【新着】イル・ポモ・ドーロの協奏曲集-1(ハイドン)
最近リリーズされたばかりのアルバム。

TOWER RECORDS / amazon
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リッカルド・ミナーシ(Riccardo Minasi)とマクシム・エメリャニチェフ(Maxim Emelyanychev)の指揮するイル・ポモ・ドーロ(Il Pomo D'Oro)によるハイドンの協奏曲などを収めた2枚組のアルバム。収録曲によって指揮者と演奏者がいろいろなので、曲目は下記のレビューをご参照ください。収録は2014年2月7日から26日まで、イタリアヴェネト州ヴィツェンツァ県のロニーゴ(Lonigo)という街のヴィラ・サン・フェルモ(Villa San Fermo)でのセッション録音。
オケのイル・ポモ・ドーロは2012年に設立された若手中心の古楽器オーケストラ。活動はオペラが中心のようです。オケの名前は17世紀に活躍したイタリアのオペラ作曲家アントニオ・チェスティ(Antonio Cesti)のオペラ「黄金のリンゴ(Il Pomo D'Olo)」にちなんだものとのこと。
il pomo d'oro
オケのウェブサイトの写真を見ると本当に若いメンバーばかり。このアルバムは2枚組のCDですが、CD1がヴァイオリンソロも担当するリッカルド・ミナーシの指揮、CD2はハープシコードソロを担当するマクシム・エメリャニチェフの指揮と担当を分けています。ウェブサイトのオーケストラの略歴を見てみると、なんと2016年の1月までの首席指揮者がリッカルド・ミナーシで、新たな首席指揮者がマクシム・エメリャニチェフになるとのこと。このアルバムの録音は2014年ですが、この指揮者の円満な交代を象徴するように、交代の時期を狙ってアルバムを準備してリリースしてきたものと思われます。
リッカルド・ミナーシは1978年ローマ生まれのヴァイオリン奏者、指揮者。これまで、ジョルディ・サヴァール率いるル・コンセール・デ・ナシオン、アッカデミア・ビザンティーナ、コンチェルト・イタリアーノ、イル・ジャルディーノ・アルモニコなどのコンサートマスターを務めてきた実力派。また指揮者としてもリヨン国立歌劇場管弦楽団と合唱団、チューリッヒ室内管など多くのオケを振った経験がありますが、イル・ポモ・ドーロは設立された2012年から2015年まで首席指揮者を務めました。教育者としてもパレルモのベリーニ音楽院やニューヨークのジュリアード音楽院、ヘルシンキのシベリウス音楽院などでマスタークラスなどを開いています。
ハープシコードを弾くマクシム・エメリャニチェフは1988年ロシアのジェルジンスク生まれの鍵盤楽器奏者、指揮者。まだ若いですがロシア国内の多くのコンクールでの優勝経験があり、またロシアではかなりの数のオーケストラの指揮経験があるようです。最近話題のクルレンツィス指揮ムジカ・エテルナの「フィガロの結婚」で通奏低音フォルテピアノを担当しています。
では、CD1から。指揮はリッカルド・ミナーシ。
Hob.VIIa:4 Violin Concerto [G] (c.1765/70)
まずは、ミナーシ自身がヴァイオリンを弾くヴァイオリン協奏曲。若々しく溌剌とした序奏。古楽器オケですが表現はダイナミックでどちらかというと楽天的な響きが特徴。すぐにミナーシのヴァイオリンソロが入りますが、弾き振りだけにオケとまったく同じスタイルでの演奏。演奏は自由闊達なもので、かなり自在なボウイングで適度な節度をもちながらも随所にアドリブを利かせます。型にはまった音楽とは正反対に、創意を凝らします。録音は鮮明なんですが、ちょっとマイクセッティングが独特なのか、ソロの響きに濁りというかキリリと定位しないきらいがあります。カデンツァも即興性が溢れ出す感じ。なかなか面白い。
アダージョも実に新鮮。ミナーシのヴァイオリンはさすがに実力者だけあって、音色の美しさは格別。しかもしなやかに躍動しながら、音楽が豊かに膨らみます。リズムの角が滑らかに削られ、木質系のしなやかな響きとおおらかな盛り上がり。そしてふと気づくとミナーシの美音の余韻が消え入る美しさに気づきます。弱音のデリケートさ、音量のしなやかなコントロールにうっとり。
