エリザベス・ウォルフィッシュのヴァイオリン協奏曲など(ハイドン)
ようやくCDに戻ります。最近手に入れた協奏曲のアルバム。これもいい。

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(別装丁盤)
エリザベス・ウォルフィッシュ(Elizabeth Wallfisch)の指揮とヴァイオリン、エイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団の演奏による、ハイドンの協奏交響曲、ヴァイオリン協奏曲2曲(Hob.VIIa:4、VIIa:1)の3曲を収めたアルバム。収録は1990年2月、ロンドンのアビーロードスタジオの第1スタジオでのセッション録音。レーベルは英Virgin classics。
このアルバム、リリースされたのはだいぶ前のものですが、コレクションの穴になっていたもの。最近その存在に気づき入手しました。ジャケットのデザインが同じくVirginからリリースされているクイケン指揮のエイジ・オブ・エンライトゥンメント管によるパリセットとテイストが似ていて懐かしい感じ。クイケンのハイドンの交響曲はVirginからいろいろリリースされているのですが、他は手兵のラ・プティット・バンドでパリセットだけがエイジ・オブ・エンライトゥンメント管なんですね。しかもパリセットが抜群にいい出来だった上に録音時期も同じ頃のもということで、エイジ・オブ・エンライトゥンメント管のこの頃の演奏は悪かろうはずもないとの期待で入手です。
指揮とヴァイオリンのエリザベス・ウォルフィッシュについて、簡単にさらっておきましょう。
エリザベス・ウォルフィッシュは1952年オーストラリア生まれの古楽器ヴァイオリン奏者。12歳でABC(オーストラリア放送)のコンクールでデビュー。ロンドンの王立音楽アカデミーで学び、いくつかのコンクールで優勝して頭角を現しました。1974年にはカール・フレッシュコンクールで入賞し、ソリストとしてや、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ、王立リヴァプール・フィルなどのオケのリーダーとして主にイギリスで活躍したとのこと。その後は古楽器奏者として活躍しており、このアルバムのオケであるエイジ・オブ・エンライトゥンメント管やハノーヴァー・バンドなどのリーダーを務めるとともに、祖国オーストラリアでもオーストラリア室内管、オーストラリア・ブランデンブルク管などのリーダーとして活躍。近年は教職にあり、王立ハーグ音楽院やロンドンの王立音楽アカデミーでバロック・ヴァイオリンを教えているとのことです。
さて、肝心の演奏ですが、ソロとオケが一体となって溶け合う素晴らしい演奏でした。
Hob.I:105 Sinfonia Concertante 協奏交響曲 [B] (No.105) (1792)
こちらのヴァイオリン以外のソロは次のとおり。
チェロ:デヴィド・ワトキン(David Watkin)
オーボエ:アンソニー・ロブソン(Anthony Robson)
バスーン:フェリックス・ワーノック(Felix Warnock)
この曲の優雅な入りの雰囲気が実にいい。古楽器オケですが響きが溶け合い、厚みもある聴きやすい録音。自然な定位感が心地よいですね。アビーロードスタジオの録音は何気にいい録音が多いんですね。ヴァイオリンをはじめとするソロ4人はことさら自己主張することもなく自然な演奏で、この曲を聴かせどころを踏まえているよう。特にヴァイオリンとオーボエの音色の美しさが一歩抜けている感じ。オケは非常にリズム感がよく、曲がいきいきと流れ、ソロも演奏しやすそう。ソロの間のメロディーの受け渡しの面白さと、ソロ陣とオケの呼応の双方の面白さに自然に酔える演奏。カデンツァも実に素直な演奏。祝祭感満点の1楽章を存分に楽しめます。
2楽章に入るとオーボエの妙技にヴァイオリンやチェロが寄り添い、メロディーを引き継いでいく手作りの素朴な音楽楽しみに包まれます。そして終楽章はソロとオケのスリリングな掛け合いが聴きどころですが、ソロもオケも実にリズム感がよく、ウォルフィッシュがそろだけでなくオーケストラコントロール能力でも類い稀な力をもっていることがわかります。ヴァイオリンも表現は控えめながらそつなく美音を聴かせます。この曲ではソロのバランスが悪いと流れが悪く聴こえてしまいますが、そうした心配も微塵もなく安定感抜群。オケが軽々と吹き上がる快感。これぞハイドン!
