レスリー・ジョーンズ/リトル・オーケストラ・オブ・ロンドンのホルン信号、告別など(ハイドン)

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レスリー・ジョーンズ(Leslie Jones)指揮のリトル・オーケストラ・オブ・ロンドン(The Little Orchestra of London)の演奏で、ハイドンの交響曲31番「ホルン信号」、交響曲19番、交響曲45番「告別」の3曲を収めたLP。収録情報は記載されていませんが、ネットで検索したところ原盤は1964年にリリースされた模様。レーベルは英PYE RECORDSのライセンスによる日本のテイチク。
レスリー・ジョーンズの交響曲集は以前にもnonsuchのLPを取り上げています。
2013/07/17 : ハイドン–交響曲 : レスリー・ジョーンズ/リトル・オーケストラ・オブ・ロンドンのラ・ロクスラーヌ、78番
リンク先の記事にある通り、レスリー・ジョーンズとリトル・オーケストラ・オブ・ロンドンはかなりの数のハイドンの交響曲の録音があり、現在ではアメリカのHAYDN HOUSEからLPをCD-Rに落としたものを手に入れることができます。上の記事にHAYDN HOUSEへのリンクをつけてありますので、興味のある方はご参照ください。
前記事ではレスリー・ジョーンズの情報が少なく、どのような人かあまり判然としませんでしがが、今回の国内盤には村田武雄さんの解説の最後に演奏者の紹介文が付いています。それによると日本でもチャイコフスキー、ドヴォルザークの弦楽セレナード、グリーク、シベリウスなどの録音がリリースされており、着実、素朴な指揮をする人との評がありました。ハイドンについては先のHAYDN HOUSEに40曲弱の交響曲、「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」の管弦楽版、オペラ序曲などの録音があることから格別の愛着を持っていたに違いありません。
今回入手したLPはオークションで手に入れたものですが、針を落としたとたん暖かい素朴な響きにすぐに引き込まれ、これはレビューすべしと即断した次第。テイチク盤ということで音質はあまり期待していなかったんですが、これがいい! 実に味わい深い響きにうっとりです。
Hob.I:31 Symphony No.31 "Hornsignal" 「ホルン信号」 [D] (1765)
たっぷりと響く低音、自然な定位、味わい深い弦楽器の音色。針を落としたとたんに素晴らしい響きに包まれます。ホルン信号はもちろんホルンが大活躍の曲ですが、ことさらホルンを目立たせることをせず、実に自然に、しかもイキイキとした音楽が流れます。仄かな明るさと、翳りが交錯しながら素朴な音楽が展開します。ホルン信号の理想像のような演奏。アーノンクールやファイなどに代表される尖った演奏もいいものですが、このオーソドックスかつ素朴な演奏の魅力には敵わないかもしれません。
2楽章のアダージョも最高。至福とはこのこと。ヴァイオリンを始めとする弦楽器の実に美しいこと。まさに無欲の境地。演奏者の澄み切った心境が見えるほど。ピチカートに乗ったヴァイオリンソロとホルンの溶け合うようなメロディーの交換に感極まります。そしてチェロも落ち着いたいい音を出します。絶品。
続くメヌエットも落ち着きはらって、じっくりとリズムを刻んでいきます。オーケストラの響きが全て癒しエネルギーになって飛んでくるよう。先日取り上げたパノハ四重奏団同様、オケのメンバーの全幅の信頼関係があってこその、この揺るぎないリラックスした演奏でしょう。もちろんリズムはキレてます。
曲を回想して締めくくるようなフィナーレ。オケ全員が完全に自分の役割通りに演奏していく安心感。リズムもテンポもフレージングもどこにも揺らぎはなく、これしかないという説得力に満ちた音楽。変奏の一つ一つを慈しむように各楽器が受け継いでいきます。やはりホルンの溶け合う響きが最高。フルートも最高、ヴァイオリンも最高、木管群も最高、チェロも最高、みんな最高です。おそらく奏者自身が最も楽しんでいるはず。曲想が変わって最後の締めくくりも慌てず、しっかりとまとめます。いや〜、参りました。
Hob.I:19 Symphony No.19 [D] (before 1766)
グッとマイナーな曲ですが、ハイドンの初期の交響曲の快活な推進力と展開の妙を楽しめる曲。レスリー・ジョーンズはホルン信号の演奏でもそうでしたが、実に素朴な手腕でハイドンらしい音楽を作っていきます。これはドラティよりいいかもしれません。短い1楽章から、すぐに短調のアンダンテに入りますが、これがまた美しい。絶品の響きにうっとり。次々と変化していくメロディーに引き込まれ、この短い曲の美しいドラマに打たれます。
フィナーレは再び快活に。ハイドンの初期の交響曲の演奏の見本のようなオーソドックスな演奏ながら、これ以上の演奏はありえないと思わせる完成度に唸ります。完璧。
Hob.I:45 Symphony No.45 "Farewell" 「告別」 [f sharp] (1772)
目玉の告別。これまでの演奏で、レスリー・ジョーンズの素朴ながら見事な手腕にノックアウトされていますので、この告別の最高の演奏を期待しながらB面に針を落とします。もちろん予想通りの素晴らしい入り。適度に速めのテンポで分厚く柔らかな響きに包まれます。音楽の展開と響きの美しさとが音楽の喜びを運んできます。どこにもストレスのない曲の自然な運びによってハイドンの書いた素晴らしい音楽が眼前に広がります。
何度聴いても唸らざるをえない、このアダージョ。弱音器付きの弦楽器によって奏でられる穏やかな音楽。奏者らの絶妙なテクニックがこの自然さを支えていると知りながら、まるで奏者の存在が消えて無くなって音楽自身が流れているような気にさせる見事な演奏。録音も超自然で見事なもの。適度な残響と実に自然な定位感が印象的。これは絶品です。
メヌエットも予想通り適度にキレの良さを聴かせながら落ち着いた演奏。全く野心も邪心もない虚心坦懐な演奏ですが、やはりこれ以上の演奏は難しいでしょう。それほど見事ということです。
この曲1番の聴きどころであるフィナーレ。前半は予想よりも速く、ここでメリハリをつけてくるのかと、聴かせどころを踏まえたコントロールに唸ります。そして一人ずつ奏者が席を立つ有名なアダージョ。もう、癒しに満ちた音楽にとろけそう。なんという優しい音楽。ハイドンという天才がはやくもたどり着いた音楽の頂点。各奏者の素晴らしい演奏に打たれっぱなし。これほど美しいアダージョがあったでしょうか。ノイズレスのLPの細い溝から生まれる音楽のあまりの美しさに息を呑みます。楽器が減るにつれ音楽の純度が高まり、最後は静寂だけが残る感動のフィナーレ。
いやいや、これは参りました。絶品です。流石にハイドンの交響曲の録音を多く残した人だけあって、素朴なのに味わい深く、心にぐさっと刺さるハイドンでした。LPならではの美しい響きも手伝って、まさに理想的な演奏。全曲絶品です。これは他の曲も集めなくてはなりませんね。もちろん録音時期などによるムラなどもあるでしょうが、この素晴らしさを知ってしまった以上、追っかけないわけには参りません。もちろん評価は全曲[+++++]とします。
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