オットー・クレンペラーの定番「軍隊」(ハイドン)
たまにはメジャーなアルバムを取り上げないと読者の裾野が広がりませんね。

オットー・クレンペラー(Otto Klemperer)指揮のニュー・フィルハーモニア管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲100番「軍隊」、104番「ロンドン」の2曲を収めたLP。収録は軍隊が1965年10月20日から25日、ロンドンが1964年10月14日から16日、いずれもロンドンのアビーロードスタジオでのセッション録音。レーベルは独EMI Electrola。
この演奏ですが、手元にはCDもあり、ロンドンの方はCDでレビューしています。

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手元にあるこのCDはすでに現役盤ではありません。

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こちらがハイドンの交響曲集ですが、こちらも現役盤ではなく、、、

TOWER RECORDS / amazon
/ ローチケHMV
現在はバッハやヘンデルの曲も含めて8枚組としてパッケージされたこちらが現役盤です。
さて、今日わざわざこれまでリリースされたアルバムを並べたのは、古くから定評あるクレンペラーの軍隊が、ずっと聴いて来てきた手元にあるCDでは、もう一つ吹っ切れない印象を持っていたのが、最近手に入れたLPを聴いて、ようやく吹っ切れたということが言いたかったからです。つまり手元の古いCDのマスタリングが今ひとつだったではないかとの確信に至ったからです。
実は同じような体験を、カルロス・クライバーの振る椿姫でも感じたことがあります。最初に手に入れたのはCDでしたが、安定感はあるものの曇ったようなぼやけた響きからは、さしたる感動はつたわらなかったものの、偶然手に入れたLPを聴いてびっくり。クライバー特有の地の底から天上に湧き上がるような、あのエクスタシーが弾け散るではありませんか!
2013/04/05 : オーディオ : LPを聴く楽しみ
今回のクレンペラーの軍隊も、LPを手に入れて初めてこの演奏の真価に触れた気がします。ついでながらこれまでにレビューしたクレンペラーの演奏もさらっておきましょう。
2014/04/10 : ハイドン–交響曲 : オットー・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管の「オックスフォード」、「ロンドン」(ハイドン)
2010/12/28 : ハイドン–交響曲 : オットー・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団の88番
2010/10/29 : ハイドン–交響曲 : オットー・クレンペラーのトリノの時計
2010/10/26 : ハイドン–交響曲 : オットー・クレンペラーの時計
Hob.I:100 Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
CDで聴くとゆったりとした低音をベースに程よい解像度でオケがゆったりと響きます。クレンペラーらしく一貫したテンポでゆったり大股で風を切って歩くような入りです。LPでは響きの立体感がさらに上がり、クッキリとした表情となにより空気感のようなものが違い、曲が進むにつれ、強音の吹き上がりにゾクゾクします。特にヴァイオリンのボウイングのキレが印象的。CDで感じた雄大な印象よりも精緻さが勝り、カッチリクッキリとした一貫した表情の方の印象が勝ります。1楽章はもはや精緻な迫力による怒涛の演奏。
軍隊の聴きどころの2楽章のアンダンテ。実にオーソドックスな演奏であり、耳を澄ますと演奏に少々ばらつきはありますが、なにか巨大な意思の存在を思わせる一貫性によって不気味な迫力を帯びてきます。小細工なしにグイグイと迫力が増していきます。トライアングルでしょうか、金属の鳴り物が恐ろしくリアルに響くのもLPならでは。アビーロードスタジオに満ちる響き。殺気すら感じるアタックの連続に痺れます。雄大なクレンペラーの魔術が効いてきました。
さらに素晴らしいのが続くメヌエット。LPという媒体の無限の表現力に圧倒されます。非常に状態の良いLPだったのでキレ味も最高。聴き慣れたメロディーが実に新鮮に響きます。50年以上前の録音なのに朝採れ野菜のような水々しさ!ヴァイオリンと木管楽器の響きの美しさに聴き惚れます。
そして曲を結ぶフィナーレ。LPの内周にもかかわらずクォリティは悪くありません。弦楽器が高いテンションで揺るぎ無くたたみかけてくる迫力は別格。流石に定評ある演奏と納得です。鮮明な響きに打たれ続ける快感に酔いしれます。生演奏の迫力とは異なるのですが、これがレコードを聴く楽しみというもの。最後のパーカッション総出演のクライマックスは険しい表情のクレンペラーの真骨頂。クライバーの恍惚とした爆発とは全く異なるものの、睨みを利かせたクレンペラーのオーラが針をつたわってスピーカーから噴出。絶品です。

クレンペラーの軍隊の素晴らしさをリアルタイムに味わった方はもちろんLPを通してのことでしょう。年齢的には私より上の世代の方々はフルトヴェングラー、ワルター、クレンペラー全盛期にLPで音楽に親しんだ世代。今回このLPを聴いて、あらためて時代の空気に触れたような気になりました。LPもCDももちろんソースとなる録音は同一ながら、マスターテープの状態やマスタリング、媒体のコンディションなどさまさまなものの影響を受けて最終的に我々の耳に届きます。そこで残ったもののバランスが音楽の聴かせどころに大きな影響があるような気がします。LPで聴くクレンペラーの軍隊には、CDで聴くものからは感じられなかった時代の空気やクレンペラーのオーラが詰まっていました。
Hob.I:104 Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
裏面のロンドンも同様。ミントコンディションのLPの素晴らしい響きに聴き惚れました。
昨今のLP復興はこうした体験をした多くの方の喜びに支えられているのでしょう。評価は両曲とも[+++++]です。
※現役盤の8枚組のCD、その前の3枚組のCDは手元になく聴いていません。私の手元のCDとは音質が異なる可能性があることをお含みおきください。

