フレデリク・マインダースのピアノソナタXVI:49(ハイドン)
最近ディスクユニオンで発掘した名盤。

フレデリク・マインダース(Frédéric Meinders)のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ(Hob.XVI:49)、メンデルスゾーンの6つの子供の小品(Op.72)、7つの性格的小品(Op.7)からアンダンテ、リストのバラード第2番、ローレライ、リスト編曲によるワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」より「イゾルデの愛の死」など6曲を収めたLP。収録情報はPマークが1979年とのみ記されており、レーベルは蘭CBS。
ジャケット写真を見た当ブログのコアな読者の方ならすでにお気づきの通り、何やら怪しい妖気が立ち上っております。ディスクユニオンの店頭でこのアルバムを見かけた時、というか、アルバムに写る奏者と目が合った時、瞬間的に手に入れるべきとのお告げが脳髄に刺さりました(笑) カウンターに持ち込み検盤してみるとほぼミントコンディションで言うことなし。かくして、このアルバムが手元にあるわけです。
一応クリーニングマシンで綺麗に洗浄して針を落とすと、みずみずしいピアノの音色が流れ出すではありませんか。しかも前衛的に攻めてくるかの予想に反して非常に優しいタッチの流麗な演奏。ハイドンのソナタがこれほどまでに柔らかくナチュラルに響く演奏は久しぶりです。これはちゃんと調べて記事にせねばと意気込んで取り上げた次第。
アルバムはオランダCBSのもので解説もオランダ語のみ。という事でオランダ語の解説とネット情報をかき集めて奏者の略歴をさらっておきます。奏者のフレデリク・マインダースは1946年、オランダのハーグ生まれのピアニストで、作曲家でもあるそうです。幼少の頃から両親にピアノを習い、王立ハーグ音楽院に進学後、1968年にはオランダの国内コンクールで1等になります。その後、アルゲリッチの勧めでジュネーブでニキタ・マガロフに師事し、直後にオスロの国際スクリャービンコンクールで優勝。以後世界的に活躍しているそうです。なお、マインダースのウェブサイトはこちら。
Frédéric Meinders
アマゾンなどで検索すると編曲もののアルバムがいくつか引っかかるだけですが、ディスコグラフィーには10枚以上ののアルバムが掲載されている他、作曲家らしく、膨大な数の作品リストも掲載されています。今日取り上げるアルバムの姿は若き日のマインダーズであることもわかります(笑)
Hob.XVI:49 Piano Sonata No.59 [E flat] (1789/90)
ハイドンのソナタのピアノによる演奏はリズムをキリっと引き締めた演奏が多い中、リズムよりもメロディーラインの流れの良さで聴かせる非常に珍しいタイプの演奏。あまりにサラサラとメロディーが流れ、タッチも鮮やかなため、リズムの山感じられないほど。歯応えを期待した蕎麦を口にした瞬間、あまりの喉ごしの良さに驚く感じ。リズムに機知を感じさせるという先入観を全く持たずに演奏するとこうなるのでしょうか。有名なソナタだけにこちらも「この手があったのか」と膝を打つ始末(笑)
この演奏が気まぐれではなく、間違いなく確信犯だと思うに至ったのが続く2楽章。以前、デルジャヴィナ盤を取り上げた時に、「ショパンのようなハイドン」と評した言葉を思い出しました。マインダースのディスコグラフィーを確認すると、過去の録音がショパンに集中しているわけではありませんが、古典派よりもロマン派以降の音楽が中心なのは明らか。そうした視点で聴くと、このハイドンは古典派の音楽として演奏しているという感じがなく、ハイドンの音符を、ロマン派的な視点で解釈しての演奏と捉えるとしっくりきます。要はそれほどロマンティックな完成度が高いという事です。夢を見ているひと時を音楽にしたような甘い音楽。
フィナーレも非常に柔らかな音楽が流れます。タッチはしなやかさを極め、ドビュッシーの組曲の一編を聴いているような錯覚すら覚えます。アクセントは音量ではなく音のキレのみで作り、すべてのメロディーが流麗に流れ、詩的な瞬間のイメージを大事にする演奏。いつもハイドンばかり聴いている耳には、かえって非常に新鮮に響きます。
ハイドンに続いて、メンデルスゾーンの曲になっても、同じ作曲家の音楽が流れていくように思わせる一貫性のある演奏に、ちょっと驚きますが、表現が単調という意味ではなく、表現の説得力の高さに驚くという感じ。B面のリストではもちろん可憐なタッチはそのままに、剛腕なところも見せますが、詩的ですらある表現の濃さはそのままで、品良くまとまっています。
1979年の録音ということで、マインダーズが30代前半の録音。アルバムに収められたメンデルスゾーン以降の作品と同じく、ロマンティックな演奏のハイドンでした。ハイドンのソナタから芳しい香りが立ち上り、しかも非常にセンス良くまとまった名演奏と言っていいでしょう。LPのコンディションが非常によかったので、マインダースの若さと70年代の空気そのものまでも溝に刻まれたような素晴らしい響きが味わえる名盤です。おそらくCD化はされていないと思いますが、このLPは掘り出す価値のあるものですね。評価は[+++++]とします。これだからLP漁りがやめられないわけです。