フィナーレは古楽器の豊かな響きが速いテンポで引き締められ、豊かな疾走感に溢れた演奏。録音会場に響きわたる強音の余韻と千変万化する響きに打たれます。いやいや、これは新時代の古楽器演奏。音楽が実に楽しく響きます。
Hob.VIId:3 Concerto per il corno [D] (1762)
続いてホルン協奏曲。ホルンのソロはヨハンネス・ヒンターホルツァー(Johannes Hinterholzer)。ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス、ウィーン・アカデミー、ルーヴル宮音楽隊のホルンを務める人とのこと。オケは全曲同様、弾むリズムで楽天的かつ自在さに富んだ序奏を聴かせます。ヒンターホルツァーのホルンはあえてソロを浮き彫りにするというより、オケの1パートのような素朴な演奏。朗々という感じではなく、雅な音色を活かしてキレ良く聴かせるホルン。テクニックは確かで音が外れるような危うさはありません。実に楽しげなソロ。小気味良いテンポが古楽器ならでは。ホルンのカデンツァは古楽器のホルンから実に多彩な響きを聴かせ、テクニックも万全。
聴かせどころのアダージョは、素朴な古楽器の音色の魅力がしっかり伝わります。ホルンの音程が下がるところの響きのなんとスリリングなこと! 磨き抜かれた演奏とは真逆で、楽器それぞれの音色の微妙な響きの綾と、奏者それぞれの響きの違いを楽しめと言っているよう。これまで聴いた古楽器による演奏とはちょっと聴かせる角度が違います。結果的に実に豊かな音楽が流れます。再びホルンの音程が下がるところでオケの響きの中にホルンが吸い込まれていくような独特の雰囲気。ゾクゾクします。そしてカデンツァでは逆にオケの響きの中からホルンがすっと響いてくる面白さ。響きの変化に耳が集中。
そしてフィナーレもこのホルンとオケの響きの変化に引き込まれつづけます。一貫したリズムで落ち着いてテンポ刻みますが、ソロとオケが完全に一体化してめくるめく響きを繰り出してきます。これほど面白いホルン協奏曲は久しぶり。
Hob.XVIII:4 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [G] (c.1770)
そして、指揮はミナーシ、ハープシコードソロは次期指揮者のエメリャニチェフの組み合わせ。この曲オケの刻むのリズムの面白さが聴きどころ。この曲、手元の所有盤を確認したところ、ピアノかフォルテピアノで弾かれるのが普通で、ハープシコードで弾いているのはコープマン盤ぐらい。ソロが聴き劣りするかと思いきや、まったくそうは感じさせません。エメリャニチェフはハープシコードの繊細な音色を活かしながら、しなやかに響きを変化させ、楽器の音量の限界などを感じさせず、逆に繊細な響きの魅力で聴かせてしまいます。エメリャニチェフはハープシコードのリズムも自在にコントロールして、表現密度でオケに負けません。オケの方も静かなハープシコード相手ということで、若干音量を控えながらも、起伏に富んだダイナミックなサポート。
アダージョは草書体のような筆使いのオケのん伴奏。エメリャニチェフのソロは1楽章以上に実に表現力豊か。しっとりと弾かれる美しいメロディーに静かに聴き入ります。ハープシコードのソロがここまで心に響くとは思いませんでした。
一転してキレのいいフィナーレ。オケに溶け込むように繊細な音色のハープシコードが鮮やかなタッチで飛び回ります。オケとの音色差が大きいのでしっかり分離して聴こえます。もちろん力感は完全にオケ優先ですが、音域のせいか浮かびあがるのはハープシコード。この響きの面白さこそ、ピアノやフォルテピアノでは出せない面白さでしょう。そして最後のカデンツァも素晴らしく鮮やかなハープシコードの音階の嵐に惚れ惚れ。迎えに来たオケとの掛け合いも見事に決まってフィニッシュ。いやいやこの曲の新たな魅力を発見したような新鮮な気持ちになりました。
変わってCD2。今度はハープシコードを弾くマクシム・エメリャニチェフが指揮をとりますが、記事が長くなってきたので、久々に記事を分けて次の記事とすることにしましょう。
ということでCD1の3曲の演奏は全曲[+++++]とします。続きをお楽しみに!

