ジュリーニ/フィルハーモニア管1956年の「驚愕」(ハイドン)
最近オークションで手に入れたLPです。

カルロ・マリア・ジュリーニ(Carlo Maria Giulini)指揮のフィルハーモニア管弦楽団(Philharmonia Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」をおさめたLP。LP自体に収録年の表記はありませんが、ジュリーニのディスコグラフィーをネットで調べてみると、この録音は1956年10月4日、5日にされた模様。レーベルはEMIですが、日本のコーキ出版というところがリリースした"Library of Immortal Classics" というシリーズの第5巻。ジュリーニの驚愕はB面で、A面はメニューヒンの振るバース音楽祭室内管弦楽団の演奏による「告別」です。
ジュリーニの振るハイドンは今まで3度ほど取り上げています。
2014/04/13 : ハイドン–協奏曲 : シュタルケル/ジュリーニ/フィルハーモニア管のチェロ協奏曲2番(ハイドン)
2011/07/22 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ジュリーニ/ベルリンフィルの驚愕ライヴ
2010/09/20 : ハイドン–交響曲 : ジュリーニの驚愕
最初に取り上げた驚愕の記事からリンクしているディスコグラフィーによると、ジュリーニのハイドンの録音はこの94番「驚愕」に集中しており、他には99番、104番「ロンドン」、シュタルケルとのチェロ協奏曲が1種ずつあるのみ。「驚愕」はこれまで取り上げている76年のベルリンフィル、79年のバイエルン放送響の他にボストン響が2種あるようです。ボストン響との演奏は1962年と69年のもので、入手は難しいかもしれませんね。
よく見ると今日取り上げるアルバムはジュリーニのすべてのハイドンの録音の中で最も古い1956年のもの。ジュリーニは1914年生まれということで、このアルバムが録音された頃は40歳を超えたところ。調べてみるとローマRAI交響楽団、ミラノRAI交響楽団の首席指揮者を経て、1953年にミラノ・スカラ座の音楽監督に就任するも1956年には辞任してしまいます。こうした激動の年の録音ということでも貴重なもの。有名なフィルハーモニア管とのフィガロの録音が1959年ですので、それよりも前の録音。そして、後年、極端にスローテンポになっていったジュリーニの原点たる若い頃の録音という点でも興味津々というところでしょう。
比較のために76年のベルリンフィル盤をまずは聴いてから、フィルハーモニア盤に針を落とします。
Hob.I:94 Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
序奏の入りはそれほど変わらない印象でしたが、主題に入ってからのテンポが全く違い、このフィルハーモニア管盤はオーソドックスにタイトにインテンポで攻め込む驚愕の1楽章を捉えたもの。20年後のベルリンフィル盤は後年のジュリーニの特徴がよく出ていて、もはや攻め込むというよりは優雅で華麗に輝く響きをバランスよく聴かせようというもの。ダイナミックさよりも美しい旋律の表現に関心が集中している模様。テンポも遅いというか流麗。こうして比較すると、20年の歳月がジュリーニの音楽をどう変えたか非常に興味深いですね。フィルハーモニア盤に戻ると、後年の流麗なジュリーニの響きの芽生えのような瞬間がありながらも、速めのテンポでグイグイオケを引っ張っていくのが新鮮。響きのバランス感覚というか決して濁った音は出さないようにしているところは流石ジュリーニというところ。実は驚愕で最も聴きごたえのある1楽章の面白さが十全に表現され、引き込まれます。
続くびっくりのアンダンテも、遅くもなく速くもないテンポで入りますが、びっくりの一音だけ響きを長くとってハッとさせられます。これはジュリーニらしいアイデア。実はここも聴きどころの中盤以降の展開部でもジュリーニ流のほのかに流麗さを感じさせる見事なオーケストラコントロール。オーソドックスなのに品格を感じさせるジュリーニ・マジック!
