作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】イル・ポモ・ドーロの協奏曲集-2(ハイドン)

0
0
前記事のつづき。

IlPomoDoro.jpg
TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

リッカルド・ミナーシ(Riccardo Minasi)とマクシム・エメリャニチェフ(Maxim Emelyanychev)の指揮するイル・ポモ・ドーロ(Il Pomo D'Oro)によるハイドンの協奏曲などを収めた2枚組のアルバム。

今日はCD1から指揮者が変わったCD2を取り上げます。アルバムや奏者については前記事をご参照ください。

2016/02/15 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】イル・ポモ・ドーロの協奏曲集-1(ハイドン)

CD2から指揮はハープシコードを弾くマクシム・エメリャニチェフ。今年の1月から前任のリッカルド・ミナーシの後を継いでイル・ポモ・ドーロの首席指揮者となった人。録音時の2014年は26歳という若さです。

Hob.I:83 Symphony No.83 "La Poule" 「雌鶏」 [C] (1785)
1曲目はなぜか交響曲で「雌鶏」。マクシム・エメリャニチェフが得意としているということでしょうか。金管をかなり象徴的に鳴らして古楽器の音色の面白さを強調した入り。オケは同じですが、オケの音色はCD1から変わります。マクシム・エメリャニチェフの指揮はリッカルド・ミナーシよりも金管の音色以外は全般にオーソドックス。古楽器による均整のとれたバランスの良い演奏。金管の鳴らし方が変わらないので若干単調な印象もなくはありません。どちらかと言うとリッカルド・ミナーシの方が若々しい印象です。安全運転な感じ。
アンダンテも実に落ち着いた演奏。CD1の面白さを味わっているので、もう少し踏み込みを期待してしまうところ。演奏は端正でオケのアンサンブルも精度高く質の高い演奏ですが、やはり少々かしこまった感じ。
メヌエットからフィナーレも実にオーソドックスな展開。もちろん古楽器による適度な力感、高揚感、バランス感覚もあり、それなりに盛り上がりを見せますが、あと一味工夫が欲しいところ。そしてフィナーレの終盤、オケがこれまでとは異なり、ちょっと乱れるところもあり、指揮者のコントロール力は少々差があるというのが正直なところ。

Hob.XVII:4 Fantasia (Capriccio) op.58 [C] (1789)
CD2の2曲目はマクシム・エメリャニチェフのハープシコードソロでファンタジア。こちらは音量差のつきにくいハープシコードを縦横無尽に弾きまくった陶酔感を感じさせる部分と余韻で聴かせる部分のコントラストがクッキリとついたなかなかの演奏。先ほどの雌鶏のオーソドックスさとは異なり表現意欲に溢れた演奏です。途中、若干調律のずれたように聴こえる部分がありますが、何らかのペダル操作の影響でしょうか。このへんは楽器にくわしくないためわかりません。

Hob.XVIII:11 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
そして、CD2のハイライトの最も有名なコンチェルト。なぜか序奏から別次元の生気! オケの精度は今ひとつながら、明らかに演奏に気合が漲っています。リッカルド・ミナーシのコントロールに近い印象もありますが、ちょっと荒いでしょうか。ソロのハープシコードは流石にキレキレ。ここでも雌鶏同様、金管が独特の音色を聴かせて格別の存在感を呈しますが、鳴らし方が単調な印象。オケは全般に表現意欲旺盛でアクセントもガッチリキメてきます。指揮者の若さがそのまま音楽に乗っている感じと言えばいいでしょう。それなりにスリリングでたのしめます。
2楽章も同様、適度に荒いところが面白さにつながり、冷静にタッチを進めるハープシコードに対してオケがかなり自在なサポートを聴かせます。リズムがちょっと前のめりになったり、意外なバランスを聴かせたりするところもあって、本当にスリリング。一転カデンツァでははっとするような新鮮な響きを引き出したり、なかなか先の読めない面白さがあります。オケの各奏者が周りの出方を探りながら演奏している感じ。
フィナーレは若さと才気が素直にエネルギーとなって表出したような演奏。相変わらずオケは自在。弾き振りなのにソロとオケの微妙なズレによる緊張が走ります。ハープシコードの見事さと、オケの素人っぽいところの対比が妙に面白い演奏です。

Hob.XVIII:6 Concerto per violino, cembalo e orchestra [F] (1766)
最後はヴァイオリンとハープシコードが活躍する曲。両指揮者がソロでも腕くらべといったところでしょう。リッカルド・ミナーシの存在があるからか、前曲のようにオケが暴れることもなく、適度な生気とバランスの保たれた伴奏に乗って2人のソロは冴え冴えとメロディーを奏でます。やはり変化に富んだボウイングのミナーシと繊細なキレを聴かせるエメリャニチェフのソロは非常に聴き応えがあります。ソロとオケ、表現意欲とバランス、静と動のうまく噛み合ったいい演奏。
つづくラルゴの序奏は抑えていたエメリャニチェフの表現意欲が噴出。いきなりグッと力が入ります。美しいメロディーのヴァイオリンとハープシコードが絡みながらのソロはやはり流石。何となくソロよりオケが前に出てソロ以上に存在感を出そうとしています(笑) この辺はまだまだ指揮者の経験不足というところでしょうか。普段聴く協奏曲とは異なるアプローチに、逆に協奏曲のオケの演奏のツボを教わった感じがします。そういう意味ではいろいろ考えさせられる演奏であります。
このアルバム最後のフィナーレは適度なキレと力感がバランスした演奏。2楽章でちょっと踏み込んだ以外はなかなかバランスの良い演奏でした。

ちょっとCD1とは違うトーンのレビューとなりましたが、このアルバム、2枚組ですが価格はレギュラー盤1枚の値段。しかも前記事で書いたとおり、リッカルド・ミナーシの振ったCD1は素晴らしい出来ということで、アルバム自体はオススメしていいものです。CD2の方はソロはともかく指揮はまだまだこれから経験を積む必要があることを感じさせるもの。最近レビューで取り上げるアルバムは厳選された一級のアルバムばかりでしたので、こうしたレビューは久しぶり。逆に聴く方の脳はいろいろ考えさせられるという意味で刺激的なもののでした。素晴らしい演奏も、これからの成長を期待する演奏も聴けるという意味でも面白いアルバムだと思います。ちなみにCD2の評価ですが、ファンタジアと最後のHob.XVIII:6は[++++]、残り2曲は[+++]とします。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

0 Comments

There are no comments yet.