作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】キアロスクーロ四重奏団のOp.20後半(ハイドン)

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話題盤の続編がリリースされましたので取り上げます。

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TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

キアロスクーロ四重奏団(Chiaroscuro Quartet)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.20のNo.4、No.5、No.6の3曲を収めたSACD。収録は2015年12月、ドイツはブレーメンの放送ホールでのセッション録音。レーベルはBIS。

以前取り上げたキアロスクーロ四重奏団のアルバムは、衝撃的な内容で、もちろん[+++++]としましたが、最終的に2016年にレビューした弦楽四重奏のアルバムで最も感銘を受けたアルバムとしてH. R. A. Award 2016に選定したことは、当ブログの読者の皆さんならご存知のことでしょう。これまでの伝統的な演奏とは全く異なるアプローチで、ハイドンのこの曲集の魅力を見事に浮かび上がらせました。

2016/12/31 : H. R. A. Award : H. R. A. Award 2016
2016/11/30 : Haydn Disk of the Month : Haydn Disk of the Month - November 2016
2016/11/23 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : 【新着】キアロスクーロ四重奏団のOp.20(ハイドン)

そのあたりのことは上のリンク先をご覧ください。

そのキアロスクーロ四重奏団が予想通り、Op.20の後半3曲をリリースしてきたということで、これは取り上げないわけには参りません。奏者などの情報については前半3曲の記事をご参照ください。

今日取り上げる録音は、前盤の10ヶ月後に同じ録音会場であるブレーメンの放送ホールでの録音ということで、録音を含めた環境は前盤とほぼ同一で、メンバーも前盤から変わりありません。

第1ヴァイオリン:アリーナ・イブラギモヴァ(Alina Ibragimova)
第2ヴァイオリン:パブロ・エルナン・ベネディ(Pablo Hernán Benedí)
ヴィオラ:エミリー・ヘルンルンド(Emilie Hörnlund)
チェロ:クレア・ティリオン(Claire Thirion)

Hob.III:34 String Quartet Op.20 No.4 [D] (1772)
前盤の最初の曲であるOp.20のNo.1を聴き始めた時と同じく、しなやかな演奏の中に何やらメラメラと青い炎のような前衛性が感じられる演奏。微妙な音量の変化とフレージングによって緊張感溢れる現代性が宿り、これまでの他の奏者の演奏とは一味違ったスリリングさに支配された音楽が流れます。特に音量を極端に落としたところの緊張感が最高。聴き進むうちにヴァイオリンのアリーナ・イブラギモヴァのキレ味鋭い音階が冴えてきます。まるでペルトの曲でも聴いているような雰囲気が漂いますが、紛れもなくこれはハイドンの音楽であり、現代風に料理した古典の名曲であることがわかります。予想通り冒頭からキレキレ。
続く2楽章も抑制された表現の中に緊張感をたたえた演奏が続きます。時折装飾音を交えながら変奏を重ね、徐々に徐々に音楽を膨らませていきます。瞬間瞬間の響きの現代性とメロディーラインのしなやかさが相まって独特の雰囲気。
メヌエットはガット弦らしいキレの良い響きが、無印良品のテナントで流れるBGMのようなブルガリア民謡風の響きを生み出します。このあたりのセンスは他のクァルテットの追随を許さないもの。
そして、フィナーレでようやくやりたい放題、緩急自在の賑やかさが聴かれました、まさにハイドンの書いた音楽の真髄に触れようと、音符を彼らなりにかなり自由に解釈して再構成。終盤、弦がはち切れんばかりの強奏でクライマックスを盛り上げます。この振り切れ方は尋常ではありません。相変わらず見事の一言。

Hob.III:35 String Quartet Op.20 No.5 [f] (1772)
短調の名曲。冒頭から独特のセンスが光ります。従来の演奏の影響を全く感じさせない個性的な入り。緊密に書かれたハイドンの音楽が現代風な装いを纏って光り輝きます。ここでもイブラギモヴァのボウイングが冴え渡ります。テンポやアクセントは独特ながらこの曲独特の推進力は健在。見事な演出に唸ります。この人たち、やはり只者ではありませんね。曲の大きなうねりを実に見事に表現していきながら、ディティールは非常に緻密。この表現は即興性を加えたものなのでしょうか。非常に緻密な設計が必要な演奏に聴こえますが、このスリリングさはライヴに近い緊張感から生まれるものと思われます。機会があれば是非実演を聴いてみたくなりました。こんこんと湧き出る創造力にノックアウト。
メヌエットはじっくり取り組んだ1楽章を際立たせるようにあえてさらりと入ります。サクサクと進めることで曲の構造がくっきりと浮かび上がります。この辺りのセンスが流石なところ。
そしてアダージョもメヌエットの延長のように一体感を感じさせる解釈。この楽章のメロディーの素朴な美しさを活かすためか、イヴラギモヴァは遊びまわるようにしなやかな弓使いで流れるようにメロディーを描いていきます。
フィナーレのフーガはバッハを思わせるような厳粛な雰囲気で始まりますが、あえて音程を微妙にずらして翳りを加え、まさにキアロスクーロといった表現でまとめてきます。

Hob.III:36 String Quartet Op.20 No.6 [A] (1772)
メロディーと戯れるハイドンの創意をそのまま演奏したような軽妙洒脱な入り。曲ごとに表現をまったく変えてくるあたりは、このクァルテットの表現力を物語ります。時折レガートを混ぜて変化をつけ、音量を落としてざわめくような気配を感じさせたかと思うと一転して伸びやかなボウイングで音階を刻みハッとさせるなど語り上手。さして起伏をつけているわけではないのにしっかりと表情がついてくるのが流石。
アダージョに入ると、テクニックを見せるという次元とは真逆に朗らかなメロディーの朗らかさに浸るような楽しみながらの演奏。お互いの音の出方を探りながらメロディーを重ねていく至福のアンサンブル。
この曲では入りも締めも実にデリケート。2楽章の消え入るような終わりから、メヌエットのあまりに繊細な響きの入り驚きます。なんと聞き進むとユーモラスさを強調するためか明らかに音程を外して遊びます。「迂闊者」のチューニングほどではありませんが、確信犯ですね(笑) ハイドンもこう来るとは思わなかったに違いありません。
そして最後のフーガでも抑制された表現の中に宇宙のような広がりを感じさせます。フーガが進むに連れて響きが鮮明になり、最後は幽玄さを感じさせるようにスッと終わります。いやいや素晴らしい創造力ですね。

キアロスクーロ四重奏団によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.20の後半3曲をまとめたアルバムですが、予想に違わす、過去の演奏とは異なるアプローチでこの曲集の新たな姿を描き切りました。前盤と合わせて6曲のまとまりも良く、新たなスタンダード盤としても良いと思います。前盤での衝撃を体験しているぶん本盤は落ち着いて聴くことが出来ましたが、それでもこちらの想像力のさらに上をいく創造性に唸りっぱなし。評価は3曲とも[+++++]とします。

シリーズものの録音に執念を燃やすBISレーベルゆえ、このあともハイドンの録音が続きそうな気がしています。次はロシア四重奏曲でしょうか、、、

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