作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アンジェラ・ヒューイットのソナタ集(ハイドン)

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いやいや、実に久しぶりのレビュー。レビューの仕方忘れちゃいそうでした(笑) 今日は正統派のアルバムを取り上げます。

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TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

アンジェラ・ヒューイット(Angela Hewitt)のピアノによる、ヘンデルのシャコンヌ(HWV435)、組曲2番(HWV427)、組曲8番(HWV433)、ハイドンのアンダンテと変奏曲(Hob.XVII:6)、ピアノソナタ(Hob.XVI:52)の5曲を収めたアルバム。収録は2008年9月17日から18日、2009年3月17日から18日、ベルリンのイエス・キリスト教会でのセッション録音。レーベルは英hyperion。

このアルバムは最近手に入れたもの。結構知られたアルバムだとは思いますが、巡り合わせか手元になかったもの。

アンジェラ・ヒューイットはご存知の方も多いでしょう。いちおういつもどおり略歴をさらっておきます。1958年、カナダのオタワ生まれ。父はオタワの教会のオルガニストだったことから幼少期から音楽に親しみピアノ、ヴァイオリン、リコーダー、バレエなどを学びました。その後トロント音楽院、オタワ大学などで学び、国際的に活躍するようになります。1994年からhyperionレーベルと契約し、バッハを中心に多数のアルバムをリリースしており、アンジェラ・ヒューイットといえばバッハというイメージが強いのではないかと思います。

ちなみに私はアンジェラ・ヒューイットの録音はこのアルバムがはじめて。虚心坦懐に聴くことにいたしましょう。

前半はヘンデルの曲。ヘンデルのピアノ曲はちゃんと聴くのは久しぶり。バッハのような雰囲気とそれなりに分かりやすいフレーズ展開が心地よいですね。ピアノはFAZIOLIなので特に低音から高音まで艶やかな表情が印象的です。

Hob.XVII:6 Andante con Variazioni op.83 [f] (1793)
ハイドンの傑作変奏曲ですが、冒頭から落ち着きはらったヒーイットのタッチで艶やかなFAZIOLIが鳴り響きます。録音はイエス・キリスト教会らしく残響が非常に美しく、ピアノの響きをより艶やかに聴かせます。特に高音の磨き抜かれた音色は魅力的。独墺系の奏者とははっきりと違う演奏。旋律、特に高音のメロディーはFAZIOLIの音色に加えて女性奏者の感性がにじむところでしょうか。メロディーをクッキリと浮かび上がらせていながらかなり落ち着いた演奏。一つ一つの変奏の表情をゆったりかつしっかりつけていくので、変奏ごとの変化の面白さが強調され、クリアな響きと音楽の深さが両立して、実に味わい深い演奏。徐々に力感を増しながら変奏が進むと、 FAZIOLIの堅固なフレームを響かせるほどの強音の余韻が静寂の中に消え入り、響きのコントロールが絶妙。終盤が力づくにならないようクリアさを保ちながらクライマックスを迎えます。力強い和音が混濁せずにクリアさを保っているのもアンジェラ・ヒューイットならでは演奏でした。

Hob.XVI:52 Piano Sonata No.62 [E flat] (1794)
一転、勢いよく入ったXVI:52。前曲よりも高音が若干おとなしめの録音。空気感というか鮮明さも前曲の方が冴えていました。演奏の基本は変わらないものですが、冴え冴えと落ち着いた感じがちょと劣るように聴こえます。ほんのわずかな違いですが、それだけ前曲が冴えていたということでしょう。特に強音にわずかな力みが感じられます。
続くアダージョは打鍵音の余韻の面白さで聴かせる曲。FAZIOLI独特の艶やかな音色がこの曲の醸し出す雰囲気に華を添えます。女性にしては力強い左手の音階でグイグイと曲を盛り立てますが、1楽章ほどの力みを感じることはありません。この辺が音楽の微妙なところ。間の取り方の上手さのせいでしょうか。最後の消え入るのような静寂感も見事なもの。
そして、フィナーレは鋭利にクマ取られた低音がさらに効果的に響きます。いつもながら想像力豊かなハイドンの展開にわくわくしながら聴き続けますが、クリアなアクセントの連続と、まるでクリスタル細工のような清涼な光を帯びた響きによって、複雑な響きの織りなす綾の魅力が際立ちます。力感を感じさせるのに重厚というよりは華麗に響くヒューイットマジックと言っていいでしょう。聴きなれたハイドンのソナタの華麗な輝かしさにスポットライトを当てた演奏でした。

ちゃんと聴くのは初めてのアンジェラ・ヒューイットのアルバムですが、ヒューイットの演奏はFAZIOLIピアノの音色の美しさを最大限に生かして、しかもその美しさをアーティスティックにまとめてくる、こちらの期待した通りの演奏。手元に彼女のバッハのアルバムは1枚もありませんが、バッハの演奏が評判いいのも想像がつきます。こうした明確な個性は演奏者の人気に大きくつながるものでしょう。ファンがつく演奏家だと思います。ハイドンの曲を演奏という点では響きの美しさに耳が行ってしまいがちな演奏ではありますが、これはこれでありでしょう。私は気に入りました。評価は両曲とも[+++++]とします。

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