カール・ゼーマンのピアノソナタ(ハイドン)
仕事がひと段落したので、LPをじっくり。

カール・ゼーマン(Carl Zeemann)のピアノでハイドンのピアノソナタ2曲(XVI:31、XVI:38)とアンダンテと変奏曲(XVII:6)、ブラームスの16のワルツを収めたLP。収録情報は記載されていませんが、ネットなどを調べてみると1959年制作のよう。手元のアルバムは米DECCAプレスですが元はDeutsche Grammophonのプロダクションとのこと。
アルバムにはSonata No.30、No.35と表記されていますが、調性が合わないのでよく調べてみると、ライナーノーツに正しいソナタ番号が記載されており、上の収録曲目のとおり。

カール・ゼーマンは1910年、ドイツのブレーメンに生まれたピアニスト。ライプツィヒで聖トーマス教会のカントルであったギュンター・ラミン(Günter Ramin)にオルガンを学び、ベルギー国境に近いドイツの街、フレンスブルクとブレーメン近くのフェルデンという街でオルガニストとして働いていました。1935年からピアニストに転向し、独奏のほか、高名なヴァイオリニスト、ウォルフガング・シュナイダーハンの伴奏者としても活躍しました。1960年代からは指導者としての活動が中心となり、1964年から1974年までフライブルク音楽大学の学長を務め、亡くなったのは1983年とのこと。ドイツのピアノの伝統を感じさせる人でしたが、同時代的にはリヒテル、ホロヴィッツ、ギレリスなどロシアのピアニストの存在感の影にかくれて地味な存在でしたが、近年なそのいぶし銀の演奏が再評価されているとのことです。
ゼーマンのハイドン、やはりいぶし銀という言葉がぴったり。揺るぎない安定感とドイツらしい質実剛健さが感じられる演奏でした。
Hob.XVI:31 Piano Sonata No.46 [E] (1776 or before)
ステレオ最初期という録音年代を考えるとピアノの音に芯があってしっかりとしたいい音。軽々と弾いているようですがタッチのキレは良く、特にサラサラと流れの良い演奏。速いパッセージのタッチの鮮やかさは素晴らしいですね。2楽章のアレグレットに入ると徐々に詩情が溢れ出てきます。さりげない演奏ながら、メロディーに孤高の輝きと強さがあり、じわりと沁みてきます。ハイドン特有のハーモニーの変化の面白さもデリケートに表現してきます。3楽章のプレストに入るときの切り替えの鮮やかさもハイドンの面白さをわかってのこと。一瞬にして気配を変え、流れの良い音楽に入ります。ピアノの中低音の力強さが印象的。
Hob.XVII:6 Andante con Variazioni op.83 [f] (1793)
名曲アンダンテと変奏曲。予想通りかなりさらりとした入り。リズムをはやめに打つことでサラサラ感が際立ちます。ここでもタッチの鮮やかさが印象的。大きな起伏をともなう曲想ですが、ゼーマンは逆に起伏を抑え気味にして、フレーズ単位のメロディーのタッチの微妙な弾き分けに集中し、変奏をつぎつぎとこなしていきます。徐々に演奏にも勢いというか力強さが増してきて、大きなクライマックスをつくっていきます。後半に入るとタッチに力が漲り、まさに孤高の境地。一貫して速めの流れの良さを活かした演奏でした。
Hob.XVI:38 Piano Sonata No.51 [E flat] (before 1780)
優しいそよ風のようなしなやかな入り。曲想をふまえてタッチを自在にコントロールしてきます。速いパッセージのタッチのかっちりとした確かさはそのままに、淡々とした演奏から詩情が立ち上ります。アダージョも速めですが、不思議に力が抜けた感じがよく出ています。そしてプレストでは表情の変化を強弱に集中させ、リズムは一貫しているのに実に豊かな表情。ピアノの表現の奥深さを改めて知りました。
カール・ゼーマンの弾くハイドンのソナタですが、速めのテンポでさらりとした演奏ながら、くっきりとメロディーが浮かび、そしてハイドンのソナタらしいハーモニーの変化の面白さもしっかりと味わえる素晴らしい演奏でした。この高潔な表現はドイツのピアノの伝統なんでしょうね。古い演奏ではありますが、今聴いても古さを感じるどころか、新鮮そのもの。現代のピアニストでこれだけの透徹した音色を出せるひとがどれだけいるでしょうか。評価は3曲とも[+++++]とします。

