井上道義/オーケストラ・アンサンブル金沢の「アレルヤ」(ハイドン)

4月に入って相変わらずドタバタと仕事が忙しくなかなかレビューが進みません。ようやく3本目の記事。

Inoue30.jpg
TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

井上道義(Michiyoshi Inoue)指揮のオーケストラ・アンサンブル金沢(Orchestra Ensemble Kanazawa)の演奏で、ハイドンの交響曲30番「アレルヤ」他を収めたアルバム。ハイドンの収録は2007年9月21日、金沢駅前にある石川県立音楽堂コンサートホールでのライヴ。レーベルはWarner Classics。

普段はあまり国内盤には手を出さない方ですが、売り場で見かけてハイドンの曲が入っているので入手した次第。ハイドンは交響曲30番という渋めの1曲ですが、その他にはニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」、オーケストラ・アンサンブル金沢の創設者でこのコンサートの前年に亡くなった岩城宏之の追悼のために書かれた一柳慧の交響曲7番「イシカワ・パラフレーズ」、武満徹の3つの映画音楽よりワルツ、チャイコフスキーの弦楽のためのセレナードからワルツ、ヨハン・シュトラウスII世の「芸術家カドリーユ」と多彩なプログラム。なんとなく統一感のない曲の並びだと思ったら、ハイドン以外の曲は2008年1月8日とまったく別の日のコンサートでの収録でした。ネットで調べてみると、ハイドンが演奏された2007年9月21日には、ハイドンに続きベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲に交響曲5番「運命」と古典派の曲を並べたコンサートということで、この配曲はアルバムの都合ということでした。

井上道義さんはおなじみでしょうが、1946年生まれで桐朋学園で斎藤秀雄に師事。1971年にミラノ・スカラ座でのグィド・カンテルリ指揮者コンクールで優勝し、活躍するようになります。これまでニュージーランド国立管弦楽団首席客演指揮者や新日本フィルの音楽監督などを歴任しています。2007年からオーケストラ・アンサンブル金沢の音楽監督に就任して、この9月21日のコンサートが就任後初の指揮だったとのこと。

このアルバムを取り上げたのは、もちろんハイドンの演奏が良かったからに他なりません。

Hob.I:30 Symphony No.30 "Alleluja" 「アレルヤ」 [C] (1765)
冒頭からキビキビとした進行で入ります。石川県立音楽堂コンサートホールは響きがいいのでしょう。小編成のオケが程よい残響につつまれながらスピーカーの少し奥に定位して、オケの響きは厚みもあって実に理想的。1楽章はコミカルなメロディが次々と顔を出すのですが、驚いたのがその表情付けの面白さ。ユーモラスな表情の演出が実に上手い。オケも見事に指揮に合わせて、この初期の曲の軽快な面白さにあわせて吹き上がります。アクセントも実に軽快。このメロディーラインをクッキリと浮かび上がらせて陽気で弾むような演出、井上道義さんの天性のものがあるのでしょう。オーケストラ・アンサンブル金沢の奏者の腕もなかなかです。録音が良いので生のオケをホールの最上の席で聴いているよう。
つづくアンダンテではリズミカルに刻む弦楽器に合わせて木管楽器が代わる代わるメロディーをつないでいきますが、とりわけフルートが絶妙な巧さ。ホールに響きわたるフルートの音が実に爽快。そして弦楽器もメリハリがきちんとついて表情豊かな演奏。
フィナーレも自然に弾む美しいメロディーの宝庫。アンサンブルの精度も高く、またフレーズごとの表情の変化も絶品。実に聴き応えがあります。

アルバムの最後に収められたハイドンの小交響曲ですが、この1曲のためにこのアルバムを買う価値があります。大変失礼なことにさして期待せず手にいれたアルバムですが、あまりのすばらしさに驚いた次第。先に書いたようにハイドンの収録日は井上道義さんがオーケストラ・アンサンブル金沢の音楽監督に就任してから最初のコンサートの1曲目ということで、もっとも集中して臨んだコンサートに違いありません。このハイドンの演奏、オーケストラ・アンサンブル金沢率いる井上道義さんの演奏の素晴らしさを伝えるばかりではなく、ハイドンの交響曲の真髄を突く見事な演奏といっていいでしょう。レビューのために何度か聴きましたが、聴けば聴くほどに味わいのある名演奏です。評価は[+++++]をつけます。なお、ハイドン以外の曲も井上道義さんの聴かせ上手な演奏が楽しめますので念のため。いつもながらですが、交響曲好きな方、手にはいるうちにどうぞ!

