作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

タリス・スコラーズ 2017年日本公演(東京オペラシティ)

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このところ、コンサートにはよく出かけています。昨日6月5日(月)は、雷を伴う集中豪雨の中、東京オペラシティに行ってきました。

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アレグロミュージック タリス・スコラーズ 2017年 東京公演

ピーター・フィリップス(Peter Philips)指揮のタリス・スコラーズ(The Tallis Scholars)の2017年の日本公演。プログラムは以下のとおり。

トマス・タリス:ミサ曲「おさな子われらに生まれ」(Missa Pour natus est nobis)
ウィリアム・バード:めでたし、真実なる御体(Ave verum corpus)
ウィリアム・バード:義人らの魂は(Justorum animae)
ウィリアム・バード:聖所にて至高なる主を賛美もて祝え(Laudibus in sanctis)
(休憩)
グレゴリオ・アレグリ:ミゼレーレ(Miserere)
クラウディオ・モンテヴェルディ:無伴奏による4声のミサ曲(Messa a quattro voci da capella)
ジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ:しもべらよ、主をたたえよ(Laudate Pueri)

タリス・スコラーズは古楽ファンならばご存知のことでしょう。ルネサンスの曲を中心に英Gimellレーベルから多くのアルバムがリリースされています。普段ハイドンばかり聴いている私も、タリス・スコラーズのアルバムは7枚ほど手元にあり、昔はよく聴いていました。そもそもの出会いは1988年のレコードアカデミー賞に、タリス・スコラーズのジョスカン・デ・プレのミサ曲集が選ばれたのきっかけに、そのアルバムを手に入れたこと。その澄み切ったコーラスのハーモニーの美しさに惹きつけられ、その後、パレストリーナやタリス、ヴィクトリアなど何枚かのアルバムを手に入れました。その中にアレグリのミゼレーレのアルバムがあり、これもリリース当時非常に話題になりました。そして、そのミゼレーレが再録音されたとの情報をききつけその再録音盤も手に入れました。そうこうしていた時に来日コンサートの情報が目に止まり、一度コンサートにも行っています。調べてみると、ブログを書き始める前の2007年の6月、当時の自宅の近くのパルテノン多摩でのコンサートでした。録音で聴いていた天にも昇るような透明なハーモニーがまさに目の前で歌われる感動に包まれたものでした。あれからもう10年もたったんですね。

今回は最近出かけたコンサートでもらったチラシにタリス・スコラーズのもの見つけ、迷いなくチケットを取った次第。またあの至福の時間を過ごせると思うとチケットを取らざるを得ません。しかもホールは東京オペラシティということで、さらに美しい響きが味わえるに違いありません。

今年一番楽しみにしていたコンサート故、いつも以上に仕事をそそくさと片付け、遅れてはならぬと余裕を持って会社を出ようとすると、外は雷が鳴り、バケツをひっくり返したような豪雨。もちろん、豪雨などにこの楽しみを奪われてはならぬと飛び出し、決死の形相でタクシーを捕まえ、歩けば職場から15分ほどのところにある東京オペラシティへ向かいます。タクシーに乗るまでと、降りてからホールに入るまでの短時間でスーツのズボンの裾はビッショリ(笑) ですが、そんなことより遅れずに到着した喜びが上回ったのは言うまでもありません。いつものように先にホールについていた嫁さんと合流して、ワインとサンドウィッチで体調を整え、演奏を待ちます。

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この日の席は2階席の右側1列目、ステージより少し客席側に入ったところ。先日このホールの3階席で聴いたサロネン/フィルハーモニア管があまり良い音響でなかったので、響きの良い2階を取った次第。ステージを至近距離で見下ろす良い席でした。

定刻前になってもいつものような鐘は鳴らず、自然にお客さんが座るのをゆっくり待ちます。ホール内が落ち着いたところでゆっくりと客席の照明が落ちてきて、衣装を黒で統一したメンバー10人とピーター・フィリップスがステージに登壇。日本の観客の暖かい拍手を楽しむように笑顔で登場。ソプラノが音叉で音程を確認すると、1曲目のタリスのミサ曲が始まります。

もう最初から絶妙なハーモニーにいきなり釘付け。10年前のコンサートの感動が蘇ります。単に精度の高いコーラスというのではなく、10人の声が織りなす純度の高い和音の絶妙なる響きに互いに共鳴するような圧倒的な透明感。声の出し方、響かせ方、音量のコントロールがおそらく相当精緻にコントロールされているのでしょうが、精緻すぎて超自然な領域にまで達している感じ。しかも以前聴いたパルテノン多摩とは異なり、教会堂に近いような木質系の柔らかい残響に包まれ、理想的な響きを作っています。ピーター・フィリップスは前回同様、最小限の小さなアクションでコーラスに指示を与えますが、オーケストラとは異なり、各パートは完全に指揮者からの指示が身についているようで、指示でコントロールされているという感じではなく、自然に指示とシンクロしている感じ。繰り出される目眩くようなポリフォニーに身を委ね、極上の響きに酔いしれます。最初の曲で早くも昇天しそうになります。グロリアに続き、サンクトゥス、ベネディクトゥス、アニュス・デイと続いて、最後のコーラスの余韻が静寂の中に消え、ピーター・フィリップスの手が降ろされると、ゆったりとした暖かい拍手に包まれます。この日のお客さんはこの響きを待っていたのでしょう。