フレデリク・マインダース(Frédéric Meinders)のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ(Hob.XVI:49)、メンデルスゾーンの6つの子供の小品(Op.72)、7つの性格的小品(Op.7)からアンダンテ、リストのバラード第2番、ローレライ、リスト編曲によるワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」より「イゾルデの愛の死」など6曲を収めたLP。収録情報はPマークが1979年とのみ記されており、レーベルは蘭CBS。
ジャケット写真を見た当ブログのコアな読者の方ならすでにお気づきの通り、何やら怪しい妖気が立ち上っております。ディスクユニオンの店頭でこのアルバムを見かけた時、というか、アルバムに写る奏者と目が合った時、瞬間的に手に入れるべきとのお告げが脳髄に刺さりました(笑) カウンターに持ち込み検盤してみるとほぼミントコンディションで言うことなし。かくして、このアルバムが手元にあるわけです。
一応クリーニングマシンで綺麗に洗浄して針を落とすと、みずみずしいピアノの音色が流れ出すではありませんか。しかも前衛的に攻めてくるかの予想に反して非常に優しいタッチの流麗な演奏。ハイドンのソナタがこれほどまでに柔らかくナチュラルに響く演奏は久しぶりです。これはちゃんと調べて記事にせねばと意気込んで取り上げた次第。
アルバムはオランダCBSのもので解説もオランダ語のみ。という事でオランダ語の解説とネット情報をかき集めて奏者の略歴をさらっておきます。奏者のフレデリク・マインダースは1946年、オランダのハーグ生まれのピアニストで、作曲家でもあるそうです。幼少の頃から両親にピアノを習い、王立ハーグ音楽院に進学後、1968年にはオランダの国内コンクールで1等になります。その後、アルゲリッチの勧めでジュネーブでニキタ・マガロフに師事し、直後にオスロの国際スクリャービンコンクールで優勝。以後世界的に活躍しているそうです。なお、マインダースのウェブサイトはこちら。
Frédéric Meinders
アマゾンなどで検索すると編曲もののアルバムがいくつか引っかかるだけですが、ディスコグラフィーには10枚以上ののアルバムが掲載されている他、作曲家らしく、膨大な数の作品リストも掲載されています。今日取り上げるアルバムの姿は若き日のマインダーズであることもわかります(笑)
Hob.XVI:49 Piano Sonata No.59 [E flat] (1789/90)
ハイドンのソナタのピアノによる演奏はリズムをキリっと引き締めた演奏が多い中、リズムよりもメロディーラインの流れの良さで聴かせる非常に珍しいタイプの演奏。あまりにサラサラとメロディーが流れ、タッチも鮮やかなため、リズムの山感じられないほど。歯応えを期待した蕎麦を口にした瞬間、あまりの喉ごしの良さに驚く感じ。リズムに機知を感じさせるという先入観を全く持たずに演奏するとこうなるのでしょうか。有名なソナタだけにこちらも「この手があったのか」と膝を打つ始末(笑)
この演奏が気まぐれではなく、間違いなく確信犯だと思うに至ったのが続く2楽章。以前、デルジャヴィナ盤を取り上げた時に、「ショパンのようなハイドン」と評した言葉を思い出しました。マインダースのディスコグラフィーを確認すると、過去の録音がショパンに集中しているわけではありませんが、古典派よりもロマン派以降の音楽が中心なのは明らか。そうした視点で聴くと、このハイドンは古典派の音楽として演奏しているという感じがなく、ハイドンの音符を、ロマン派的な視点で解釈しての演奏と捉えるとしっくりきます。要はそれほどロマンティックな完成度が高いという事です。夢を見ているひと時を音楽にしたような甘い音楽。
フィナーレも非常に柔らかな音楽が流れます。タッチはしなやかさを極め、ドビュッシーの組曲の一編を聴いているような錯覚すら覚えます。アクセントは音量ではなく音のキレのみで作り、すべてのメロディーが流麗に流れ、詩的な瞬間のイメージを大事にする演奏。いつもハイドンばかり聴いている耳には、かえって非常に新鮮に響きます。
ハイドンに続いて、メンデルスゾーンの曲になっても、同じ作曲家の音楽が流れていくように思わせる一貫性のある演奏に、ちょっと驚きますが、表現が単調という意味ではなく、表現の説得力の高さに驚くという感じ。B面のリストではもちろん可憐なタッチはそのままに、剛腕なところも見せますが、詩的ですらある表現の濃さはそのままで、品良くまとまっています。
1979年の録音ということで、マインダーズが30代前半の録音。アルバムに収められたメンデルスゾーン以降の作品と同じく、ロマンティックな演奏のハイドンでした。ハイドンのソナタから芳しい香りが立ち上り、しかも非常にセンス良くまとまった名演奏と言っていいでしょう。LPのコンディションが非常によかったので、マインダースの若さと70年代の空気そのものまでも溝に刻まれたような素晴らしい響きが味わえる名盤です。おそらくCD化はされていないと思いますが、このLPは掘り出す価値のあるものですね。評価は[+++++]とします。これだからLP漁りがやめられないわけです。
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