作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ベレヌス四重奏団の「五度」(ハイドン)

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本日は美女揃いのクァルテット。

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TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

ベレヌス四重奏団(Belenus Quartett)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76のNo.2「五度」、バルトークの弦楽四重奏曲4番の2曲を収めたアルバム。収録は2012年7月10日から12日にかけて、スイスのチューリッヒ芸術大学室内楽ホール(Kammermusiksaal der Zürcher Hochschule der Künste)でのセッション録音。レーベルは独ACOUSENCE CLASSICS。

いきなり目を引く4人の女性奏者。皆楽器を手に持ち、暗闇を背景にこちらを凝視する「目力」を感じるジャケット。久々に妖気が漂うジャケットです。そう、かつてこのブログで多くの読者の心を奪った、ヴィヴェンテ三重奏団のアルバムに出会った時と同様の気配を感じます。そしてレーベルのACOUSENCE CLASSICSもはじめて手に入れるレーベルということで、ジャケットをパラパラとめくって見ると中には表紙とは異なり、リラックスして微笑む4人の写真が2枚掲載されており、多少安心させます(笑)。また、ライナーノーツの末尾には、今回の録音にあたってのマイクセッティング図と使用したマイク、マイクアンプ、コンバーター、調整卓がリストアップされ、音質にこだわったアルバムであることがわかります。ACOUSENCEというレーベル名もそれらしいもの。

ベレヌス四重奏団は2004年、スイスのバーゼルで設立され、2010年にチューリッヒ芸術大学の学生により新たな体制になったもの。モザイク四重奏団やアマティ四重奏団について学び、その後カルミナ四重奏団のステファン・ゲルナー、アルバン・ベルク四重奏団のイザベル・カリシウス、ラサール四重奏団のヴァルター・レヴィン、クス四重奏団のオリヴァー・ヴィレら豪華な講師陣に師事しているとのこと。2011年にはスイス・オルフェウス室内楽コンクールで優勝、その後も様々なコンクールに入賞しており、それらの実績によりこのアルバムがデビュー盤として録音されたものと思われます。メンバーは以下のとおり。

第1ヴァイオリン:セライナ・プフェニンガー(Seraina Pfenninger)
第2ヴァイオリン:アンネ・バテガイ(Anne Battegay)
ヴィオラ:エスター・フリッチェ(Esther Fritzche)
チェロ:ゼラフィナ・ルーファー(Seraphina Rufer)

Belenus Quartett

なお、彼らのサイトを見て見ると、現在はチェロが男性に代わっているようですね。

さて、この妖気漂うアルバム、演奏は如何に。

Hob.III:76 String Quartet Op.76 No.2 "Quintenquartetett" 「五度」 [d] (1797)
流石に録音にこだわっているレーベルだけに、いきなりクァルテットの気迫みなぎる響きに圧倒されます。残響は比較的多めで木質系の小ホールで聴いているようなプレゼンス。肝心の演奏は推進力もあり、ダイナミックさとしなやかさを併せ持つナカナカのもの。一音一音のデュナーミクをかなりつけて五度の名旋律が驚くほど豊かに響きます。言われなければ女性だけのクァルテットとはわかりませんが、これが女性ならではのデリカシーかもしれません。第1ヴァイオリンのセライナ・プフェニンガーは少し細身ながらかなり流麗な弓さばきでメロディーをしなやかに歌い上げます。アンサンブルは精緻というよりはいい意味で勢いがあり音楽がよく弾みます。よく聴くとチェロの迫力はかなりのもの。これがこのクァルテットの響きの特徴になっているようですね。1楽章から覇気あふれる演奏に引き込まれます。
2楽章はピチカートの伴奏にヴァイオリンのメロディーでの入りで、静寂の中に弦楽器の音色が響きわたる入り。録音の良さが一層引き立ちます。セライナ・プフェニンガーのボウイングも自在さを増して、ハイドンの名旋律をリラックスしながら楽しげに演奏していきます。デビュー盤とは思えない成熟した音楽に唸ります。
続くメヌエットはこの曲を引き締める鋭いアクセント。それを踏まえて、しなやかにたたみかけ、弦楽器による迫力と響きの美しさの絶妙なバランスを保った演奏。強音の迫力とさざめくような弱音のコントラストも絶品。そして迫力だけでなくどこかに華やかさを感じさせるのが流石なところ。
そしてさらりとフィナーレに入りますが、キレ味の良さを随所に感じさせながら、ハイドンの複雑に絡み合う音楽を織り上げていきます。力みはなく、風通しの良さを保ちながらの演奏。やはり録音が弦楽器の響きの良さを引き立て、聴きごたえ十分。最後はたたみかけるようにエネルギーを集中させて終わります。

いやいや素晴らしい演奏ということでまとめに入ろうとしたところ、続くバルトークの4番の鋭利な響きに、ハイドンを聴き終えた幸福感が木っ端微塵に打ち砕かれます(笑) 聞き手にも極度の緊張を求めるアーティスティックな曲の開始に背筋ピーン(笑) 私が語れる立場ではありませんが、このバルトークも並の演奏ではありません。赤熱した鋼のごときエネルギーの塊のような音楽。このバルトークを聴いた上で、このアルバムのジャケット写真を見返してみると、「女だと思ってなめてかかるんじゃないわよ」とでもいいたげに見えます。やはりジャケットから感じた妖気は本物でした!

さて、女性4人によるベレヌス四重奏団の「五度」ですが、これはかなりのレベルの名演奏とみなして良いでしょう。クァルテットとしての完成度も素晴らしいものがあり、これがデビュー盤という気負いは全くなく、すでに円熟の境地に到達しています。選曲、演奏、録音、ジャケットを含めたプロダクションとも非常に高いレベルで言うことありません。評価は文句なしに[+++++]を進呈いたします。手に入るうちにどうぞ!

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