リッカルド・ミナーシ(Riccardo Minasi)とマクシム・エメリャニチェフ(Maxim Emelyanychev)の指揮するイル・ポモ・ドーロ(Il Pomo D'Oro)によるハイドンの協奏曲などを収めた2枚組のアルバム。収録曲によって指揮者と演奏者がいろいろなので、曲目は下記のレビューをご参照ください。収録は2014年2月7日から26日まで、イタリアヴェネト州ヴィツェンツァ県のロニーゴ(Lonigo)という街のヴィラ・サン・フェルモ(Villa San Fermo)でのセッション録音。
オケのイル・ポモ・ドーロは2012年に設立された若手中心の古楽器オーケストラ。活動はオペラが中心のようです。オケの名前は17世紀に活躍したイタリアのオペラ作曲家アントニオ・チェスティ(Antonio Cesti)のオペラ「黄金のリンゴ(Il Pomo D'Olo)」にちなんだものとのこと。
il pomo d'oro
オケのウェブサイトの写真を見ると本当に若いメンバーばかり。このアルバムは2枚組のCDですが、CD1がヴァイオリンソロも担当するリッカルド・ミナーシの指揮、CD2はハープシコードソロを担当するマクシム・エメリャニチェフの指揮と担当を分けています。ウェブサイトのオーケストラの略歴を見てみると、なんと2016年の1月までの首席指揮者がリッカルド・ミナーシで、新たな首席指揮者がマクシム・エメリャニチェフになるとのこと。このアルバムの録音は2014年ですが、この指揮者の円満な交代を象徴するように、交代の時期を狙ってアルバムを準備してリリースしてきたものと思われます。
リッカルド・ミナーシは1978年ローマ生まれのヴァイオリン奏者、指揮者。これまで、ジョルディ・サヴァール率いるル・コンセール・デ・ナシオン、アッカデミア・ビザンティーナ、コンチェルト・イタリアーノ、イル・ジャルディーノ・アルモニコなどのコンサートマスターを務めてきた実力派。また指揮者としてもリヨン国立歌劇場管弦楽団と合唱団、チューリッヒ室内管など多くのオケを振った経験がありますが、イル・ポモ・ドーロは設立された2012年から2015年まで首席指揮者を務めました。教育者としてもパレルモのベリーニ音楽院やニューヨークのジュリアード音楽院、ヘルシンキのシベリウス音楽院などでマスタークラスなどを開いています。
ハープシコードを弾くマクシム・エメリャニチェフは1988年ロシアのジェルジンスク生まれの鍵盤楽器奏者、指揮者。まだ若いですがロシア国内の多くのコンクールでの優勝経験があり、またロシアではかなりの数のオーケストラの指揮経験があるようです。最近話題のクルレンツィス指揮ムジカ・エテルナの「フィガロの結婚」で通奏低音フォルテピアノを担当しています。
では、CD1から。指揮はリッカルド・ミナーシ。
Hob.VIIa:4 Violin Concerto [G] (c.1765/70)
まずは、ミナーシ自身がヴァイオリンを弾くヴァイオリン協奏曲。若々しく溌剌とした序奏。古楽器オケですが表現はダイナミックでどちらかというと楽天的な響きが特徴。すぐにミナーシのヴァイオリンソロが入りますが、弾き振りだけにオケとまったく同じスタイルでの演奏。演奏は自由闊達なもので、かなり自在なボウイングで適度な節度をもちながらも随所にアドリブを利かせます。型にはまった音楽とは正反対に、創意を凝らします。録音は鮮明なんですが、ちょっとマイクセッティングが独特なのか、ソロの響きに濁りというかキリリと定位しないきらいがあります。カデンツァも即興性が溢れ出す感じ。なかなか面白い。
アダージョも実に新鮮。ミナーシのヴァイオリンはさすがに実力者だけあって、音色の美しさは格別。しかもしなやかに躍動しながら、音楽が豊かに膨らみます。リズムの角が滑らかに削られ、木質系のしなやかな響きとおおらかな盛り上がり。そしてふと気づくとミナーシの美音の余韻が消え入る美しさに気づきます。弱音のデリケートさ、音量のしなやかなコントロールにうっとり。
フィナーレは古楽器の豊かな響きが速いテンポで引き締められ、豊かな疾走感に溢れた演奏。録音会場に響きわたる強音の余韻と千変万化する響きに打たれます。いやいや、これは新時代の古楽器演奏。音楽が実に楽しく響きます。
