コダーイ四重奏団のOp.9(ハイドン)

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コダーイ四重奏団(Kodály Quartet)による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.9のNo.4、No.1、No.3の3曲を収めたアルバム。収録は1992年12月8日から10日にかけて、ブダペストのユニテリアン派教会でのセッション録音。レーベルはご存知NAXOS。
手元にあるのは上の1枚ものですが、お持ちでなければ今は全集の方が手に入れやすいですね。もちろん私は全集がリリースされる前に1枚もので全巻揃えています。1枚ものの方はシンプルなデザインながら巻ごとにハイドンと同時代の関連する人物の肖像画が配されて、これもコレクション欲を満たすもの。この巻はオーストリア皇帝フランツ1世の妹であるマリーア・クレメンティーナ・ダウストリア(Maria Clementina d'Austria)の肖像。マリーア・クレメンティーナは1777年の生まれで、シチリア王フランチェスコ1世に嫁ぎましたが、フランチェスコ1世が即位する前の1801年に24歳の若さで亡くなってしまったため、王妃とはなりませんでした。

コダーイ四重奏団の弦楽四重奏曲は好きな演奏ですが、今日はとりわけ好きなOp.9のNo.3が聴きたくてこのアルバムを久々に取り出しました。このアルバム、手に入れたのはリリース直後だと思いますので、かれこれ20年以上前になるわけで、聴いたのもそのくらい前が最後だったかもしれません。ちょっとタイムマシン的興味も出てきています。
手に入れり聴いたりしたのがかなり昔だっただけに、記憶も朧げです。コダーイ四重奏団のアルバムは過去に2度ほど取り上げていますがそれからも少し時間が経ってしまっていますね。
2013/02/23 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : コダーイ四重奏団のOp.20のNo.4からNo.6
2011/10/23 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : コダーイ四重奏団のOp.74
コダーイといえばNAXOSの看板アーティストですのでご存知の方も多いでしょうし、このハイドンの弦楽四重奏曲のシリーズは味わい深い名演奏としておすすめできるものです。演奏者の情報は上のOp.74の記事をご参照ください。
Hob.III:22 String Quartet Op.9 No.4 [d] (c.1769-70)
いきなり雫が滴るような味わい深い素晴らしい響きに包まれます。4人の奏者がそれぞれ自在に演奏しているのにアンサンブルがピタリとあってしなやか。しかも全員のボウイングが実に自然でいきなり至高の境地に至ります。1楽章から脱帽の演奏です。作曲されたのはシュトルム・ウント・ドラング期。有名な太陽四重奏曲のわずか2〜3年前ということで、この時期特有の憂いに満ちた素晴らしい音楽が聴かれます。続くメヌエットでは憂いがさっぱりと浄化されるような清らかな響きが印象的。ヴァイオリンのアッティラ・ファルヴェイのしなやかさと艶やかさを合わせもつ響きと、淡々と進むアンサンブルの織りなす美しい綾。自然な描写による風景の美しさが際立ちます。そして3楽章のアダージョになると、さらに透明感が高まります。アッティラ・ファルヴェイの奏でる磨き抜かれた響きの美しさに打ちのめされます。なんという伸びやかさ。まだ初期の曲なのにこの突き抜け方、尋常ではありません。終盤、響きが研ぎ澄まされ天上に吸い込まれるよう。そしてフィナーレは落ち着き払ったアンサンブルの規律で締めくくります。コダーイの演奏、ここまで素晴らしかったかと驚いた次第。
Hob.III:19 String Quartet Op.9 No.1 [C] (c.1769-70)
続く曲も伸びやかなヴァイオリンの音色にのっけから惹きつけられます。ヴァイオリンの音色も深みのある実にいい響き。さぞかしいい楽器を使っているのでしょう。録音も適度な実在感と残響があるバランスの良いもので弦楽四重奏としては理想的。作為が先行するような印象は皆無で、自然なアンサンブルの中から音楽が懇々と湧き出てきます。やはりアッティラ・ファルヴェイの見事なボウイングが大きな魅力でしょう。1楽章の後半、メロディーが多彩に展開して、最後にシンプルな響きに戻るところなど、ハイドンの見事な展開を最高の演奏で堪能できます。続くメヌエットは盤石の安定感、中間部の表情の変化鮮やかさを聴かせたかと思うと、今度は変化を感じさせずにさっと戻るところのさり気なさなど、鳥肌が立つような緊張感。そして、またしても伸びやかなアダージョの美しい響きに身を任せる至福を味わいます。ところどころに仕掛けられた美しい転調の瞬間。詩情が立ち上ります。最後はコミカルなメロディーと戯れるような微笑ましさを感じさせるフィナーレ。完璧に自然なアンサンブルによって音楽は楽しむものだというハイドンのメッセージが鮮明に浮かび上がります。
Hob.III:21 String Quartet Op.9 No.3 [G] (c.1769-70)
不思議にウキウキとさせられる導入が印象的な曲。先日auditeからリリースされたアマデウス四重奏団の放送録音集の冒頭に置かれた曲でもありますが、アマデウスが無骨さを感じさせるような構成感を強調した演奏だったのと好対照の流麗な躍動感が印象的な演奏。前2曲とは全く異なる語法で書かれ、展開する音楽。ハイドンのアイデアの豊富さを思い知らされます。なぜかこの1楽章は記憶に鮮明に残るメロディーですね。そしてメヌエットもこれまでの曲とは全く異なる印象。メロディーの面白さを知り尽くした自在なアクセントがこの曲の魅力を倍増させます。この自然さはクァルテットの音楽性高さの裏付けがあってのものでしょう。そして3楽章のラルゴは緊張感が張り詰めた部分とスッと力が抜ける部分の対比が見事。やはり最後は天上に至る透明感に包まれます。そしてフィナーレはパート間の軽妙な会話が次々に展開していくハイドンならではの機知に富んだもの。ヴァイオリンばかり触れてきましたが、この楽章などヴァイオリン以外のパートのキレの良い演奏があっての面白さ。特にチェロの軽やかさが印象に残りました。
このアルバムは所有盤リストを作り始めた頃に登録したもので、当初の評価は[+++]となっていました。その頃は聴き手である私の器がこのアルバムの素晴らしさを聴き分けるに至っていなかったというのが正直なところ。次々とリリースされるこのシリーズを手に入れる度に登録していましたが、ちょっと作業化していましたね。今回改めて聴き直してみて、この演奏の真価に触れたという気になりました。特にこの3曲は絶品の出来。全集として手に入れた方も今一度この3曲を聴きなおしてみてください。きっと宝物に出会ったような驚きを感じられるものと思います。ということで評価は[+++++]に付け直しました。
このシリーズ、聴き直してみなければなりませんね。
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