作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ジョン・ネルソン/オランダ放送室内フィルの「天地創造」(ハイドン)

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久々の映像ものです。しかもこれがなかなか良い。

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TOWER RECORDS / amazon(別装丁盤) / ローチケHMVicon

ジョン・ネルソン(John Nelson)指揮のオランダ放送合唱団(The Netherland Radio Choir)、オランダ放送室内フィルハーモニー管弦楽団(The Netherlands Radio Chamber Ohilharmonic)の演奏で、ハイドンのオラトリオ「天地創造」のライヴ映像を収めたDVD。収録は2010年6月、オランダのアムステルダム近郊の五稜郭のような要塞都市ナールデン(Naarden)のナールデン大聖堂でのコンサートのライヴ。レーベルはEUROARTS。

天地創造をとりあげるのは久しぶりです。しかも今回は映像。前からちょっと気になっていたアルバムですが、入手していないことに気づき手に入れました。指揮者もオケもなじみのないものでしたが、同じ組み合わせでバッハのマタイ受難曲、ロ短調ミサやベートーヴェンのミサ・ソレムニスなどもセットになった宗教音楽集バージョンもリリースされているなどかなり本格的な内容。また天地創造の歌手は一流どころが揃っており、期待できそうな予感がありました。歌手は以下のとおり。

ガブリエル:リサ・ミルン(ソプラノ)
ウリエル:ウェルナー・ギューラ(テノール)
ラファエル:マシュー・ローズ(バリトン)
エヴァ:ルーシー・クロウ(ソプラノ)
アダム:ジョナサン・ベイヤー(バス)

指揮者のジョン・ネルソンは1941年、アメリカ人の両親のもと、コスタリカで生まれ、シカゴ近郊のホィートン・カレッジ(Wheaton College)、ニューヨークのジュリアード音楽院で学び、1976年から87年までインディアナポリス交響楽団の音楽監督、1985年から88年までセントルイス歌劇場の音楽監督、以後91年まで首席指揮者、1983年から90年まではニューヨーク州カトナーのカラマー国際音楽祭の音楽監督などを歴任。欧米の主要オケへの客演履歴も豊富で、欧米では知られた人のようです。1998年はら2008年までパリ室内管弦楽団の音楽監督。現在はパリに住み、古典的な宗教曲の普及や合唱指揮などで活躍しているとのこと。一連のDVDは最近の活動の記録ということでしょう。

このDVDを記事に取り上げたということは、もちろん演奏が良いからに他なりません。

Hob.XXI:2 "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
冒頭のメニュー映像は美しい要塞都市のナールデンの空撮映像から始まり、演奏会場となったナールデン大聖堂が素晴らしいロケーションにあることがわかります。大聖堂といっても十字のプランをもつゴシック様式の聖堂で小規模なオケと合唱で聖堂の半分がうまり、奏者と観客がほぼ同人数という規模。もちろん天井は高く石造りのため残響は豊かですが、鑑賞に問題があるほどではなく、録音は上手く処理しています。映像はカメラに動きがあってかなり凝ったもので、美しい聖堂でのコンサートを十分活かしたもの。
第1部のはじまりから、堅実な手腕でネルソンがオケをコントロールしていきますが、オケはまったく乱れを見せず、かなりの腕前揃いとみました。オケの規模の割に迫力は素晴らしく、タイトに引き締まっていい演奏。そしてコーラスも大聖堂に響きわたる迫力があり、オケとコーラスのコントロールは流石なところ。なにより素晴らしいのが歌手陣。最近では珍しい、5人構成でガブリエルとエヴァ、ラファエルとアダムはそれぞれ2人ずつ設定されますが、ラファエルのマシュー・ローズが図太く鋼のような響きで存在感十分。ラファエルは天地創造の演奏の要だけに、この演奏の大きなポイント。ウリエルは古楽での登場が多いウェルナー・ギューラでしなやかな歌唱。そしてガブリエルのリサ・ミルンは可憐というよりよく響く声で迫力十分。ガブリエルのアリアの表情の豊かさはかなりもの。この3人の素晴らしい安定感がこの演奏の魅力の一つですね。そして聴き進むうちに、ネルソンの棒がオケをグイグイ引っ張り、ライヴらしい素晴らしい高揚感を表出していきます。盛り上げどころを心得た煽りが実に的確。オケも見事にそれに応え、第1部の終盤から小規模オケながら怒涛の高揚感に包まれます。そしてこうしたところでのコーラスの分厚いハーモニーが大聖堂に満ちていく幸福感。オケもコーラスも渾身の演奏でクライマックスを迎えます。

第2部は名曲の宝庫。ガブリエル、ラファエル。ウリエルともに聴かせどころを見事な歌唱でこなし、ネルソンはこんどはじっくりと歌手を支える側にまわって堅実な伴奏に徹します。速めのテンポで曲を進めるので見通しよく進め、第2部が間延びすることなく、美しい曲が代わる代わる響きわたるネルソンの酔眼。

第3部に登場するエヴァとアダムは如何にと思って聴き始めると、最初のウリエルのウェルナー・ギューラのあまりに見事な歌唱といままでで一番艶やかなオケの演奏に耳を奪われます。エヴァのルーシー・クロウは高音の透明感が素晴らしい歌唱。そしてデュエットの相手のアダムのジョナサン・ベイヤーもキリリと引き締まった硬質な声でいいアンサンブル。オケも曲の流れに乗って包み込むように歌手を支えます。ネルソンはかなり丁寧に指示を出して曲をまとめていきます。2つ目のアダムとエヴァのデュエットのなんという癒しに満ちた入り。デュエットも天上の歌声のよう。特にルーシー・クロウの声の抜けるような美しさは素晴らしいですね。そして終盤に差し掛かると大きなうねりの波に乗りながらも細かい指示で全メンバーのまとめて曲の大きな渦に乗せていきます。ハイドンが晩年に全精力を傾けて書いた名曲のすばらしさが圧倒的な高揚感のなかに浮かび上がります。そして終曲の冒頭の力みなぎる響きから、フーガのようにメロディーが繰り返されクライマックスへ。ネルソンは最後まで集中してオケとコーラスに指示を出しながら頂点を目指します。最後は神々しさを交えた響きに至り終了。大聖堂に暖かい拍手が満ちました。全員がスタンディングオベイション。この日の会場にいた観客は幸福感につつまれたでしょう。

ジョン・ネルソンという未知の指揮者による天地創造のライヴ。映像作品としてはコンサートの模様を丁寧に収録し、当日のライヴを見ているような感動を味わうことができる素晴らしいプロダクションです。歌手、コーラス、オケともにレベルが高く、しかも天地創造の演奏としては理想的なロケーションでのコンサートで、映像作品としては非常に楽しめるものに仕上がっています。演奏だけをとればこれより上の演奏もありますが、これはこれで貴重なもの。評価は[+++++]とします。オススメです!
惜しむらくはBlu-rayではないこと。ハイヴィジョン映像に慣れた現代の視聴環境にDVDの品質はちょっと難ありといったところでしょう。

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