作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

マリス・ヤンソンス/バイエルン放送響の「軍隊」(ミューザ川崎)

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11月26日土曜は、午前中は歯医者さんの定期健診、午後はチケットをとってあったコンサートに出かけました。

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ミューザ川崎シンフォニーホール:マリス・ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団

マリス・ヤンソンス(Mariss Jansons)指揮のバイエルン放送交響楽団の来日公演で、プログラムはハイドンの交響曲100番「軍隊」とリヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」の2曲。メインディッシュはアルプス交響曲ですが、私のお目当てはもちろん軍隊です(笑)。

マリス・ヤンソンスはウィーンフィルのニューイヤーコンサートを3度も振っている人ですので当ブログの読者の皆さまはよくご存知でしょう。ヤンソンスはこれまでにもコンサートでもハイドンを取り上げていて、ハイドンのアルバムも2枚ほどリリースされていますので、得意としているのでしょう。2枚とも当ブログでもレビューしています。

2013/05/11 : ハイドン–交響曲 : マリス・ヤンソンス/バイエルン放送響のロンドン、軍隊
2011/08/11 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番2】マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団のハルモニーミサライヴ

レビューを読んでいただければわかるとおり、軍隊は素晴らしい演奏だったわけですが、それゆえ今回の来日時に軍隊を振ると知り、ウィーンフィルもベルリンフィルも来日するなか、あえてこのコンサートのチケットをとったわけです。そもそもウィーンフィルはウィーンで聴いてますし、ベルリンフィルもはるか昔ですが、カラヤン時代の来日公演を聴いていますが、バイエルン放送響は一度も生できいたことがないということもこのコンサートのチケットをとった理由の一つ。そして、響きのいいミューザ川崎が会場だったのもありますね。

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ということで期待のコンサート。この日は土曜ゆえ、開演時間に駆けつけるという必要もなく、ゆったり出かけて、開演の1時間前にはホールに到着。

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都心の平日のコンサートは開演30分前に開場が定番ですが、1時間前に開場ということで、ホールに入ってのんびりすることにしました。

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土曜日ということで皆さん早めに到着しているようで、すでにホワイエではコーヒーやビールなどを楽しんで談笑している方多数。こちらはいつものように、ワインとサンドウィッチなどで軽く腹ごしらえ。

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この日の席は指揮者の正面、パイプオルガンの真下の席。オケに近い割には安い席です。日本のオケとはチケット代が違いますので座席も重要です(笑)。 ミューザ川崎はステージのまわりを客席が取り囲むヴィンヤード型ですが、音響効果を狙ってか、左右非対称に渦巻きのように客席が取り囲む構造。ステージ正面の席は席数が少なく、ステージがほぼホールの中央にある感じがよくわかります。これがこのホールの響きが良いことのに繋がっているのでしょう。ステージ上には後半のアルプス交響曲用の大編成のオーケストラ用の打楽器やオルガンなどがところ狭しと並べられていますが、前半のハイドン用に多くがステージ脇に寄せられているのが微笑ましいところ。ホールの入りは9割くらいでしょうか。チケット代が高いせいか1階席の空きが目立ちました。