Hob.VIId:3 Concerto per il corno [D] (1762)
続いてホルン協奏曲。ホルンのソロはヨハンネス・ヒンターホルツァー(Johannes Hinterholzer)。ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス、ウィーン・アカデミー、ルーヴル宮音楽隊のホルンを務める人とのこと。オケは全曲同様、弾むリズムで楽天的かつ自在さに富んだ序奏を聴かせます。ヒンターホルツァーのホルンはあえてソロを浮き彫りにするというより、オケの1パートのような素朴な演奏。朗々という感じではなく、雅な音色を活かしてキレ良く聴かせるホルン。テクニックは確かで音が外れるような危うさはありません。実に楽しげなソロ。小気味良いテンポが古楽器ならでは。ホルンのカデンツァは古楽器のホルンから実に多彩な響きを聴かせ、テクニックも万全。
聴かせどころのアダージョは、素朴な古楽器の音色の魅力がしっかり伝わります。ホルンの音程が下がるところの響きのなんとスリリングなこと! 磨き抜かれた演奏とは真逆で、楽器それぞれの音色の微妙な響きの綾と、奏者それぞれの響きの違いを楽しめと言っているよう。これまで聴いた古楽器による演奏とはちょっと聴かせる角度が違います。結果的に実に豊かな音楽が流れます。再びホルンの音程が下がるところでオケの響きの中にホルンが吸い込まれていくような独特の雰囲気。ゾクゾクします。そしてカデンツァでは逆にオケの響きの中からホルンがすっと響いてくる面白さ。響きの変化に耳が集中。
そしてフィナーレもこのホルンとオケの響きの変化に引き込まれつづけます。一貫したリズムで落ち着いてテンポ刻みますが、ソロとオケが完全に一体化してめくるめく響きを繰り出してきます。これほど面白いホルン協奏曲は久しぶり。
Hob.XVIII:4 Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [G] (c.1770)
そして、指揮はミナーシ、ハープシコードソロは次期指揮者のエメリャニチェフの組み合わせ。この曲オケの刻むのリズムの面白さが聴きどころ。この曲、手元の所有盤を確認したところ、ピアノかフォルテピアノで弾かれるのが普通で、ハープシコードで弾いているのはコープマン盤ぐらい。ソロが聴き劣りするかと思いきや、まったくそうは感じさせません。エメリャニチェフはハープシコードの繊細な音色を活かしながら、しなやかに響きを変化させ、楽器の音量の限界などを感じさせず、逆に繊細な響きの魅力で聴かせてしまいます。エメリャニチェフはハープシコードのリズムも自在にコントロールして、表現密度でオケに負けません。オケの方も静かなハープシコード相手ということで、若干音量を控えながらも、起伏に富んだダイナミックなサポート。
アダージョは草書体のような筆使いのオケのん伴奏。エメリャニチェフのソロは1楽章以上に実に表現力豊か。しっとりと弾かれる美しいメロディーに静かに聴き入ります。ハープシコードのソロがここまで心に響くとは思いませんでした。
一転してキレのいいフィナーレ。オケに溶け込むように繊細な音色のハープシコードが鮮やかなタッチで飛び回ります。オケとの音色差が大きいのでしっかり分離して聴こえます。もちろん力感は完全にオケ優先ですが、音域のせいか浮かびあがるのはハープシコード。この響きの面白さこそ、ピアノやフォルテピアノでは出せない面白さでしょう。そして最後のカデンツァも素晴らしく鮮やかなハープシコードの音階の嵐に惚れ惚れ。迎えに来たオケとの掛け合いも見事に決まってフィニッシュ。いやいやこの曲の新たな魅力を発見したような新鮮な気持ちになりました。
変わってCD2。今度はハープシコードを弾くマクシム・エメリャニチェフが指揮をとりますが、記事が長くなってきたので、久々に記事を分けて次の記事とすることにしましょう。
ということでCD1の3曲の演奏は全曲[+++++]とします。続きをお楽しみに!
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