熊本では連夜の大地震。今も余震が絶え間なく不安な状況が続いています。音楽を聴く余裕などないかもしれませんね。謹んでお見舞い申し上げます。早く地震が収まりますように。

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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : アレルヤ

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No title

こんばんは

井上さんとアンサンブル金沢の102番を持っていますが、井上さんの成功法で洗練された指揮、アンサンブル金沢の上手さ、102番ではとても気に入っている1枚です。
録音もおっしゃるとおりのナチュラル・サウンドで申し分ないですね。

音階の不思議

Daisyさん、こんにちは。お仕事お忙しそうですね。

私は土日と福岡に行き、余震の中、合唱の練習を付けてきました。皆さんの地震への恐怖を音楽が緩和し、励ましてくれたのを感じました。

日曜日は大分に行く予定だったのですが、交通網が断たれていて断念。私の出身地である熊本はもちろん大変な状況で、避難所に居る知人が何人もいます。早く収束してくれるのを祈るばかりです。

しかし人生の試練にあって音楽の存在は何と有り難いことでしょうか。私自身も辛かった若かりし日々、音楽があったから生きられました。

さてレビューされた井上道義さんですが、私は30数年前、彼の指揮で吹いたことがあります。確かコンクールで名をあげられた数年後のこと。まだ若いのに独特のオーラが漂っていました。長身をくねらせ、踊るように指揮する姿を見て、「この方、バレエを習ったな」と直感しました。調べてみたらその通りでした。

その井上さんが、とあるインタビューの中でこう語っておられます。

「僕はやっぱり、音楽を通しての自分の開放とかそういうことじゃなくて、感動がほしくてしょうがないのね。感動ってなんだか知らないけど、一番大切ですね」
(インタビュアー)感動の正体とは?
「感動の正体ね……。どっかに神様がいるんじゃないか、とかさ(笑)」

井上さんの言っていることは本当です。彼は直感的にそれをつかんでいるのでしょう。

私達が音楽を聴いて、なぜ、これほどまでに感動するのか?
それは(以下は私の持論ですが)、そもそも音階の中に「神様の愛」が表現されているのです。

なぜなら、全音階(ドレミファ…)は全部で7つ。
…7は完全数で、神様の数と言われています。一週間は7日。ラッキー7。
そして、半音階(ド、ド♯、レ…)は全部で12。
…12は人間生活に欠かせない数で、人間を表す数と言われています。1ダースが12個。そして一日は24時間。ハイドンはじめ多くの作曲家が6曲単位で作曲。

つまり、音階の中で神様と人間がドッキングされているのです。これは、「わたしは、あなたを愛しているよ」という神様の人間へのメッセージではないでしょうか。

ハイドンは作曲が終わると楽譜の最後に、Soli Deo Gloria!(神にのみ栄光があるように)とサインしました。

Re: No title

michaelさん、コメントありがとうございます。

井上道義さんとオーケストラ・アンサンブル金沢の102番、手元になかったので注文を入れました。

井上さんの指揮はフレーズの弾み方、テンポの切り替えの鮮やかさ、語り口の面白さともに日本人離れしたものがあり、102番も着くのが楽しみです。色々聴いているつもりですが身近な所に名盤があるものですね。

Re: 音階の不思議

Skunjpさん、コメントありがとうございます。

Skunjpさんも文字通り、週末は飛び回っていらっしゃるのですね。なかなか収束しない熊本の地震のニュースを聞くたびに心が痛みます。

さて、井上さんの指揮での演奏経験があるとのこと。私は出来上がった音楽よりもそれをつくる過程に興味をひかれます。何を強調してどういう音楽をつくりたいのか。手元にカルロス・クライバーの「こうもり」のリハーサルを収めたDVDがあり、あのめくるめくような陶酔がどのようにつくられるのかがわかり、実に興味深いものでした。井上さんもハイドンの小交響曲から伸びやかでウイットに富んだ音楽をどのようにして引き出したのか興味は尽きませんね。

音楽が持つ力は私が言うまでもなく大きなものですね。人の心を癒し、人を勇気づけ、時には人をイカれさせます。こうして音楽を楽しめ、音楽の神様に出会えるのはるのは、普段通りの平穏な日常があるからに他なりませんね。被災地にも早く平穏な生活が戻りますように。

Re: No title

michaelさん、井上道義さんの102番到着しました!

こちらは威風堂々とした演奏でした。やはり2007年の30番はオーケストラ・アンサンブル金沢の音楽監督就任直後の緊張感からか、スリリングさもある爽快な演奏でしたが、2年あとの102番の方はオケを十分に掌握した安定感ある演奏で、特に低音弦の唸るような迫力と分厚いオケの音色で聴かせる演奏でした。個人的にはもう少しコミカルな部分の面白さが加わるとさらに良いとの印象です。

井上道義さんの102番

Daisyさん こんにちは

在庫が少なそうでしたが、届いてなによりですv
たしかに、メヌエットや終楽章など豪快、スリリングな楽しみはありますが、コミカルな表情もあるとさらにいいですね。しかし国内オケ、国内盤でこれほどの102番、ハイドンが出るのは喜ばしいです。
巨匠の年代の井上さんは新感覚で若々しいです。まだ"老巨匠"ってわけじゃないですもんね^^カップリングの「リンツ」も好きな演奏です。

Re: 井上道義さんの102番

michaelさん、毎度コメントありがとうございます。

確かに井上道義さん、今は巨匠の年代ですね。そして演奏は枯れることなくエネルギーが溢れています。音楽を上手く聴かせる才能を持った人ですね。102番は堂々とした迫力で聴かせ、リンツでは色彩感を上手く表現しています。今まであまり注目してきませんでしたが、今後の録音やコンサートはちょっと気になる存在となりました。貴重な情報ありがとうございました。
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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Joseph Haydn Discography
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものはリスト冒頭に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

登録曲数:1,365
登録演奏数:11,529
(2019年3月31日)
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