やがて定刻になり、オケのメンバーが登場。照明がゆっくり落ちて、ヤンソンスが登壇すると期待の大きさからか、盛大な拍手が降り注ぎます。

予想通り、軍隊の序奏はヤンソンスらしくビロードのような響き。フレーズが丁寧に面取りされて実に柔らかに響きます。主題に入るとギアチェンジして抜群の推進力。流石なのは木管陣。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットそれぞれ実にイキイキとした演奏。フレーズの躍動感が違います。皆大きくを体を揺らしながらイキイキとメロディーを奏でていきます。ヤンソンスの指揮はハイドンを得意としているらしく、フレーズごとに巧みに変化をつけ、特にアゴーギグの変化をかなり大きくとりながらもしっとりと音楽が流れるロマンティックなコントロール。しかも、力まず、全体の流れも見通しよく、気品を保っているので古典派のハイドンの演奏としても何ら違和感はありません。1楽章はハイドンの構成感の緊密さと、次々と繰り出される響きの多彩さがバランス良くまとまって流石のまとまり。
続く2楽章のアンダンテは、周到に磨かれた入り。美しいメロディーが一通り奏でられたあと、中盤から、ティパニ、トライアングル、シンバル、グランカッサが加わりますが、グランカッサはただ叩くだけではなく、中華鍋を洗うササラのようなもので、太鼓の胴をパシパシ叩いてリズムをとるんですね。コンサートで軍隊を聴くのは初めてのことなので、このあたりは視覚情報が重要です。クライマックスではやおら打楽器陣が炸裂するかと思いきや、意外に節度ある範囲での演奏。やはりここでもヤンソンス流の上品さが漂います。メヌエットに入る前にグランカッサなどを担当していた打楽器陣が上手のドアから撤収してしまいます。確か終楽章にも登場するはずだったのですが、、、
メヌエットはヤンソンスの緻密なコントロールの真骨頂。柔らかなのに起伏に富んだ表情で軽快に進みます。時折りレガートでアクセントをつけたり、ハイドンが書いたメロディーに仕込まれた機知に鋭敏に反応したコントロールで聴かせます。中間部の木管の色彩感豊かな演奏も絶品。ヤンソンスの棒に機敏に反応するオケの吹き上がりが見事。
そして、このクライマックスのフィナーレではオケの吹き上がりがさらに鮮やかになり、ヤンソンスの細かい指示にしたがってオケが俊敏に反応します。ティンパニのリズムがもう少しキレていればと思わせなくはありませんでしたが、オケのパート間をリレーしながら流れるメロディーの視覚的な面白さはアルバムではわからないもの。びっくりしたのはフィナーレの終盤、先ほど袖に下がってしまった打楽器陣が上手の客席のドアから行進してきて入場。ステージ前の客席最前列を行進しながらグランカッサとトライアングルなどを熱演するという粋な演出。この演出、ヤンソンス独自のものかハイドンの時代からのものかわかりませんが、打楽器陣の活躍に終演後場内は拍手喝采。なんとなくロンドンで初演された時も、ハイドンの粋な音楽に聴衆が沸き返ったとの情景が想像されるようでした。音楽とは楽しむものというハイドンの音楽の真髄を踏まえた見事な演出でした。

オケは精度で言えば日本のオケよりも劣るように感じるところもなくはありませんが、ハーモニーに宿るしなやかさや歌う表現力がやはり違いました。嫁さんも日本のオケの直裁な印象とは全く違うと感じ入っていました。おそらくそれもこれもヤンソンスの棒が豊かな音楽を引き出していたからに他なりません。

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休憩を挟んで後半は、アルプス交響曲。休憩中に先ほどまで脇にあった椅子や打楽器などを並べ直して、ステージが大オーケストラ用に生まれ変わります。開演前は気づかなかったのですが、ほとんどの椅子が、スタッキング用の椅子を2脚重ねていたこと。日本の椅子のシートハイは43〜44cm。海外のものは45〜46cm。おそらく体格の大きなオケの団員は椅子を重ねることでシートハイを上げていたのでしょう。

もちろん、アルプス交響曲は圧巻でした。前半のハイドンが古典の均整の範囲でのダイナミクスを聴かせたのとはことなり、今度は大規模オケがフルスロットルで炸裂します。この曲はベームの手綱を引き締めまくった辛口の演奏が刷り込み。他にもケンぺ、カラヤン、マゼールなどいろいろ聴いていますが、ヤンソンスの演奏は、色彩感豊かでダイナミックなもので、前半のアルプスの威容をスペクタクルに描くところの輝かしさは、ドイツ風の演奏とは異なり、純粋にダイナミック。ハイドンの音楽とは次元の異なる複雑なオーケストレイションを見事にコントロールしていましたし、中盤のメロディーが朗々と歌うところの圧倒的に流麗な感じもヤンソンスならでは。純ドイツ風の演奏ではなく、やはりヤンソンス流のしなやかさに包まれた演奏でした。

