ミシェル・コルボのテレジアミサ(ハイドン)
再びLPに戻ります。

ミシェル・コルボ(Michel Corboz)指揮のローザンヌ室内管弦楽団とローザンヌ声楽アンサンブルの演奏で、ハイドンの「テレジアミサ」を収めたLP。収録情報は掲載されていませんが、リリースは1977年の模様。レーベルはERATOの国内盤。
このLP、最近オークションで手に入れたもの。コルボのハイドンは以前に2度ほど取り上げており、そのどちらも絶妙な美しさの超名演だっただけに、このアルバムがオークションに出品されているのを発見した時は息を殺して周囲の動向に最新の注意を払い、厳かに落札した次第。
2010/12/19 : ハイドン–声楽曲 : 【年末企画】ミシェル・コルボのスタバト・マーテル
2010/09/20 : ハイドン–声楽曲 : ミシェル・コルボのチェチーリアミサ
もちろん、コルボと言えばフォーレのレクイエムが有名で、まさに天上の音楽のようなしなやかな音楽が刷り込まれていますが、ハイドンのチェチーリアミサもスタバト・マーテルもどちらも絶品。実演でもラ・フォル・ジュルネでモーツァルトのレクイエムにバッハのロ短調ミサの名演を聴いていますので、実力は折り紙つき。このLPのテレジアミサも悪かろうはずもなく、いつものように到着したLPをクリーニングして針を落とすと、期待通りあまりに素晴らしい音楽が湧き出してくるではありませんか! 幸いLPも素晴らしいコンディションで、スピーカーの奥にオケとコーラスがしなやかに広がります。
歌手は次の通り。
ソプラノ:ユタ・シュプレッケルセン(Uta Spreckelsen)
アルト:ハンナ・シャウアー(Hanna Schaer)
テノール:ジョン・エルウィス(John Elwes)
バス:ミシェル・ブロダール(Michel Brodard)
Hob.XXII:12 Missa "Theresienmesse" 「テレジアミサ」 [B flat] (1799)
期待通り、いきなり透明感溢れるオケの音色に耳を奪われます。国内盤ですが音のキレも十分。導入のキリエから大河の流れの五とき盤石の安定感あるサウンドがスピーカーから吹き出します。なんでしょう、この図太い音色は。歌手陣もコルボの好みでしょうか、ソプラノからバスまで声質が揃って見事なハーモニーを作っていきます。そしてもちろん、コーラスが大波のうねりのごとき広がりでオケを包み込みます。ソプラノのユタ・シュプレッケルセンののびのびとした高音は見事。
スクラッチノイズは皆無で、続くグローリアも大河の如し。すべての音符が自然に鳴らされるコルボの至芸。曲に素直に演奏することが最上の結果をもたらすことを確信するいつものコルボの素晴らしいアプローチ。オケとコーラスの雄大な響きだけでもこの曲の真髄に触れた気分。途中から音量を落としアルト、バス、ソプラノ、テノールの順にソロに入りますが、全員がしっとりと落ち着いた歌唱でまとめてくるあたりの演出の見事さもコルボならでは。もはや自然さに神がかったようなオーラが滲みます。
LPを裏返してクレド。もはや完全にコルボのコントロールに身を任せて、オケとコーラスの大波のうねりを楽しみます。演奏者の煩悩は全く介在せず、ハイドンが書いたままの音楽が完全に再現されているような気になります。それだけ説得力のある演奏ゆえ、この演奏以外の演奏には混ざり物があるように聴こえるほど。宗教曲ゆえ、演奏者自身の心の純粋さが問われるのでしょうね。深く沈む所の闇の深さも見事。テンポもアクセントもハーモニーも全てが曲の定め通りに進んでいるように聴こえる快感。音楽に一本揺るぎない統一感が感じられます。
続いて短いサンクトゥスですが、この幸福感はなんでしょう。あまりの素晴らしさに言葉もありません。
そしてベネディクトスに入ると、一旦冷静さを取り戻しますが、実に味わい深いソプラノのソロが入るとやはり落ち着いていられないほどの見事な歌唱に釘付けになります。知らぬ間に4人のアンサンブルになりますが、バランスが完璧すぎて現実のことと思えないほど。奇跡のアンサンブルとはこのことでしょう。全員が完璧なタイミングで入り。全員が完全にコルボの棒の支配下にあります。これ以上の演奏がありえないほどの凄みを感じます。
そして最後のアニュス・デイ。なぜか終末を感じさせる陰りが、迫力を増して迫ってきます。これほど真剣な響きが心に迫る演奏はかつてあったでしょうか。コルボのコントロールの頂点はここにありました。そして曲は一変して明るい調子に変わり、最後に神への感謝の気持ちに包まれるよう。この表情の描きわけの自然ながらくっきりとした変化は多くの宗教音楽を振ってきたコルボならではのものでしょう。オケの表現力は最後まで見事の一言。最後は華やかに盛り上がって終わります。
コルボのミサ曲が悪かろうはずはないとの、それなりの感触を持って聴き始めましたが、さにあらず。悪かろうはずはないどころか、これ以上の演奏が誰ができるのかわからないほどの素晴らしい説得力に満ちた演奏に打ちのめされました。LPのコンデションも最高ゆえ、スピーカーから分厚いコーラスとオケの響きが溢れ出し、これまでのすべての演奏の記憶を塗り替えるような素晴らしい演奏でした。もしかしたらコルボのベスト盤と言ってもいいかもしれません。このテレジアミサの素晴らしい音楽はこのLPを聴いて初めて真価に触れた気分です。もちろん評価は[+++++]とします。