Hob.VIIa:4 Violin Concerto [G] (c.1765/70)
今度はヴァイオリン協奏曲ですが、一聴して以前高評価だったマルク・デストリュベ盤に非常に似たタイプの演奏。デストリュベ盤ではデストリュベのヴァイオリンの妙技も聴きどころだったんですが、いい意味でこちらはソロとオケの一体感が聴きどころ。ウォルフィッシュのヴァイオリンは上手いんですが、オケに溶け込むような上手さ。これはこれで非常にいい感じです。ソロもオケも非常に美しい音色で心地よさ満点。美音に癒されます。ウォルフィッシュはソリストでもありますが、オケのリーダーとしての役割りを踏まえたソリストといった立ち位置でしょう。オケの音色の調和を重視しソロの個性は少し弱める独特のバランス感覚ですね。どう個性を表現しようかというソロが多い中、逆に非常に新鮮に感じます。
その良さが光るのが続く2楽章。この演奏はハイドンのヴァイオリン協奏曲のアダージョ楽章の美しさをもっともいい形で表現した演奏の一つと言っていいでしょう。ソロとオケの素晴らしい一体感からハイドンの曲の美しさが素直に浮かび上がります。純粋無垢なヴァイオリンのメロディーが折り目正しく踊り、華やかさをふりまいていきます。
フィナーレは躍動感とキレが折り目正しく穏やかなテイストにまとまった秀逸なもの。古典期の曲にふさわしい器の中でスリリングさや起伏、変化を聴かせる実に座りのいいもの。ハイドンの協奏曲の理想的な演奏と言っていいでしょう。
Hob.VIIa:1 Violin Concerto [C] (c.1765)
ヴァイオリン協奏曲をもう1曲。普通はこちらを先にまわす曲順が多いんですが、こちらの方がメロディーが明快で明るく聴き映えがするということで最後にもってきたのでしょう。前曲以上にソロもオケもキレていて申し分なし。1楽章の晴朗な展開、2楽章の癒しに満ちた絶妙な美しさ、3楽章のそよ風のようなヴァイオリンのボウイングということなし。こればかりは聴いていただかなくてはわからないでしょう。
エリザベス・ウォルフィッシュの振る、エイジ・オブ・エンライトゥンメント管による協奏曲集ですが、これは名盤です。ソロもオケも隅々までウォルフィッシュのコントロールが行き渡り、リズミカルに音楽が弾みます。ハイドンの曲の楽しさ、美しさ、センスの良さが全てつまった演奏と言っていいでしょう。オケのエイジ・オブ・エンライトゥンメント管は非常に反応がよく、ハイドンの音楽のツボを完全に掌握。やはりハイドンのヴァイオリン協奏曲はモーツァルトの曲以上に魅力がありますね。評価はもちろん全曲[+++++]とします。

エリザベス・ウォルフィッシュ(Elizabeth Wallfisch)の指揮とヴァイオリン、エイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団の演奏による、ハイドンの協奏交響曲、ヴァイオリン協奏曲2曲(Hob.VIIa:4、VIIa:1)の3曲を収めたアルバム。収録は1990年2月、ロンドンのアビーロードスタジオの第1スタジオでのセッション録音。レーベルは英Virgin classics。
このアルバム、リリースされたのはだいぶ前のものですが、コレクションの穴になっていたもの。最近その存在に気づき入手しました。ジャケットのデザインが同じくVirginからリリースされているクイケン指揮のエイジ・オブ・エンライトゥンメント管によるパリセットとテイストが似ていて懐かしい感じ。クイケンのハイドンの交響曲はVirginからいろいろリリースされているのですが、他は手兵のラ・プティット・バンドでパリセットだけがエイジ・オブ・エンライトゥンメント管なんですね。しかもパリセットが抜群にいい出来だった上に録音時期も同じ頃のもということで、エイジ・オブ・エンライトゥンメント管のこの頃の演奏は悪かろうはずもないとの期待で入手です。
指揮とヴァイオリンのエリザベス・ウォルフィッシュについて、簡単にさらっておきましょう。
エリザベス・ウォルフィッシュは1952年オーストラリア生まれの古楽器ヴァイオリン奏者。12歳でABC(オーストラリア放送)のコンクールでデビュー。ロンドンの王立音楽アカデミーで学び、いくつかのコンクールで優勝して頭角を現しました。1974年にはカール・フレッシュコンクールで入賞し、ソリストとしてや、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ、王立リヴァプール・フィルなどのオケのリーダーとして主にイギリスで活躍したとのこと。その後は古楽器奏者として活躍しており、このアルバムのオケであるエイジ・オブ・エンライトゥンメント管やハノーヴァー・バンドなどのリーダーを務めるとともに、祖国オーストラリアでもオーストラリア室内管、オーストラリア・ブランデンブルク管などのリーダーとして活躍。近年は教職にあり、王立ハーグ音楽院やロンドンの王立音楽アカデミーでバロック・ヴァイオリンを教えているとのことです。
