クイケン/グダニスク音楽アカデミー室内管の39番(ハイドン)
たまにはリリースされたばかりのアルバムを取り上げましょう。

TOWER RECORDS / ローチケHMV

シギスヴァルト・クイケン(Sigiswald Kuijken)指揮のグダニスク音楽アカデミー室内管弦楽団(The Chamber Orchestra of the Academy of Music in Gdańsk)の演奏で、C. P. E. バッハの交響曲(Wq.183/3)、ハイドンの交響曲39番、ベートーヴェンの交響曲1番の3曲を収めたSACD。収録は2015年4月13日から15日にかけて、ポーランドのグダニスクにあるスタニスワフ・モニューシュコ音楽アカデミーのコンサートホールでのセッション録音。レーベルはポーランドのDUX Recording Products。
クイケンは私のお気に入りの音楽家であることは、当ブログの読者の皆さんはご存知のことでしょう。そのクイケンが聞き慣れぬオケを振ったアルバムがリリースされると知り、注文を入れていたもの。
いつものように過去に取り上げたクイケンが振ったアルバムの記事へのリンクをつけておきましょう。
2016/03/03: ハイドン–交響曲 : クイケン/ラ・プティット・バンドのラメンタチオーネ、52番、帝国(ハイドン)
2016/01/05 : ハイドン–協奏曲 : エヴァルト・デマイヤー/ラ・プティット・バンドのハープシコード協奏曲集(ハイドン)
2012/11/18 : ハイドン–交響曲 : 【新着】クイケン/ラ・プティット・バンドの「朝」、「昼」、「晩」
2011/09/14 : ハイドン–声楽曲 : シギスヴァルト・クイケン/ラ・プティット・バンドのテ・デウム
2011/07/04 : ハイドン–オラトリオ : クイケン/ラ・プティット・バンド1982年の天地創造ライヴ
2010/03/22 : ハイドン–交響曲 : クイケンのザロモンセット
2010/03/21 : ハイドン–交響曲 : クイケンのパリ交響曲集
このアルバムのオケはグダニスクのスタニスワフ・モニューシュコ音楽アカデミーで1999年に設立され、弦楽器専攻者を中心にアカデミーの選りすぐりのメンバーで構成されているとのこと。これまで多くのポーランドや国外の指揮者を招いて演奏活動をしてきましたが、その中でも別格の実績をもつシギスヴァルト・クイケンを招いて録音されたのがこのアルバムということです。選曲も古典派の交響曲の発展の歴史を俯瞰するような意欲的な構成ということで、なかなかの好企画と言っていいでしょう。
1曲目のC. P. E. バッハの交響曲は、ハイドンに比べると構成の緊密さではかなり劣るものの奇想天外なメロディーと野性味あふれる低音弦の迫力が特徴。この曲を聴く限りオケは優秀。特に弦楽セクションの鋼のようなキレ味はなかなかのもの。ハイドンで聴かせる冷静ななかから音楽の悦びがにじみ出るクイケンのコントロールとは一味ちがって、ちょっと踏み込んだ表現が新鮮。SACDらしく録音は鮮度の高いものですが、オケがちょっと平板に聴こえるのは会場もしくはマイクセッティングの問題でしょうか。
Hob.I:39 Symphony No.39 [g] (before 1770)
2曲目が肝心のハイドン。ハイドンではいつものクイケンの素晴らしいコントロールが聴かれました。やはりC. P. E. バッハとは異なり、疾走しながら流れる短調のメロディーの美しさは文句無し。耳を澄ますと、やはり弦楽器がキリリとキレていて、実に端正な趣。しかもフレーズのコントロールの緻密さ、響きの多彩さは期待どおり。1楽章からグイグイ引き込まれていきます。全般にテンポ設定が自然なのに劇的に聴こえるいつものクイケンの素晴らしさ。
つづくアンダンテでは弦楽セクションの優秀さがさらに際立ちます。フレーズごとにくっきり鮮やかにコントラストをつけ、ハイドンの機知に富んだメロディーをアーティスティックなレベルに昇華させた完璧な演奏。
メヌエットでも弦楽器が主体。ホルンや木管はレベルを落として控え目な存在になっています。クイケンの意図か、オケの意図かはわかりませんが、弦楽器の表現力がこの演奏のポイントになっています。そしてフィナーレも弦にみなぎる覇気は素晴らしいものがあります。若手中心のオケが発散する素晴らしいエネルギー。クイケンもそれを素直に活かそうということで、あえて抑えにいきませんので、最後は少々力任せな印象が残ります。手兵のラ・プティット・バンドとの演奏のようにクイケンの意図が隅々までいきわたった洗練の極みのような演奏とは少々差がつくところですね。
このあとに間をあまりおかずにベートーヴェンの1番が始まります。ハイドンの余韻を鎮める間をとった方がいいですね。ベートーヴェンの演奏は均整のとれた中にも弦の迫力を生かした、ハイドンと同じ路線のものですが、ハイドンがいい線いっているのに対し、ベートーヴェンでは、ベートーヴェンの音楽に込められたエネルギーや多彩な変化をより豊かに表現する演奏が多いなか、個性を発揮しきれていない感も残してしまいます。
ハイドン自体はなかなかいい演奏ですが、クイケンのこれまでリリースした演奏とは少々路線が異なり、あのクイケンのハイドンの素晴らしさとは少々レベル差があるのが正直なところ。学生中心の若手オケの演奏としてみればテクニックも精度も確かであり、それなりに評価できますが、プロダクションとしての完成度など若干難があるところです。これはプロデューサー、プロダクションの差なのかもしれませんね。ハイドンの評価は[++++]としておきます。
クイケンはベルギーのACCENTからいまも少しずつハイドンのアルバムをリリースしています。直近では朝、昼、晩がありますが、これらの続きのアルバムのリリースを期待しましょう。