オットー・クレンペラー(Otto Klemperer)指揮のニュー・フィルハーモニア管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲100番「軍隊」、104番「ロンドン」の2曲を収めたLP。収録は軍隊が1965年10月20日から25日、ロンドンが1964年10月14日から16日、いずれもロンドンのアビーロードスタジオでのセッション録音。レーベルは独EMI Electrola。
この演奏ですが、手元にはCDもあり、ロンドンの方はCDでレビューしています。

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手元にあるこのCDはすでに現役盤ではありません。

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こちらがハイドンの交響曲集ですが、こちらも現役盤ではなく、、、

現在はバッハやヘンデルの曲も含めて8枚組としてパッケージされたこちらが現役盤です。
さて、今日わざわざこれまでリリースされたアルバムを並べたのは、古くから定評あるクレンペラーの軍隊が、ずっと聴いて来てきた手元にあるCDでは、もう一つ吹っ切れない印象を持っていたのが、最近手に入れたLPを聴いて、ようやく吹っ切れたということが言いたかったからです。つまり手元の古いCDのマスタリングが今ひとつだったではないかとの確信に至ったからです。
実は同じような体験を、カルロス・クライバーの振る椿姫でも感じたことがあります。最初に手に入れたのはCDでしたが、安定感はあるものの曇ったようなぼやけた響きからは、さしたる感動はつたわらなかったものの、偶然手に入れたLPを聴いてびっくり。クライバー特有の地の底から天上に湧き上がるような、あのエクスタシーが弾け散るではありませんか!
2013/04/05 : オーディオ : LPを聴く楽しみ
今回のクレンペラーの軍隊も、LPを手に入れて初めてこの演奏の真価に触れた気がします。ついでながらこれまでにレビューしたクレンペラーの演奏もさらっておきましょう。
2014/04/10 : ハイドン–交響曲 : オットー・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管の「オックスフォード」、「ロンドン」(ハイドン)
2010/12/28 : ハイドン–交響曲 : オットー・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団の88番
2010/10/29 : ハイドン–交響曲 : オットー・クレンペラーのトリノの時計
2010/10/26 : ハイドン–交響曲 : オットー・クレンペラーの時計
Hob.I:100 Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
CDで聴くとゆったりとした低音をベースに程よい解像度でオケがゆったりと響きます。クレンペラーらしく一貫したテンポでゆったり大股で風を切って歩くような入りです。LPでは響きの立体感がさらに上がり、クッキリとした表情となにより空気感のようなものが違い、曲が進むにつれ、強音の吹き上がりにゾクゾクします。特にヴァイオリンのボウイングのキレが印象的。CDで感じた雄大な印象よりも精緻さが勝り、カッチリクッキリとした一貫した表情の方の印象が勝ります。1楽章はもはや精緻な迫力による怒涛の演奏。
軍隊の聴きどころの2楽章のアンダンテ。実にオーソドックスな演奏であり、耳を澄ますと演奏に少々ばらつきはありますが、なにか巨大な意思の存在を思わせる一貫性によって不気味な迫力を帯びてきます。小細工なしにグイグイと迫力が増していきます。トライアングルでしょうか、金属の鳴り物が恐ろしくリアルに響くのもLPならでは。アビーロードスタジオに満ちる響き。殺気すら感じるアタックの連続に痺れます。雄大なクレンペラーの魔術が効いてきました。
さらに素晴らしいのが続くメヌエット。LPという媒体の無限の表現力に圧倒されます。非常に状態の良いLPだったのでキレ味も最高。聴き慣れたメロディーが実に新鮮に響きます。50年以上前の録音なのに朝採れ野菜のような水々しさ!ヴァイオリンと木管楽器の響きの美しさに聴き惚れます。
そして曲を結ぶフィナーレ。LPの内周にもかかわらずクォリティは悪くありません。弦楽器が高いテンションで揺るぎ無くたたみかけてくる迫力は別格。流石に定評ある演奏と納得です。鮮明な響きに打たれ続ける快感に酔いしれます。生演奏の迫力とは異なるのですが、これがレコードを聴く楽しみというもの。最後のパーカッション総出演のクライマックスは険しい表情のクレンペラーの真骨頂。クライバーの恍惚とした爆発とは全く異なるものの、睨みを利かせたクレンペラーのオーラが針をつたわってスピーカーから噴出。絶品です。

クレンペラーの軍隊の素晴らしさをリアルタイムに味わった方はもちろんLPを通してのことでしょう。年齢的には私より上の世代の方々はフルトヴェングラー、ワルター、クレンペラー全盛期にLPで音楽に親しんだ世代。今回このLPを聴いて、あらためて時代の空気に触れたような気になりました。LPもCDももちろんソースとなる録音は同一ながら、マスターテープの状態やマスタリング、媒体のコンディションなどさまさまなものの影響を受けて最終的に我々の耳に届きます。そこで残ったもののバランスが音楽の聴かせどころに大きな影響があるような気がします。LPで聴くクレンペラーの軍隊には、CDで聴くものからは感じられなかった時代の空気やクレンペラーのオーラが詰まっていました。
Hob.I:104 Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
裏面のロンドンも同様。ミントコンディションのLPの素晴らしい響きに聴き惚れました。
昨今のLP復興はこうした体験をした多くの方の喜びに支えられているのでしょう。評価は両曲とも[+++++]です。
※現役盤の8枚組のCD、その前の3枚組のCDは手元になく聴いていません。私の手元のCDとは音質が異なる可能性があることをお含みおきください。
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