さて、肝心の演奏ですが、ソロとオケが一体となって溶け合う素晴らしい演奏でした。
Hob.I:105 Sinfonia Concertante 協奏交響曲 [B] (No.105) (1792)
こちらのヴァイオリン以外のソロは次のとおり。
チェロ:デヴィド・ワトキン(David Watkin)
オーボエ:アンソニー・ロブソン(Anthony Robson)
バスーン:フェリックス・ワーノック(Felix Warnock)
この曲の優雅な入りの雰囲気が実にいい。古楽器オケですが響きが溶け合い、厚みもある聴きやすい録音。自然な定位感が心地よいですね。アビーロードスタジオの録音は何気にいい録音が多いんですね。ヴァイオリンをはじめとするソロ4人はことさら自己主張することもなく自然な演奏で、この曲を聴かせどころを踏まえているよう。特にヴァイオリンとオーボエの音色の美しさが一歩抜けている感じ。オケは非常にリズム感がよく、曲がいきいきと流れ、ソロも演奏しやすそう。ソロの間のメロディーの受け渡しの面白さと、ソロ陣とオケの呼応の双方の面白さに自然に酔える演奏。カデンツァも実に素直な演奏。祝祭感満点の1楽章を存分に楽しめます。
2楽章に入るとオーボエの妙技にヴァイオリンやチェロが寄り添い、メロディーを引き継いでいく手作りの素朴な音楽楽しみに包まれます。そして終楽章はソロとオケのスリリングな掛け合いが聴きどころですが、ソロもオケも実にリズム感がよく、ウォルフィッシュがそろだけでなくオーケストラコントロール能力でも類い稀な力をもっていることがわかります。ヴァイオリンも表現は控えめながらそつなく美音を聴かせます。この曲ではソロのバランスが悪いと流れが悪く聴こえてしまいますが、そうした心配も微塵もなく安定感抜群。オケが軽々と吹き上がる快感。これぞハイドン!
Hob.VIIa:4 Violin Concerto [G] (c.1765/70)
今度はヴァイオリン協奏曲ですが、一聴して以前高評価だったマルク・デストリュベ盤に非常に似たタイプの演奏。デストリュベ盤ではデストリュベのヴァイオリンの妙技も聴きどころだったんですが、いい意味でこちらはソロとオケの一体感が聴きどころ。ウォルフィッシュのヴァイオリンは上手いんですが、オケに溶け込むような上手さ。これはこれで非常にいい感じです。ソロもオケも非常に美しい音色で心地よさ満点。美音に癒されます。ウォルフィッシュはソリストでもありますが、オケのリーダーとしての役割りを踏まえたソリストといった立ち位置でしょう。オケの音色の調和を重視しソロの個性は少し弱める独特のバランス感覚ですね。どう個性を表現しようかというソロが多い中、逆に非常に新鮮に感じます。
その良さが光るのが続く2楽章。この演奏はハイドンのヴァイオリン協奏曲のアダージョ楽章の美しさをもっともいい形で表現した演奏の一つと言っていいでしょう。ソロとオケの素晴らしい一体感からハイドンの曲の美しさが素直に浮かび上がります。純粋無垢なヴァイオリンのメロディーが折り目正しく踊り、華やかさをふりまいていきます。
フィナーレは躍動感とキレが折り目正しく穏やかなテイストにまとまった秀逸なもの。古典期の曲にふさわしい器の中でスリリングさや起伏、変化を聴かせる実に座りのいいもの。ハイドンの協奏曲の理想的な演奏と言っていいでしょう。
Hob.VIIa:1 Violin Concerto [C] (c.1765)
ヴァイオリン協奏曲をもう1曲。普通はこちらを先にまわす曲順が多いんですが、こちらの方がメロディーが明快で明るく聴き映えがするということで最後にもってきたのでしょう。前曲以上にソロもオケもキレていて申し分なし。1楽章の晴朗な展開、2楽章の癒しに満ちた絶妙な美しさ、3楽章のそよ風のようなヴァイオリンのボウイングということなし。こればかりは聴いていただかなくてはわからないでしょう。
エリザベス・ウォルフィッシュの振る、エイジ・オブ・エンライトゥンメント管による協奏曲集ですが、これは名盤です。ソロもオケも隅々までウォルフィッシュのコントロールが行き渡り、リズミカルに音楽が弾みます。ハイドンの曲の楽しさ、美しさ、センスの良さが全てつまった演奏と言っていいでしょう。オケのエイジ・オブ・エンライトゥンメント管は非常に反応がよく、ハイドンの音楽のツボを完全に掌握。やはりハイドンのヴァイオリン協奏曲はモーツァルトの曲以上に魅力がありますね。評価はもちろん全曲[+++++]とします。
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