケとの共演歴も豊富で、ベルリンフィル、ウィーンフィル、シュターツカペレ・ドレスデンなどを筆頭に各地のオケに招かれています。あんまり知りませんでしたが、来日歴も何度かあり、このコンサートでのオケである都響は2014年8月、2015年12月に続き3回目の客演とのこと。また手兵のルーブル宮音楽隊ともハイドンの没後200年の2009年に初来日以降、2013年にもコンサートを開いていますし、2012年からオーケストラ・アンサンブル金沢のプリンシパル・ゲスト・コンダクターを務めるなど、意外と日本で活動していることがわかりました。

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この日のコンサート会場は東京文化会館。昔はコンサートといえばここが定番でしたがサントリーホール、東京オペラシティ、すみだトリフォニーと新しいホールができて、ここ東京文化会館に来るのは実に20年ぶりくらい。上野には美術館には適当な頻度で来るのですがコンサートでは来なくなっていました。

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先日向かいのル・コルビュジエ設計の国立西洋美術館が世界遺産に登録されていますが、その日本での一番弟子格であった前川國男設計の東京文化会館は意外に綺麗にメンテナンスされていて、ホワイエに入ると広々とした空間が実に心地よい。やはり名建築ですね。ただ、長年の利用の慣習か什器などが雑然と置かれ、空間の気高さに比べてちょっと雑然とした印象なのが惜しいところ。もう少し綺麗に使ってあげて欲しいところです。

ホール内部もカラフルなシートと昔から変わらぬ壁面の木製のオブジェ的装飾など懐かしい限り。ホール内を見渡し懐かしがっているうちに定刻となりオーケストラの団員が登壇。拍手に迎えられてミンコフスキも笑顔で登場しました。

前半はハイドンの102番。ミンコフスキがタクトを下ろすと音量とテンポを落とした序奏が丁寧に描かれ進みます。オケは出だしだからかちょっと不揃いなところもありましたが主題に入るとミンコフスキ特有の弾力的なリズムと推進力がみなぎり、オケも調子が出てきます。ことさらノンヴィブラート風に演奏するのではなく、躍動感、高揚感を保つよう非常に細かくタクトを震わせオケを煽っていくのが特徴でしょうか。ルーブル宮音楽隊とのザロモンセットの録音でも102番は名演ですので、その録音のオケと比べて聴くとオケの反応の鮮やかさに差があるのは致し方ないところ。ですが、現代楽器のオケによる演奏では、音楽のヴォリューム感というか大きな構造のバランスの良さがよく感じられる面もありますね。1楽章は流石ハイドンを得意とするミンコフスキ、手堅くまとめた印象。
柔らかく美しいアダージョは奇を衒うことなく比較的速めのテンポで色彩感とアゴーギクの面白さを生かした演奏。惜しむらくは、この東京文化会館の硬く乾いた響きで本来ならばもう少し感じられるであろう潤いに欠けていたこと。これはホールの所為でしょうが、都響のホームグラウンドですのでやむを得ないでしょう。
メヌエットは予想通り軽やか、そして生での聴きどころであるフィナーレもオケのキレと高揚感が素晴らしく聴きごたえがありました。意外と言ってはなんですが、都響もこの曲も終盤になると弦パートを始めとしてなかなかの切れ味。都響を聴くのも実に久しぶりですので改めて最近の充実ぶりがうかがえました。もう一つ流石だったのはミンコフスキが古典のハイドンの整然とした印象を保っていたこと。流石ハイドンを得意としている人ですね。

もちろん会場からは期待通りの演奏に拍手が降り注ぎました。

休憩後はブルックナーの3番。しかもノヴァーク1873年初稿版ということで、非常に珍しい版での演奏。解説によるとよく演奏されるのはノヴァーク第3稿でこの1873年版の16年後の版。ブルックナーは自身の曲をなんども修正したことで知られますが、この3番も今回演奏される版は作曲当初の若書きの部分があったりという版とのこと。ブルックナーは嫌いではないんですが、3番はほとんど馴染みがない上に、この若書き版ということで、非常に新鮮に聴けたんですが、、、 ブルックナーとは荘重に響くものという思い込みを木っ端微塵に打ち砕く、ミンコフスキならではの創意というか独創的な解釈というか、もしかしたらハイドンの驚愕で聴かせた悪ふざけというような演奏。速めのテンポでオケをグイグイ煽りながらバリバリ鳴らし、響きの変化とダイナミクスの変化を畳かけるように聴かせる演奏。ブルックナーに詳しい方にこの解釈の評価はお任せすることにして、私自身は驚きというか、違和感というか、アンマッチ感覚を覚えたのが正直なところ。それでも素晴らしかったのはオケの熱演。特にヴィオラやヴァイオリンの熱気は素晴らしく金管も安定感抜群。とにかく良くオケが鳴った演奏でした。

演奏が終わると、オケをフルスロットルで鳴らしきった充実感から、盛大な拍手とブラヴォーが降り注ぎましたが、一方瞬時に席を立って帰るお客さんも目立ち、ミンコフスキの解釈の評価は割れた感じでした。確かにオケの迫力とミンコフスキのコントロールは素晴らしかったんですが、これがブルックナーかと言われると、私は前衛的でちょっと奇異な解釈という印象を受けました。もちろん、私がブルックナーを語れる立場でもなく、一個人の感想に過ぎませんが、ハイドンの演奏でも前衛的で素晴らしい演奏があるのに対し、前衛的でちょっとハイドン本来の魅力をスポイルしてしまっている演奏もあり、どちらかというと後者に近い印象でした。

まあ、私のお目当のハイドンについては前半の素晴らしい演奏で満足しておりますので、この日の目的は達成というところでした。

ミンコフスキは今後も来日公演が予定されているようですので、またの機会にその音楽を確かめたいと思います。

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