2曲目からはウィリアム・バードの曲が3曲続きます。タリスの重厚なハーモニーから一転、静謐なメロディーを軸にしながらしなやかに展開するバードの恍惚とした音楽にかわります。やはりハーモニーの美しさにとろけっぱなしの至福のひとときでした。いくら録音のいいGimellのアルバムでも、実演のこの美しい響きは再現出来ません。前半の演奏時間は正味40分ぐらいだったでしょうか、それでも純度の高いコーラスの響きに癒され、この日のお客さんは皆笑顔で休憩時間を過ごされていました。

休憩の終わりにも何の合図もなく、お客さんが席に収まったところを見計らって照明がゆっくりと落ち、後半が始まります。我々は以前のコンサートで体験済みだったので、ステージ上に歌手が5人しかいない訳を知っていました。視線を客席の後ろの方に向けると2階席の左後ろ隅に4人、そして私たちの席からは死角でしたが、おそらく1階席の右側のどこかに1人歌手が立ち、後半の最初のアレグリのミゼレーレが始まります。この曲はバチカンのミケランジェロのフレスコ画で有名なシスティーナ礼拝堂でのみ演奏が許された曲とのこと。5声の第一合唱と4声の第二合唱が交互に歌いあい、間にテノールの語りが入るためホールの前と後ろと天から降り注ぐようなテノールによる立体的な響きに初めて聴く観客の方は驚くばかり。聴き進むうちにまるでシスティーナ礼拝堂にいるような錯覚に襲われます。この曲も新旧2枚のアルバムで聴くのとはレベルの異なるリアリティ。休憩前とはまた異なる響きのヴァリエーションに観客もうっとりするばかり。もちろん最後は後方の歌手にも惜しみない拍手が降り注ぎ、ホール全体が素晴らしい音楽に包まれる悦びを共有しました。

歌手がステージに戻ると、続いて今年生誕450年のアニヴァーサリーであるモンテヴェルディのミサ曲にパレストリーナの曲と続きます。あんまり馴染みのある曲ではないのですが、モンテヴェルディの陰りとパレストリーナの多彩な表情の違いを堪能し、まだまだ美しいポリフォニーに包まれていたいと思っているところで、プログラムは終了。暖かい拍手に2度目にステージに呼び戻されてたところでピーター・フィリップスが今年はモンテヴェルディの生誕450年に当たるのでと前置きしてアンコールの曲が始まりました。ほど拍手で

(アンコール)
モンテヴェルディ:主にむかいて新しき歌をうたえ(Cantate Domino)
トレンテス:今こそ主よ、僕を去らさせたまわん(Nunc Domittis)

結局2曲分、幸せな時間が過ごせてこの日のコンサートが幕切れに。いやいや素晴らしい一夜でした。一夜のコンサートがこれほどまでに人を癒すとは。やはり人の声というのはどんな楽器よりも心に響くものなのだと再認識した次第。ちょっと残念だったのはお客さんの入りは5割ほどでしょうか。この日の素晴らしいコンサートを堪能した身からすれば、これはもったいない。札幌でのコンサートを挟んでプログラムを変えて7日水曜にもオペラシティでの公演があります。スケジュールが調整できる方は、是非聴かれることをお勧めします!

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2 Comments

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cherubino

No title

Daisy 様、こんばんは。
タリス・スコラーズのコンサート・レビュー、楽しく読ませていただきました。実は僕もルネサンス時代の合唱曲は、学生時代からの愛聴ジャンルです。
僕の方は、ヒリアード・アンサンブルは、最初期と最終年に2度実演を聴いたのですが、タリス・スコラーズの方は未だ聴く機会に恵まれていません。
以前、地元の図書館で「旅の空のモーツァルト」というCDコンサートを企画した時、アレグリのミゼレーレをタリスのCDでかけたのですが、コンサート後、二人の方が「あの曲はよかった」と行ってこられました。それくらい、タリスのあの曲は決定的な名演だと思います。無論、ジョスカンの「ミサ・パンジェ・リングア」もすばらしい盤ですが、紙一重の差でアレグリの方が優っているように思います。
今週末、僕も久しぶりに彼らの演奏を聴いて眠ることにします。ありがとうございました。

Daisy

Re: No title

cherubinoさんm、コメントありがとうございます。

昔はヒリアード・アンサンブルとタリス・スコラーズがルネサンスのコーラスでは双璧でしたね。私もヒリアード・アンサンブルで当時話題になったECMのタリスのエレミア哀歌も手元にありますが、実演の方は聴いていません。調べてみたところ2014年に活動停止しているのですね。最終年という意味がわかりました、これであの男性合唱特有の美しい響きを耳にできるのはアルバムのみとなってしまいました。タリス・スコラーズの方はかなり頻繁に来日しているようですので、今後も機会があろうかと思います。ホール全体を使ったミゼレーレを是非実演で堪能してください!

  • 2017/06/13 (Tue) 08:18
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