作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ハリー・クリストファーズ/ヘンデル&ハイドン・ソサエティの昼、雌鶏など(ハイドン)

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5月の最初のアルバム。

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TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

ハリー・クリストファーズ(Harry Christophers)指揮のヘンデル&ハイドン・ソサエティ(Handel and Haydn Society)の演奏によるハイドンの交響曲7番「昼」、ヴァイオリン協奏曲(Hob.VIIa:1)、交響曲83番「雌鶏」の3曲を収めたアルバム。収録は2015年1月23日、25日、ボストンのシンフォニー・ホールでのライヴ。レーベルはCORO。

ちょっと前にリリースされたアルバムですが、最近になって他のアルバムと一緒に手に入れたもの。3年前にリリースされた同じ奏者による交響曲集を取り上げていますが、そのアルバムの延長の企画。

2013/09/26 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ハリー・クリストファーズ/ヘンデル&ハイドン・ソサエティの朝、熊など

どちらのアルバムも配曲は一夜のコンサートのように構成されていて、1曲目が「朝」と「昼」、2曲目がヴァイオリン協奏曲のHob.VIIa:4とVIIa:1、3曲目が「熊」と「雌鶏」とまったく相似形のプログラム。これでまとめてリリースされているならいざ知らず、2枚のアルバムの間に3年を置いてるところが、雄大というかおおらかな企画。察しのいい読者の方なら、次はまた3年後に「晩」、ヴァイオリン協奏曲VIIa:1、「王妃」が来ると想像していることでしょう。パリセットは6曲構成なので名前付きの3曲を組み合わせると読みました(笑)

このアルバムを取り上げたのは、このアルバムのリリースによってシリーズものとしての企画の面白さに気づいたことと、3年前のアルバムがほどよくいい演奏ながら、少々の硬さと力みを感じるもので、3年の歳月が音楽をほぐしてくれるかどうかを知りたかったから。奏者の情報などは前記事をご覧ください。

Hob.I:7 Symphony No.7 "Le midi" 「昼」 [C] (1761?)
最新の録音だけあって、ボストン・シンフォニー・ホールに響き渡る古楽器オケの鮮烈なサウンドが鮮明に録られています。ハリー・クリストファーズのコントロールは予想通り、迫力十分の力感みなぎるもの。アメリカのオケらしくしっかりと機能美を誇る精緻な演奏。そして前録音よりもしなやかさを増して、音楽の硬さは少し和らいでいます。
快活な1楽章から、短調による劇的な展開のレチタティーヴォを経てアダージョに入ります。このレチタティーヴォの迫力ある描写がこのオケの力量を示しています。そしてアダージョも大きな起伏をうまく表現して、緊張感を保った安らぎを伝えます。古楽器から雅さではなく機能美を引き出してくるあたりがアメリカのオケ。演奏はテンポを落とし気味にしてじっくり精緻な響きを作っていきます。終盤のヴァイオリンとチェロのじっくりと進む掛け合いのクッキリとした表情は聴きどころの一つ。
つづくメヌエットは覇気に満ちた充実の響き。精緻でダイナミックですが、ほどよく力も抜けていていい感じ。そしてフィナーレですが、ここは力が入ってリズムが少々重いのが惜しいところ。クリストファーズはこの小交響曲のフィナーレに迫力を求めているようです。

Hob.VIIa:1 Violin Concerto [C] (c.1765)
続いてヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は前アルバムと同じくアイスリン・ノスキー(Aisslinn Nosky)。ハリー・クリストファーズ率いるヘンデル&ハイドン・ソサエティのちょっと重めリズムによる精緻な演奏という傾向がわかってきました。もう少しリズムに軽さがあればスリリングな印象なんでしょうが、ちょっとリズムの重さが気になってしまいます。アイスリン・ノスキーのヴァイオリンは特に高音部が張りのあるいい音を鳴らしていますが、演奏自体はオケの重さにひきづられて少々平板な印象。ヴァイオリンの美音とオケの迫力はかなりのものですが、掛け合いの妙というかスリリングさが感じられず曲が単調に響いてしまいます。
つづく2楽章に入るとノスキーのヴァイオリンがさらさらと奏でるヴァイオリンの美音が心地よく響きます。これまでの楽章とは逆に、このアダージョ、速めであっけないほどサラサラと進めるので逆にびっくり。カデンツァではノスキーのヴァイオリンの高音の抜けるような美音を堪能できます。
そしてフィナーレは再び力感みなぎる精緻な響きに満たされます。1楽章ほど重みは感じず、ヴァイオリンとオケの適度な掛け合いを楽しませてくれます。

Hob.I:83 Symphony No.83 "La Poule" 「雌鶏」 [C] (1785)
やはりかなり力の入った入り。独特の曲想の入りを速めのテンポで畳み掛けるようにきました。音量を上げるとちょっとキンキンするほどの迫力。ただ、これまでの2曲がちょっとスタティックな印象だったのに対し、この曲では流麗でダイナミック。アクセントもしなやかさが加わり、曲の流れがよくなりました。
そしてアンダンテに入るとさらに表情がしなやかさを増し、曲自体の良さに近づいてきた感じ。自然な陰影と力感はやはり大事ですね。このアンダンテがこのアルバム一の聴きどころでしょう。
メヌエットでも爽やかさが保たれ、そしてフィナーレは1曲目でのちょっとくどい感じとは異なり、流れの良さを保ちます。最後の曲が一番しなやかな演奏でした。

アメリカ最古の古楽器オーケストラであるヘンデル&ハイドン・ソサエティによるハイドンの交響曲などを収めた好企画のアルバム。ヨーロッパのオケとは全く異なる文化をもったオケという印象で、精緻でクリアな響きで緻密に演奏することを狙っているようですが、ハイドンの交響曲の真髄にはちょっと届かないのかもしれません。前アルバムよりは力が抜けてきたものの、音楽の流れの面白さはもう一超えほしいところ。オケのテクニックは確かなものがあるだけに、これは指揮者の器の問題なのかもしれませんね。企画自体は興味をそそられるものゆえ、次のリリースを待ちたいと思います。評価は交響曲2曲が[++++]、ヴァイオリン協奏曲は[+++]とします。

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