ヤナーチェク四重奏団の「冗談」「五度」「セレナード」(ハイドン)
今日はオークションで手にいれた LP。

amazon
ヤナーチェク四重奏団(Janáček Quartet)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.33のNo.2「冗談」、伝ハイドン作の弦楽四重奏曲Op.3のNo.5「セレナード」、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76のNo.2「五度」の3曲を収めたLP。1963年5月、ウィーンのソフィエンザールでのセッション録音。レーベルはLONDON。
このLP、ただのLPではなくアナログ全盛期にキングレコードがリリースしていた"THE SUPER ANALOGUE DISC"というシリーズの1枚。同じシリーズのLPでメータとロスフィルによる「シエェラザード」が手元にありますが、当時のシステムで聴いてもスピーカーのウーファーを吹き飛ばさんばかりの重低音が刻まれており、愛聴したものです。若い頃は迫力に弱かったわけですね(笑)。今回手に入れたLPはほぼ新品というか完璧なコンディション。盤面も綺麗でジャケットにも微塵も古びたところがありません。中には「スーパーアナログディスクについて」というちらしが入っており、マスターテープから調整卓をスルーして真空管カッティングアンプにダイレクトにつなぎカットされたとの説明があります。プレスは米国。もちろんずしりと重い180gの重量盤。
あまりの見事なコンディションにためいきをつきつつ、一応VPIのクリーナーで洗浄の上針を落とすと、見事な響きが部屋に満ちます。スクラッチノイズゼロ。CDでは絶対に聴くことのできない実体感あるキレ味。そして音量を上げると録音会場の周りを車が走っているのでしょうか、低い暗騒音も加わり、迫力十分。このLPがリリースされたのが1996年ということでちょうど20年前になりますが、デジタルでもハイレゾでもこの痛快なキレ味を再現することは難しいのではないかと思います。あまりの迫力に熱も吹き飛びそうですが、そうはうまくいきません(笑)
ヤナーチェク四重奏団のハイドンは以前にも一度CDを取り上げています。
2012/07/28 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ヤナーチェク弦楽四重奏団の「冗談」
こちらは録音も新しく2000年のもの。よく見てみると、メンバーは一人も共通しておらず、世代が変わっているのですね。今日取り上げる演奏の奏者は以下のとおり。
第1ヴァイオリン:イルジー・トラヴニチェク(Jiri Traviniček)
第2ヴァイオリン:アドルフ・シーコラ(Adolf Sykora)
ヴィオラ:イルジー・クラトホヴィル(Jiri Karatachvil)
チェロ:カレル・クラフカ(Karel Krafka)
ヤナーチェク四重奏団の創立は1947年とのことですが、このLPの録音時のメンバーのうち第2ヴァイオリンのアドルフ・シーコラ以外は創立時からのメンバーということで、今回のアルバムは創立時に近い響きが聴かれるわけですね。
録音のことばかり書きましたが、このアルバム、演奏も超一級品です。
Hob.III:38 String Quartet Op.33 No.2 "The Joke" 「冗談」 [E flat] (1781)
冒頭から素晴らしい覇気。切れ込み鋭いタイトな響きに惚れ惚れ。落ち着いたテンポで入りますが、実体感あふれる4人のアンサンブルの緊密さに圧倒されます。4人ともに音色が揃い、じっくりと進みます。つづくスケルツォでもじっくりと畳み掛けるような充実した響きに聴き入るのみ。中間部の軽やかなメロディーも実に味わい深い音色なので高貴に聴こえます。絶品なのが3楽章のラルゴ。チェロの胴鳴りの美しい響きに乗ってゆったりとヴァイオリンがメロディーを乗せていきます。4人が織り上げる響きの美しさがLP独特のダイレクトな響きによって際立ちます。そしてコミカルな終楽章も4本の弦楽器の絶妙な響きの美しさに彩られ、一気に聴かせきってしまいます。演奏もさることながら、この素晴らしいLPの響きの魅力は圧倒的。
String Quartet Op.3 No.5 [F] (Doubtful 疑作 Composed by Roman Hoffstetter)
ホフシュテッターの作曲によるセレナード。1楽章は前曲同様落ち着いたテンポで弦楽器のダイレクトな響きで聴かせます。肝心の2楽章のセレナードもピチカートの音色が冴えまくって絶品。ヴァイオリンがこれほど豊かに響くことに驚かされるような鮮明な録音。弱音器付きのヴァイオリンのメロディーがピチカートに乗ってアーティスティックに響きわたります。続くメヌエットは音楽が優美に弾み、明るいメロディーが次々に登場します。ハイドンのメヌエットの緊密さとはやはり異なりますね。そしてコミカルなフィナーレ。ヤナーチェク四重奏団のタイトな演奏によって、このセレナードもフォーマルに響きます。聴き応え十分。
Hob.III:76 String Quartet Op.76 No.2 "Quintenquartetett" 「五度」 [d] (1797)
一転して重厚な入り。あいかわらず録音の良さは惚れ惚れするほど。主旋律ではないパートの音色の多彩さまでしっかりと伝わるので響きが実に豊かに聴こえます。曲の構成はより緊密となり、骨格ががっしりとした演奏により迫力も素晴らしいものがあります。畳み掛けるように進む1楽章では、優秀な録音もあって、見事な構成感。
この曲のアンダンテでもピチカートの音色の美しさが冴え渡ります。曲が進むにつれて様々な表情を見せますが、フレーズごとに各パートの豊かな響きが微妙に表情に影響を与え、たった4本の弦楽器なのに実に多彩な表情をつくります。演奏はどちらかといえばオーソドックスなんですが、音楽は豊か。
メヌエットは実にユニークなメロディー。チェロパートに耳を傾けて聴くとユニークさが際立ちます。そしてフィナーレは軽やかに入りますが、すぐに構成の緊密さに引き込まれます。最後は力強いフィニッシュ。
このヤナーチェク四重奏団によるスーパーアナログディスク、実に考えさせられるLPでした。演奏は一級品ですが、なによりその響きが素晴らしいんですね。CDでは絶対に味わえないタイトでダイレクトな響き。ビニールの円盤に溝を刻んだだけのLPから、このように迫力あふれる響きが聴かれるのに対し、技術の粋を尽くしたデジタル録音からはこのような心に刺さる響きは聴こえません。おそらく物理特性などではハイレゾなどまで含めればLP時代とは段違いのものが実現されているのでしょうが、音楽の完成度はLP時代の方が高かったのではないかと思わざるを得ません。このLPは家宝にします。評価はもちろん全曲[+++++]とします。
- 関連記事
-
-
ドロルツ四重奏団の「皇帝」(ハイドン)
2016/08/15
-
リンゼイ四重奏団のOp.54(ハイドン)
2016/07/03
-
ジュリアード弦楽四重奏団のOp.54(ハイドン)
2016/07/02
-
モラヴィア四重奏団の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」(ハイドン)
2016/06/12
-
ヤナーチェク四重奏団の「冗談」「五度」「セレナード」(ハイドン)
2016/04/24
-
タカーチ四重奏団のOp.77、Op.103(ハイドン)
2016/02/28
-
ヴィア・ノヴァ四重奏団の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」(ハイドン)
2016/02/23
-
ウィハン弦楽四重奏団の「ひばり」(ハイドン)
2016/02/17
-
アルベルニ四重奏団のOp.76(ハイドン)
2016/02/04
-