シギスヴァルト・クイケン(Sigiswald Kuijken)指揮のグダニスク音楽アカデミー室内管弦楽団(The Chamber Orchestra of the Academy of Music in Gdańsk)の演奏で、C. P. E. バッハの交響曲(Wq.183/3)、ハイドンの交響曲39番、ベートーヴェンの交響曲1番の3曲を収めたSACD。収録は2015年4月13日から15日にかけて、ポーランドのグダニスクにあるスタニスワフ・モニューシュコ音楽アカデミーのコンサートホールでのセッション録音。レーベルはポーランドのDUX Recording Products。
クイケンは私のお気に入りの音楽家であることは、当ブログの読者の皆さんはご存知のことでしょう。そのクイケンが聞き慣れぬオケを振ったアルバムがリリースされると知り、注文を入れていたもの。
いつものように過去に取り上げたクイケンが振ったアルバムの記事へのリンクをつけておきましょう。
2016/03/03: ハイドン–交響曲 : クイケン/ラ・プティット・バンドのラメンタチオーネ、52番、帝国(ハイドン)
2016/01/05 : ハイドン–協奏曲 : エヴァルト・デマイヤー/ラ・プティット・バンドのハープシコード協奏曲集(ハイドン)
2012/11/18 : ハイドン–交響曲 : 【新着】クイケン/ラ・プティット・バンドの「朝」、「昼」、「晩」
2011/09/14 : ハイドン–声楽曲 : シギスヴァルト・クイケン/ラ・プティット・バンドのテ・デウム
2011/07/04 : ハイドン–オラトリオ : クイケン/ラ・プティット・バンド1982年の天地創造ライヴ
2010/03/22 : ハイドン–交響曲 : クイケンのザロモンセット
2010/03/21 : ハイドン–交響曲 : クイケンのパリ交響曲集
このアルバムのオケはグダニスクのスタニスワフ・モニューシュコ音楽アカデミーで1999年に設立され、弦楽器専攻者を中心にアカデミーの選りすぐりのメンバーで構成されているとのこと。これまで多くのポーランドや国外の指揮者を招いて演奏活動をしてきましたが、その中でも別格の実績をもつシギスヴァルト・クイケンを招いて録音されたのがこのアルバムということです。選曲も古典派の交響曲の発展の歴史を俯瞰するような意欲的な構成ということで、なかなかの好企画と言っていいでしょう。
1曲目のC. P. E. バッハの交響曲は、ハイドンに比べると構成の緊密さではかなり劣るものの奇想天外なメロディーと野性味あふれる低音弦の迫力が特徴。この曲を聴く限りオケは優秀。特に弦楽セクションの鋼のようなキレ味はなかなかのもの。ハイドンで聴かせる冷静ななかから音楽の悦びがにじみ出るクイケンのコントロールとは一味ちがって、ちょっと踏み込んだ表現が新鮮。SACDらしく録音は鮮度の高いものですが、オケがちょっと平板に聴こえるのは会場もしくはマイクセッティングの問題でしょうか。
Hob.I:39 Symphony No.39 [g] (before 1770)
2曲目が肝心のハイドン。ハイドンではいつものクイケンの素晴らしいコントロールが聴かれました。やはりC. P. E. バッハとは異なり、疾走しながら流れる短調のメロディーの美しさは文句無し。耳を澄ますと、やはり弦楽器がキリリとキレていて、実に端正な趣。しかもフレーズのコントロールの緻密さ、響きの多彩さは期待どおり。1楽章からグイグイ引き込まれていきます。全般にテンポ設定が自然なのに劇的に聴こえるいつものクイケンの素晴らしさ。
つづくアンダンテでは弦楽セクションの優秀さがさらに際立ちます。フレーズごとにくっきり鮮やかにコントラストをつけ、ハイドンの機知に富んだメロディーをアーティスティックなレベルに昇華させた完璧な演奏。
メヌエットでも弦楽器が主体。ホルンや木管はレベルを落として控え目な存在になっています。クイケンの意図か、オケの意図かはわかりませんが、弦楽器の表現力がこの演奏のポイントになっています。そしてフィナーレも弦にみなぎる覇気は素晴らしいものがあります。若手中心のオケが発散する素晴らしいエネルギー。クイケンもそれを素直に活かそうということで、あえて抑えにいきませんので、最後は少々力任せな印象が残ります。手兵のラ・プティット・バンドとの演奏のようにクイケンの意図が隅々までいきわたった洗練の極みのような演奏とは少々差がつくところですね。
このあとに間をあまりおかずにベートーヴェンの1番が始まります。ハイドンの余韻を鎮める間をとった方がいいですね。ベートーヴェンの演奏は均整のとれた中にも弦の迫力を生かした、ハイドンと同じ路線のものですが、ハイドンがいい線いっているのに対し、ベートーヴェンでは、ベートーヴェンの音楽に込められたエネルギーや多彩な変化をより豊かに表現する演奏が多いなか、個性を発揮しきれていない感も残してしまいます。
ハイドン自体はなかなかいい演奏ですが、クイケンのこれまでリリースした演奏とは少々路線が異なり、あのクイケンのハイドンの素晴らしさとは少々レベル差があるのが正直なところ。学生中心の若手オケの演奏としてみればテクニックも精度も確かであり、それなりに評価できますが、プロダクションとしての完成度など若干難があるところです。これはプロデューサー、プロダクションの差なのかもしれませんね。ハイドンの評価は[++++]としておきます。
クイケンはベルギーのACCENTからいまも少しずつハイドンのアルバムをリリースしています。直近では朝、昼、晩がありますが、これらの続きのアルバムのリリースを期待しましょう。
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