クルト・ザンデルリンク/ドレスデン・シュターツカペレの告別、ロンドン(ハイドン)

クルト・ザンデルリンク(Kurt Sanderling)指揮のドレスデン・シュターツカペレの演奏で、ハイドンの交響曲45番「告別」、104番「ロンドン」の2曲を収めたLP。収録は1967年5月19日、ドレスデンのルカ教会でのセッション録音です。レーベルはDeutsche Grammophonの日本盤。
カワサキヤさんのコメントのとおり、クルト・ザンデルリンクのハイドンといえば、ベルリン響を振ったパリセットが有名であり、私も昔から愛聴しているアルバムです。その他ザンデルリンクのハイドンはライヴを中心にいろいろとアルバムがリリースされており、当ブログでもこれまで結構な回数取り上げています。
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ザンデルリンクのハイドンの交響曲は、パリセットに代表されるように、堅実なテンポに乗って、適度な覇気と、適度なメリハリ、そして揺るぎない古典の秩序を感じさせるもの。ハイドン交響曲の理想的な演奏といっていいでしょう。そのザンデルリンクが、いぶし銀の音色をもつドレスデン・シュターツカペレを振った、告別とロンドンのセッション録音ということで、弥が上にも期待が高まります。
いつものようにVPIのレコードクリーナーと美顔ブラシで丹念にクリーニングしてから、やおらプレーヤーに乗せ、針を落とします。
Hob.I:45 Symphony No.45 "Farewell" 「告別」 [f sharp] (1772)
いきなり燻らせたような渋い響きのドレスデン・シュターツカペレの音色にはっとさせられます。LPの状態は非常によく、ノイズレス。ザンデルリンクらしいバランスを保った上での適度な推進力に心躍ります。徐々にオケに力が満ちていき、劇的な曲想の1楽章に適度な隈取りを与え、軽い陶酔感に至ります。冒頭からバランスの良さに酔います。
つづくアダージョは弱音器付きの弦楽器と木管のしっとりとしたアンサンブルで穏やかにメロディーを奏で、絶妙な翳りを聴かせます。要所でテンポをスッと落として余韻を楽しませながら、ゆったりと音楽を進めます。とろけるように音を重ねるホルンが印象的。
メヌエットも実にしっとりと進めます。力みなく、どこも尖らず、リズムも溜めず、完璧なバランスでゆったりと進む音楽。ルカ教会に響きわたるホルンの余韻の実に美しいこと。さりげない演奏に見えても、デュナーミクのコントロールは実に巧みで、細かい表現の積み重ねで到達した至芸というところ。
そしてフィナーレの前半は適度な喧騒感を催させ、後半への対比をしっかりと印象付けます。微妙な早足感が絶妙な効果。そして奏者が一人ずつ去るアダージョ。なんという癒しに満ちた音楽。深い祈りのような柔らかさに包まれます。ドレスデン・シュターツカペレの燻らしたような音色による素晴らしいメロディーが、少しずつ細くなっていきます。ハイドンの天才を思い知らされる美しすぎる瞬間。最後は室内楽のような純粋な響きに昇華し、静寂に音楽が吸い込まれます。なんという美しさ。絶品です。
Hob.I:104 Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
一転して図太い響きがルカ教会に満ちます。ハイドンの最後の交響曲の堂々とした大伽藍が見えたと思うと、ゆったりと音量をコントロールして余韻を楽しませ、再び号砲が轟きます。このあたりの自然さを巧みな演出で聴かせるのはザンデルリンクならでは。力感ではなく演出で浮かび上がる素晴らしいスケール感。一貫してゆったりとしているで、音楽は壮大極まりない、まるで大山脈を遠望するよう。小細工なし、派手な演出もなしながら、大きくうねり盛り上がる曲想。あまりに揺るぎない構築感と説得力に圧倒されます。ロンドンの1楽章の理想的な演奏と言っていいでしょう。
アンダンテもゆったりした流れを引きつぎ、こちらは蛇行する大河の流れのよう。自然ながら巧みにテンポをコントロールして陰影を深く刻み、曲の立体感を保っているのが素晴らしいところ。呼吸の自然さが全ての流れをまとめているよう。
メヌエットももちろん雄大。これが王道の演奏なのでしょう。彫りが深くしっかりとリズムを刻み、要所でメリハリをつけた理想的な演奏。
そしてクライマックスのフィナーレ。入りのしなやかな和音から雰囲気満点。穏やかに緩急、動静を繰り返しながら徐々に盛り上がっていきます。つなぎの部分の柔かさが険しさを引き立て、一貫したテンポが雄大さを際立たせる高度なバランスの上に成り立つクライマックス。最後はドレスデン・シュターツカペレのいぶし銀の響きが振り切れて終了。
いやいや素晴らしい演奏でした。ルカ教会での残響の多い録音ゆえ、鮮度に欠けるきらいはあるものの、そうした響きからでもつたわってくる、この素晴らしい完成度は並のものではありません。この録音がなぜCD化されないか理解に苦しみますね。まさにハイドンの交響曲の理想像といていい演奏だと思います。演奏のスタイルは新しいものではありませんが、これが古さを感じるといえば、全くそうではなく、まさに普遍的な魅力を保ち続けるものと言っていいでしょう。絶品です。もちろん評価は両曲共[+++++]とします。
カワサキヤさん、素晴らしいアルバムの情報をいただきありがとうございました!
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