作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

シェルヘンの十字架上のキリストの最後の七つの言葉、オラトリオ版(ハイドン)

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今朝は早起きして、未聴のCDの整理。(笑)
今日紹介するのは、先日手に入れたヘルマン・シェルヘン指揮のウィーン国立歌劇場合唱団&オケによる「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」です。

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レーベルはイタリアのPALLADIOというレーベル。パラディオといえば、古典建築の美しさと規律を16世紀のイタリアに取り戻した、かの有名な建築家、アンドレア・パラディオ。彼の名を冠したレーベルということではありませんか。レーベルはつぶれてしまったのか、ネット上を調べた限りではレーベルの情報がみつかりませんでした。

学生時代にヨーロッパをバックパッキングで旅行したとき、パラディオの端正なフォルムと空間を実際に体験すべく、ヴェネチア、ヴィツェンツァをずいぶん歩き回ったものです。
中でも最も感動したのが、ヴィツェンツァの町中にさりげなくある、劇場、テアトロ・オリンピコ。

Wikipedia:Andrea Palladio(英文)
Wikipedia:Teatro Olimpico(英文)

パラディオ晩年の最高傑作だと思います。演劇用のホールですが、現在もコンサートなども開かれていると聞きます。舞台にパラディオ独特の典雅な古典的な建築のファサードをあしらった、円形の客席をもつ小劇場ですが、ファサードの開口部から奥に見えるのはパースペクティブを強調するためにあえて歪みをつけられた町並み。ここが実際の街ではなく、劇空間であることを観客に否が応でも思い知らせる強烈なレトリック。空間構成の天才だからこそできる驚異の発想を感じ、身震いしたものです。
当時、円形の客席に座りながらしばらく、その空間、パラディオの狂気を堪能しました。かれこれ30年近く前のことです。

当時ヴェネチアのサン・マルコ広場で対岸のパラディオの教会を眺めていたときに、声をかけられたトルコ人の男性。「日本から何しにきたの?」と聞かれ、「パラディオの建築を見にきた」と答えると、「それは面白そうだから、オレも一緒に案内してくれ」といわれ、最初はビックリでしたが、一緒に対岸のイル・レジェンドーレ教会に船で渡り、意気投合。
それから電車にのってヴィツェンツァまで行き、バシリカやテアトロ・オリンピコを一緒に見て回りました。ヴィツェンツァはパラディオの街。町中にパラディオの建築があります。夜になってホテルのあるヴェネチアにもどると、彼のおごりで豪華な夕食。パラディオの素晴らしさがよくわかったとのことでした。
何でも彼はイスタンブールの最高級ホテルで宝石商をしており、日本人は彼の良いお客さんとのこと。旅先で日本人に会うと、いつも声をかけていたそうです。日本人は礼儀正しく、やさしいと繰り返し言ってました。私もトルコの人の気さくさと優しさが深く印象に残りました。彼は今どうしてることやら、懐かしい限りです。
当時の写真はリヴァーサルフィルムで倉庫の奥にしまってあるため、こんど取り出して整理してみようと思います。

さてさて、だいぶ脱線しましたが、本題のシェルヘンの十字架。1962年のスタジオ録音。私の生まれた年ということで感慨深いものもあります。
これまで、シェルヘンのハイドンには素晴らしいものが沢山あり、このアルバムも期待の一枚ですが、結果的には期待を大きく上回る素晴らしい演奏です。オラトリオ版の十字架のベスト盤と言ってもいいでしょう。このところいいアルバムに出会う機会が多くうれしい限りです。

冒頭から厚みのあるオーケストラがシェルヘンらしい重厚な旋律を奏でていきます。録音も十分優秀、というか普通にいい録音です。木質系の素朴な弦楽器の音が心地いいです。
全体の構築感がシェルヘンの特徴ですが、ゆったりすすめる部分の神々しさは素晴らしく、そしてそれだけではないのが、ギアチェンジで速めのテンポをとるところがアクセントとなり、非常に創造的な構成になっていることです。また、ピアニッシモの部分の絶妙なコントロールも絶品。
このアルバムの価値を高めているのは、もうひとつ、コーラスの素晴らしい響き。オケと一体になった素晴らしい音響。宗教曲の本質である静かな祈りを感じます。

最後に、ジャケットの出来にも触れておきましょう。
まるで大理石の彫刻のようなシェルヘンの横顔が暗黒から浮かび上がる構図。パラディオの名に恥じないというか、古典建築の彫刻の美術写真のようなつくりは、古典復興のコンセプトにピタリですね。

アルバムの評価はもちろん[+++++]。この素晴らしい聖金曜日のためのオラトリオに是非打たれていただきたいものです。
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