ミシェル・コルボ(Michel Corboz)指揮のローザンヌ室内管弦楽団とローザンヌ声楽アンサンブルの演奏で、ハイドンの「テレジアミサ」を収めたLP。収録情報は掲載されていませんが、リリースは1977年の模様。レーベルはERATOの国内盤。
このLP、最近オークションで手に入れたもの。コルボのハイドンは以前に2度ほど取り上げており、そのどちらも絶妙な美しさの超名演だっただけに、このアルバムがオークションに出品されているのを発見した時は息を殺して周囲の動向に最新の注意を払い、厳かに落札した次第。
2010/12/19 : ハイドン–声楽曲 : 【年末企画】ミシェル・コルボのスタバト・マーテル
2010/09/20 : ハイドン–声楽曲 : ミシェル・コルボのチェチーリアミサ
もちろん、コルボと言えばフォーレのレクイエムが有名で、まさに天上の音楽のようなしなやかな音楽が刷り込まれていますが、ハイドンのチェチーリアミサもスタバト・マーテルもどちらも絶品。実演でもラ・フォル・ジュルネでモーツァルトのレクイエムにバッハのロ短調ミサの名演を聴いていますので、実力は折り紙つき。このLPのテレジアミサも悪かろうはずもなく、いつものように到着したLPをクリーニングして針を落とすと、期待通りあまりに素晴らしい音楽が湧き出してくるではありませんか! 幸いLPも素晴らしいコンディションで、スピーカーの奥にオケとコーラスがしなやかに広がります。
歌手は次の通り。
ソプラノ:ユタ・シュプレッケルセン(Uta Spreckelsen)
アルト:ハンナ・シャウアー(Hanna Schaer)
テノール:ジョン・エルウィス(John Elwes)
バス:ミシェル・ブロダール(Michel Brodard)
Hob.XXII:12 Missa "Theresienmesse" 「テレジアミサ」 [B flat] (1799)
期待通り、いきなり透明感溢れるオケの音色に耳を奪われます。国内盤ですが音のキレも十分。導入のキリエから大河の流れの五とき盤石の安定感あるサウンドがスピーカーから吹き出します。なんでしょう、この図太い音色は。歌手陣もコルボの好みでしょうか、ソプラノからバスまで声質が揃って見事なハーモニーを作っていきます。そしてもちろん、コーラスが大波のうねりのごとき広がりでオケを包み込みます。ソプラノのユタ・シュプレッケルセンののびのびとした高音は見事。
スクラッチノイズは皆無で、続くグローリアも大河の如し。すべての音符が自然に鳴らされるコルボの至芸。曲に素直に演奏することが最上の結果をもたらすことを確信するいつものコルボの素晴らしいアプローチ。オケとコーラスの雄大な響きだけでもこの曲の真髄に触れた気分。途中から音量を落としアルト、バス、ソプラノ、テノールの順にソロに入りますが、全員がしっとりと落ち着いた歌唱でまとめてくるあたりの演出の見事さもコルボならでは。もはや自然さに神がかったようなオーラが滲みます。
LPを裏返してクレド。もはや完全にコルボのコントロールに身を任せて、オケとコーラスの大波のうねりを楽しみます。演奏者の煩悩は全く介在せず、ハイドンが書いたままの音楽が完全に再現されているような気になります。それだけ説得力のある演奏ゆえ、この演奏以外の演奏には混ざり物があるように聴こえるほど。宗教曲ゆえ、演奏者自身の心の純粋さが問われるのでしょうね。深く沈む所の闇の深さも見事。テンポもアクセントもハーモニーも全てが曲の定め通りに進んでいるように聴こえる快感。音楽に一本揺るぎない統一感が感じられます。
続いて短いサンクトゥスですが、この幸福感はなんでしょう。あまりの素晴らしさに言葉もありません。
そしてベネディクトスに入ると、一旦冷静さを取り戻しますが、実に味わい深いソプラノのソロが入るとやはり落ち着いていられないほどの見事な歌唱に釘付けになります。知らぬ間に4人のアンサンブルになりますが、バランスが完璧すぎて現実のことと思えないほど。奇跡のアンサンブルとはこのことでしょう。全員が完璧なタイミングで入り。全員が完全にコルボの棒の支配下にあります。これ以上の演奏がありえないほどの凄みを感じます。
そして最後のアニュス・デイ。なぜか終末を感じさせる陰りが、迫力を増して迫ってきます。これほど真剣な響きが心に迫る演奏はかつてあったでしょうか。コルボのコントロールの頂点はここにありました。そして曲は一変して明るい調子に変わり、最後に神への感謝の気持ちに包まれるよう。この表情の描きわけの自然ながらくっきりとした変化は多くの宗教音楽を振ってきたコルボならではのものでしょう。オケの表現力は最後まで見事の一言。最後は華やかに盛り上がって終わります。
コルボのミサ曲が悪かろうはずはないとの、それなりの感触を持って聴き始めましたが、さにあらず。悪かろうはずはないどころか、これ以上の演奏が誰ができるのかわからないほどの素晴らしい説得力に満ちた演奏に打ちのめされました。LPのコンデションも最高ゆえ、スピーカーから分厚いコーラスとオケの響きが溢れ出し、これまでのすべての演奏の記憶を塗り替えるような素晴らしい演奏でした。もしかしたらコルボのベスト盤と言ってもいいかもしれません。このテレジアミサの素晴らしい音楽はこのLPを聴いて初めて真価に触れた気分です。もちろん評価は[+++++]とします。
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