そのジュリーニ・マジックの素晴らしさが最も活きているのが続くメヌエット。なぜだかわかりませんが、音楽に品格が漂い、しなやかな躍動感に包まれます。フレーズの一つ一つのつながりが滑らかで、よく磨かれているからでしょうか。音楽に包まれながら大きな波に揺られているような安堵感。
そしてフィナーレに入ると躍動感が上がり、弦楽器のボウイングのキレがさらに冴えてきます。オケは軽やかに吹き上がり、響きも鮮やか。そして後年のジュリーニは見られないダイナミックな煽りを受けてクライマックスに至ります。なんと見事なフィナーレでしょう。
カルロ・マリア・ジュリーニもカルロス・クライバーも偏愛した「驚愕」。クライバーの炎の塊のように燃え上がる「驚愕」とは異なり、若きジュリーニによる力感と流麗さのバランスのとれた名演。後年いささかスタティックな方に偏って行ってしまったジュリーニの原点たる活き活きとしたエネルギーが感じられる演奏でした。私はジュリーニの「驚愕」ではこの演奏を取りますが、入手しやすいものではないため、コレクターズアイテムというところでしょう。もちろん評価は[+++++]とします。

カルロ・マリア・ジュリーニ(Carlo Maria Giulini)指揮のフィルハーモニア管弦楽団(Philharmonia Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」をおさめたLP。LP自体に収録年の表記はありませんが、ジュリーニのディスコグラフィーをネットで調べてみると、この録音は1956年10月4日、5日にされた模様。レーベルはEMIですが、日本のコーキ出版というところがリリースした"Library of Immortal Classics" というシリーズの第5巻。ジュリーニの驚愕はB面で、A面はメニューヒンの振るバース音楽祭室内管弦楽団の演奏による「告別」です。
ジュリーニの振るハイドンは今まで3度ほど取り上げています。
2014/04/13 : ハイドン–協奏曲 : シュタルケル/ジュリーニ/フィルハーモニア管のチェロ協奏曲2番(ハイドン)
2011/07/22 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ジュリーニ/ベルリンフィルの驚愕ライヴ
2010/09/20 : ハイドン–交響曲 : ジュリーニの驚愕
最初に取り上げた驚愕の記事からリンクしているディスコグラフィーによると、ジュリーニのハイドンの録音はこの94番「驚愕」に集中しており、他には99番、104番「ロンドン」、シュタルケルとのチェロ協奏曲が1種ずつあるのみ。「驚愕」はこれまで取り上げている76年のベルリンフィル、79年のバイエルン放送響の他にボストン響が2種あるようです。ボストン響との演奏は1962年と69年のもので、入手は難しいかもしれませんね。
よく見ると今日取り上げるアルバムはジュリーニのすべてのハイドンの録音の中で最も古い1956年のもの。ジュリーニは1914年生まれということで、このアルバムが録音された頃は40歳を超えたところ。調べてみるとローマRAI交響楽団、ミラノRAI交響楽団の首席指揮者を経て、1953年にミラノ・スカラ座の音楽監督に就任するも1956年には辞任してしまいます。こうした激動の年の録音ということでも貴重なもの。有名なフィルハーモニア管とのフィガロの録音が1959年ですので、それよりも前の録音。そして、後年、極端にスローテンポになっていったジュリーニの原点たる若い頃の録音という点でも興味津々というところでしょう。
比較のために76年のベルリンフィル盤をまずは聴いてから、フィルハーモニア盤に針を落とします。
Hob.I:94 Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
序奏の入りはそれほど変わらない印象でしたが、主題に入ってからのテンポが全く違い、このフィルハーモニア管盤はオーソドックスにタイトにインテンポで攻め込む驚愕の1楽章を捉えたもの。20年後のベルリンフィル盤は後年のジュリーニの特徴がよく出ていて、もはや攻め込むというよりは優雅で華麗に輝く響きをバランスよく聴かせようというもの。ダイナミックさよりも美しい旋律の表現に関心が集中している模様。テンポも遅いというか流麗。こうして比較すると、20年の歳月がジュリーニの音楽をどう変えたか非常に興味深いですね。フィルハーモニア盤に戻ると、後年の流麗なジュリーニの響きの芽生えのような瞬間がありながらも、速めのテンポでグイグイオケを引っ張っていくのが新鮮。響きのバランス感覚というか決して濁った音は出さないようにしているところは流石ジュリーニというところ。実は驚愕で最も聴きごたえのある1楽章の面白さが十全に表現され、引き込まれます。
続くびっくりのアンダンテも、遅くもなく速くもないテンポで入りますが、びっくりの一音だけ響きを長くとってハッとさせられます。これはジュリーニらしいアイデア。実はここも聴きどころの中盤以降の展開部でもジュリーニ流のほのかに流麗さを感じさせる見事なオーケストラコントロール。オーソドックスなのに品格を感じさせるジュリーニ・マジック!
そのジュリーニ・マジックの素晴らしさが最も活きているのが続くメヌエット。なぜだかわかりませんが、音楽に品格が漂い、しなやかな躍動感に包まれます。フレーズの一つ一つのつながりが滑らかで、よく磨かれているからでしょうか。音楽に包まれながら大きな波に揺られているような安堵感。
そしてフィナーレに入ると躍動感が上がり、弦楽器のボウイングのキレがさらに冴えてきます。オケは軽やかに吹き上がり、響きも鮮やか。そして後年のジュリーニは見られないダイナミックな煽りを受けてクライマックスに至ります。なんと見事なフィナーレでしょう。
カルロ・マリア・ジュリーニもカルロス・クライバーも偏愛した「驚愕」。クライバーの炎の塊のように燃え上がる「驚愕」とは異なり、若きジュリーニによる力感と流麗さのバランスのとれた名演。後年いささかスタティックな方に偏って行ってしまったジュリーニの原点たる活き活きとしたエネルギーが感じられる演奏でした。私はジュリーニの「驚愕」ではこの演奏を取りますが、入手しやすいものではないため、コレクターズアイテムというところでしょう。もちろん評価は[+++++]とします。
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