作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ディノ・チアーニのピアノソナタXVI:52ライヴ(ハイドン)

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今日もヒストリカルなアルバム。

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TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

ディノ・チアーニ(Dino Ciani)の演奏を6枚のCDにまとめたトリビュートアルバム。この中にハイドンのピアノソナタ(Hob.XVI:52)のライヴが含まれています。ハイドンの収録は1966年2月12日、イタリアのジェノヴァ近郊の港町、ラパッロ(Rapallo)でのライヴ。レーベルは伊DYNAMIC。

ピアノファンの方には怒られそうですが、ディノ・チアーニについては今まで知りませんでした。今回ハイドンの演奏が含まれているということと、ちょっとだだならぬアルバムの雰囲気にピンときて注文した次第ですが、アルバムが到着して色々調べてみると、このディノ・チアーニという人、凄い人でした。

ディノ・チアーニは1941年生まれのイタリアのピアニスト。Wikipediaなどによれば、生まれはアドリア海沿いのイタリアの街、トリエステのすぐ南にある、現クロアチア領のフィウメ(Fiume)。イタリアのジェノヴァでピアノを学び、その後ローマの音楽学校でアルフレッド・コルトーの上級クラスに進み、コルトーから不世出の奇才と称えられたとのこと。1961年にはブダペストのリスト=バルトーク・コンクールで準優勝となり、以後は世界的に活躍しましたが、32歳のとき交通事故で急逝してしまいました。ピアノ愛好家からはチアーニが健在だったらポリーニの現在の地位は危うかったであろうとか、ミケランジェリを脅かす存在とかと言われているとのこと。夭逝の演奏家といえば、リパッティ、デニス・ブレイン、ユーリ・エゴロフなどが知られていると思いますが、彼らと同じオーラを感じますね。

肝心の演奏はどうでしょう。

Hob.XVI:52 Piano Sonata No.62 [E flat] (1794)
音質は年代なりで、響きの良いホールでの演奏を少し遠くから録ったもの。冒頭からテンポよくキレのいい溌剌とした演奏。ライヴなのでちょっとしたタッチの乱れなどありますが、演奏はエネルギーに満ち、オーラのようなものが漂います。高音がクリアにキレてメロディーラインが輝くあたり、只者ではありません。展開部に入るところでスロットルを一気にしぼって極端に力を抜くあたり、はっとさせられる演出に才能を感じます。曲の構造を見切っての見事な構成。ライヴでのこの確かな設計、細かいところではなく大局をみての演奏と納得させられます。1楽章はやはり流石の出来といっていいでしょう。
つづくアダージョは弾き流すようなくだけた表情の演奏。ピアノの強固な響きの美しさで聴かせる演奏が多い中、キレのいい1楽章のほとぼりを冷ますようにサラサラと進め、ところどころにデフォルメ気味のアクセントをあしらってメリハリをつけることで個性を主張します。この独特の演奏から醸し出される表情は他の演奏とは異なる曲の表情に気づかせてくれます。くだけているのに俊敏な不思議な感覚。
フィナーレは速いパッセージが続きますが、クッキリとした表情を保っているのは確かなテクニックを持っている証拠。グールドとは異なりますが、独特の固い響きにはグールドのような人を寄せ付けないオーラのようなものを感じさせます。大胆なテンポの変化、透徹した響きの魅力、冴え渡るタッチなど、そこここに天才の片鱗を感じさせる演奏でした。最後は拍手も録音されています。

このあとにモーツァルトのファンタジア(K.475)、ハ短調ソナタ(K.457)が続きますが、録音がデッドでクリアにガラッとかわり、なかなかいいコンディションの録音でモーツァルトが楽しめます。

ポリーニやミケランジェリと比較される夭逝のピアニスト、ディノ・チアーニによるハイドンのピアノソナタの貴重な録音。くっきりとクリアにキレたタッチ、速いパッセージに宿るエネルギー、鳥肌がたつような弱音への変化、そして全体を見通した見事な構成感、長生きしていれば、おそらく現代を代表するピアニストとして活躍していただろうことは想像に難くありません。この一曲だけからでも、その才能はつたわります。アルバム自体にはハイドン以外の演奏もいろいろ含まれており、いろいろ楽しめるものですので、興味のある方は是非手に入れて才能を直接感じてください。もちろん評価は[+++++]とします。

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