カール・ゼーマン(Carl Zeemann)のピアノでハイドンのピアノソナタ2曲(XVI:31、XVI:38)とアンダンテと変奏曲(XVII:6)、ブラームスの16のワルツを収めたLP。収録情報は記載されていませんが、ネットなどを調べてみると1959年制作のよう。手元のアルバムは米DECCAプレスですが元はDeutsche Grammophonのプロダクションとのこと。
アルバムにはSonata No.30、No.35と表記されていますが、調性が合わないのでよく調べてみると、ライナーノーツに正しいソナタ番号が記載されており、上の収録曲目のとおり。

カール・ゼーマンは1910年、ドイツのブレーメンに生まれたピアニスト。ライプツィヒで聖トーマス教会のカントルであったギュンター・ラミン(Günter Ramin)にオルガンを学び、ベルギー国境に近いドイツの街、フレンスブルクとブレーメン近くのフェルデンという街でオルガニストとして働いていました。1935年からピアニストに転向し、独奏のほか、高名なヴァイオリニスト、ウォルフガング・シュナイダーハンの伴奏者としても活躍しました。1960年代からは指導者としての活動が中心となり、1964年から1974年までフライブルク音楽大学の学長を務め、亡くなったのは1983年とのこと。ドイツのピアノの伝統を感じさせる人でしたが、同時代的にはリヒテル、ホロヴィッツ、ギレリスなどロシアのピアニストの存在感の影にかくれて地味な存在でしたが、近年なそのいぶし銀の演奏が再評価されているとのことです。
ゼーマンのハイドン、やはりいぶし銀という言葉がぴったり。揺るぎない安定感とドイツらしい質実剛健さが感じられる演奏でした。
Hob.XVI:31 Piano Sonata No.46 [E] (1776 or before)
ステレオ最初期という録音年代を考えるとピアノの音に芯があってしっかりとしたいい音。軽々と弾いているようですがタッチのキレは良く、特にサラサラと流れの良い演奏。速いパッセージのタッチの鮮やかさは素晴らしいですね。2楽章のアレグレットに入ると徐々に詩情が溢れ出てきます。さりげない演奏ながら、メロディーに孤高の輝きと強さがあり、じわりと沁みてきます。ハイドン特有のハーモニーの変化の面白さもデリケートに表現してきます。3楽章のプレストに入るときの切り替えの鮮やかさもハイドンの面白さをわかってのこと。一瞬にして気配を変え、流れの良い音楽に入ります。ピアノの中低音の力強さが印象的。
Hob.XVII:6 Andante con Variazioni op.83 [f] (1793)
名曲アンダンテと変奏曲。予想通りかなりさらりとした入り。リズムをはやめに打つことでサラサラ感が際立ちます。ここでもタッチの鮮やかさが印象的。大きな起伏をともなう曲想ですが、ゼーマンは逆に起伏を抑え気味にして、フレーズ単位のメロディーのタッチの微妙な弾き分けに集中し、変奏をつぎつぎとこなしていきます。徐々に演奏にも勢いというか力強さが増してきて、大きなクライマックスをつくっていきます。後半に入るとタッチに力が漲り、まさに孤高の境地。一貫して速めの流れの良さを活かした演奏でした。
Hob.XVI:38 Piano Sonata No.51 [E flat] (before 1780)
優しいそよ風のようなしなやかな入り。曲想をふまえてタッチを自在にコントロールしてきます。速いパッセージのタッチのかっちりとした確かさはそのままに、淡々とした演奏から詩情が立ち上ります。アダージョも速めですが、不思議に力が抜けた感じがよく出ています。そしてプレストでは表情の変化を強弱に集中させ、リズムは一貫しているのに実に豊かな表情。ピアノの表現の奥深さを改めて知りました。
カール・ゼーマンの弾くハイドンのソナタですが、速めのテンポでさらりとした演奏ながら、くっきりとメロディーが浮かび、そしてハイドンのソナタらしいハーモニーの変化の面白さもしっかりと味わえる素晴らしい演奏でした。この高潔な表現はドイツのピアノの伝統なんでしょうね。古い演奏ではありますが、今聴いても古さを感じるどころか、新鮮そのもの。現代のピアニストでこれだけの透徹した音色を出せるひとがどれだけいるでしょうか。評価は3曲とも[+++++]とします。
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