作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ヨーゼフ・カイルベルト/バンベルク響の時計、王妃(ハイドン)

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たまには交響曲を。

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ヨーゼフ・カイルベルト(Joseph Keilberth)指揮のバンベルク交響楽団(Bamberger Symphoniker)の演奏で、ハイドンの交響曲101番「時計」、85番「王妃」の2曲を収めたLP。収録はPマークが1958年との表記のみ。レーベルはTELDEC。

こちらも最近オークションで仕入れたミントコンディションのLP。カイルベルトはそれほどなじみのある指揮者ではありませんでしたが、以前取り上げたN響のライブ盤の力演が印象に残っています。

2011/05/30 : ハイドン–交響曲 : ヨーゼフ・カイルベルト/N響の「驚愕」ライヴ

奏者の情報は上記記事をご参照ください。前掲のアルバムより約10年前の録音ということで、よりフレッシュな響きが聴かれるでしょうか?

Hob.I:101 Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
冒頭はちょっとテープの問題か音が微妙に揺らぎ気味ですが、すぐに力強く鮮明な響きに包まれます。特に響きの余韻の自然な美しさは年代を全く感じさせません。1楽章の主題に入るとキレよくグイグイドライブしていきます。この恍惚たるドライブ感は波のものではありません。TELDECの誇るDMMによるプレスだけに1958年制作とは思えない鮮明な録音に驚きます。オケは絶妙に上手く、カイルベルトの棒にピタリと寄り添い、メロディーの表情、呼吸とも完璧に揃っています。曲が進むにつれてオケがタイトに引き締まってきて、時計の白眉である1楽章の見事な構成感が構築されます。録音のバランスか低音が少し薄めですが、迫力は十分。後年のN響のライヴのようなドイツ風の堅固さではなく、スタイリッシュな迫力の表現。
時計のアンダンテは中庸なテンポで落ち着いた入り。オーソドックスなタイプの癒しすら感じるリラックスした表現。弦楽器と木管の響きの美しさが優雅な気分を盛り上げます。展開部からの盛り上がりも、やおらじっくりと盛り上げていこうという変化の面白さを感じさせるもの。一転して静かな部分では、ここでも精緻な録音によって、広い空間にオーケストラの余韻が響きわたるようすが手に取るようにわかり、聴きごたえ十分。LPの表現力に驚きます。
メヌエットも予想どおり、オーソドックスに来ます。安心して身を任せられる演奏。オケの精度は変わらず素晴らしく充実した響きで応じます。つづくフィナーレも落ち着きはらった入りから、徐々にスロットルを開けてオケに力感が満ちてくる快感をあじわえます。特にヴァイオリンパートのキレのいいボウイングが鮮やか。見事に曲をまとめました。カイルベルトのハイドンがこれほどの完成度であるとは知りませんでした。

Hob.I:85 Symphony No.85 "La Reine" 「王妃」 [B flat] (1785?)
こちらはテープは正常。冒頭からピラミッドバランスのオーケストラが姿を現します。前曲よりもくっきりとメロディーが浮かび上がるのはフレーズにキリッとエッジをつけているからでしょう。オケも前曲の落ち着いた体制から少し前のめりで畳み掛けてくるので、冒頭からスリリングな印象。特にヴァイオリンパートは赤熱した鋼のようなホットな鋭さ。明らかに前曲とは演奏スタンスが異なります。
つづいて熱を冷ますように始まるアレグレット。ただそれは最初だけで、徐々にオケに力がみなぎってきます。この巧みなスロットルコントロールがこの演奏の肝でしょうか。ゆったりとした部分がゆったりとしているからこそ、力が入るところが引き立つわけです。メエヌエットも一貫して落ち着いた気配のなか、ヴァイオリンがここぞばかりにキレます。フィナーレはリズミカルな入りからフレーズが徐々に絡まってメロディーが力強く育っていきます。美しいホルンの響きが加わりクライマックスへ。構成は小さいものの、4楽章のまとまりはハイドンらしくきっちりした曲ですので、カイルベルトの演奏によって小気味よくまとまりました。

ヨーゼフ・カイルベルト指揮のバンベルク響によるハイドンの交響曲2曲。録音年代から、もう少し時代がかった演奏を予想したんですが、さにあらず。鮮明な録音によって、よく引き締まった素晴らしいハイドンの交響曲が浮かびあがりました。時計はオーソドックスな範疇の演奏でしたが王妃の方は逆に冴え冴えとするほど力の入った演奏で、曲に潜むエネルギーを見事に描ききった演奏と言っていいでしょう。両曲とも今の時代にあってもその素晴らしさにケチがつくものではありません。両曲とも[+++++]とします。

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2 Comments

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michael

カイルベルトの「時計」

こんばんは
けっこうLP盤が登場しますね^^
カイルベルト、バンベルク響のLPはその昔、私が初めて聴いた「時計」です。
キングレコードの兼価シリーズで出ていました。A面だけで「時計」とモーツァルトの「ハフナー」が入った詰め込み盤で音には不満でしたが、カッティングし直した後発盤を最近見つけました。これもモーツァルトとのカップリングで残念ながら、「王妃」のほうは入っていません;

Daisy

Re: カイルベルトの「時計」

michaelさん、コメントありがとうございます。

今となってはLPは出会いの要素が強いですね。それだけに面白い。宝探し的な面白さがあります。カイルベルトも今はワーグナーが評判ですが、ハイドンも悪くありまん。こうした良質なLPで蘇るリアルな響きには何物にも代え難い魅力があります。
このLPで聴くと時計はオーソドックスな名演ですが、王妃の方が踏み込んだ面白さがあります。再発されるかどうかは曲によるのかもしれませんね。

  • 2016/07/10 (Sun) 10:46
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