作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

フランチスカス四重奏団のOp.2のNo3(ハイドン)

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7月最初のレビューは弦楽四重奏の珍しいアルバム。

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TOWER RECORDS / amazon

フランチスカス四重奏団(Franciscus Quartet)による"Special Arrangements"というタイトルのアルバム。アストル・ピアソラ、ベートーヴェン、ショスタコーヴィチ、ドヴォルザーク、ルイス・ヒアネオ、シューベルトの曲に混ざってハイドンの弦楽四重奏曲Op.2のNo.3が収められています。ハイドン以外の曲目はTOWER RECORDSのリンク先をご参照ください。収録は2003年7月3日から4日、オランダのヒルフェルスム(Hilversum)のMCOスタジオでのセッション録音。レーベルはCHALLENGE CLASSICS。

ご記憶の方もいらっしゃるかもしれませんが、フランチスカス四重奏団の演奏は以前、SkunJPさんからの道場破り的投げかけ(笑)で記事にしたことがあります。一部で神格化された演奏との触れ込みで持ち込まれたアルバム。

2016/09/10 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : フランチスカス四重奏団の弦楽四重奏曲集(ハイドン)

その経緯についてはリンク先をご覧ください。今日取り上げるのはその時別の録音があるということで存在を知ったアルバムがようやく手に入ったので取り上げた次第。前出のアルバムは1998年の録音であるのに対し今日取り上げるアルバムは2003年とその5年後の録音。メンバーを調べてみると、第2ヴァイオリンとヴィオラは変わっていましたので、改めてメンバーを記載しておきましょう。

第1ヴァイオリン:ダイアナ・モリス(Diana Morris)
第2ヴァイオリン:パメラ・クービク(Pamela Kubik)
ヴィオラ:フランク・ブラッケー(Frank Brakkee)
チェロ:セバスチャン・ファン・エック(Sebastiaan van Eck)

気になるのはこのアルバムのタイトル。"Special Arrangements"とは、直訳すれば「特別な編曲」ということでしょう。解説によれば、もともと弦楽四重奏のために書かれたものではない曲が集められているとのこと。ハイドンの作品はもともと、2本のホルンと弦楽四重奏のために書かれたディヴェルティメント(Hob.II:21)であり、弦楽四重奏曲の中では録音は極端に少ないものです。ということでなかなか凝った企画のアルバムであることがわかります。

ハイドンの前にアストル・ピアソラ、ベートーヴェン、ショスタコーヴィチ、ドヴォルザークの曲が配されますが、これが皆なかなか良い。冒頭のピアソラも色彩感がありタンゴのリズムのような独特の感じがよく出ています。そして特にショスタコーヴィチのユーモラスな展開も見事。まるでクレーメルの企画のような選曲のキレ。ハイドンは8トラック目からです。

Hob.II:21(III:9) String Quartet Op.2 No.3 [E flat] (c.1760-62)
この曲はアレグロ-メヌエット-アダージョ-メヌエット-アレグロの5楽章構成です。周りに違う時代や地域の音楽が置かれることで、ハイドンという古典期の作曲家による美しいメロディーとキリッとした構成がハイドンだけ並べた時よりも引き立ちます。フランチスカス四重奏団はそれを意識させようとしてるのか、演奏はオーソドックスですが音色に明るさを帯びているので、古典の均整のとれた構造美が印象的。ヴァイオリンのダイアナ・モリスの弓使いはノビノビとして輝かしい音色。
続くメヌエットはリズムに溜めがあってまさにディヴェルティメント然とした音楽。素朴なリズムの面白さを散りばめた名曲ですね。演奏は肩肘張らず、前出のハイドンのアルバムが音色を揃えるのに集中していたのと比べると、こちらの方がいい感じ。
そしてアダージョもハイドンならではの美しいメロディーラインが聴きどころ。別に特別なことはしてないのですが、曲に潜む素朴さをうまく汲み取っての演奏が実にいい感じ。
後半のメヌエットはビチカートに誘い出されたヴァイオリンパートが遊びまわるような曲調。そのテーマを変奏で展開していきます。変奏のアイデアの豊富さはこの時代の曲にも見られ、各パートが自在に絡みながら進んでいきます。メロディーの彫り込みが深いのでシンプルな曲ながら飽きさせません。
そしていつもながら充実した筆致のフィナーレ。曲の終わりを華やかに締める短いフィナーレですが、実に楽しげな演奏がまさにディヴェルティメントらしい雰囲気を残します。素晴らしい演奏でした。

そのあとのルイス・ヒアネオの不思議な響きの曲がまたハイドンの曲の華やかな余韻をさっと拭い去って雰囲気を一変させます。選曲のセンスのキレはここでも感じられます。そして最後はシューベルトの有名な楽興の時。どの曲も実にいい演奏で、クァルテット好きな方の厳しい耳も十分楽しませる素晴らしい構成です。

フランチスカス四重奏団の企画ものでしたが、前出のアルバムの演奏とはかなり異なる実にくだけた楽しい演奏で、ハイドンの曲の面白さをきちんと踏まえた演奏。しかも非常に珍しい曲目を見事にこなす秀演。ハイドン以外の曲も全て素晴らしい出来なので、アルバムを通じて楽しめる構成です。これはオススメ。ハイドンの評価は[+++++]とします。

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