今回の席は指揮者の指示がよくわかるところで、またオケを上から俯瞰できたので、登山の場面での舞台裏のホルンの効果、カウベルやウィンドマシーン、サンダーマシーン、パイプオルガン、チェレスタなどの効果が手に取るようにわかりました。雷雨と嵐の場面でのウィンドマシーンはかなりの重労働。かなりの時間自転車のペダルのようなマシンの取手を変化をつけながら回しつづけなくてはなりません。

全22場面も終盤に至ると徐々に喧騒から耽美的な美しい描写に移り、オケが音量を落としながら静寂に吸い込まれるように終わります。ヤンソンスがタクトを下ろす前に拍手がフライングで、静寂が途切れてしまいますが、拍手は一旦途絶えて、ヤンソンスがタクトを下ろすと一斉にブラヴォー。やはり大オーケストラの迫力は生ならでは。そして響きのよいこのホールならではの素晴らしい響きを堪能できました。ヤンソンスも満足そうで、オケの奏者を代わる代わる讃え、何度も拍手に呼び戻されていました。

バイエルン放送響の来日公演で、どちらも独墺物の前半ハイドン、後半リヒャルト・シュトラウス。前半できりりとしたところを聴かせ、後半ではオケをフルに鳴らしきって実力を見せつけるなどなかなかよく考えられたプログラム。印象に残ったのはやはりヤンソンスのしなやかなコントロール力とそこから引き出されたオケの豊かな響き。日本のオケからここまで豊かなハーモニーが聴かれるかといえば、ことハイドンやリヒャルト・シュトラウスについて言えば、まだ少し差があるというのが正直なところでしょう。嫁さんも「やっぱり本場物は違うわね〜と関心しきりでした。



ミューザ川崎でのコンサート後の定番は、ホールの1階の牛タンやさん。

食べログ:杉作

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幸いすぐに入れて、まずはビール(笑) アルプス交響曲でアルプス登山を体験したような気分なので、ビールが沁みます。

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注文した牛タン定食はあっという間に出てきて、非常に回転がいいですね。仙台在住時には喜助の牛タンをよく食べたので、たまに牛タン定食が恋しくなります。このお店もテールスープに漬物、麦飯と本格仙台風で懐かしい味でした。オススメです!

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2 Comments

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tetnkichi995

No title

もともとこの曲は視覚効果の高い曲と自分では思っていました。実際の演奏でのレポートを見て、臨場感があふれています。
 Finaleの追加打楽器の奏者が更新してきてからの登場は、さぞかし、聴衆も満足だったと思います。
 追加の奏者がどこで登場するかは重要なことだと思います。昔、マーラーの第4交響曲を生演奏で聴いたことがあります。このとき、Finaleのソプラノ奏者は、第3楽章の後半のクライマックス(終わり直前でない部分)で、下手から、登場した記憶を思い出しました。

  • 2016/12/04 (Sun) 10:38
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Daisy

Re: No title

tenkich995さん、コメントありがとうございます。

この日のコンサートの演出があまりにハマっていたので、ハイドンの時代からの演出なのかと思ってしまったほどです。あとで色々調べてみると、軍隊での演奏で、このような演出をされた例はあまり見ないので、ヤンソンス独自の演出なんですね。
交響曲では告別の終楽章で奏者が一人一人去っていくのが有名ですね。他に知っているのはバーンスタインが88番の終楽章の繰り返し後、タクトを下ろして顔で指揮をする例や、サイモン・ラトルが90番の終楽章で、一旦終わったと見せかけて、繰り返しを演奏する例くらいですが、今回のヤンソンスの演出は非常に完成度が高く、曲を盛り上げる効果も抜群で非常に楽しめました。
この曲はブログに書いたようにCDもリリースされていますが、是非映像でもリリースしてほしいものです。

  • 2016/12/04 (Sun) 15:52
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