作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アルベルニ四重奏団のOp.76(ハイドン)

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またまた湖国JHさんから送り込まれたアルバムです。

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アルベルニ四重奏団(The Alberni Quartet)による、ハイドンの弦楽四重奏曲 Op.76の6曲を収めた2枚組のアルバム。収録は1990年1月、ロンドンの名録音会場、ヘンリー・ウッド・ホールでのセッション録音。レーベルはCollins Classics。

このアルバムが湖国JHさんから送られてきた時、てっきり同じくCollinsからリリースされているロバート・ハイドン・クラークの交響曲集かと思ってよく見たところ、そっくりの体裁の全く異なるアルバムだと気付いた次第。ロバート・ハイドン・クラークの交響曲集はお気に入りのアルバムなので、それと同じ体裁のシリーズということで、リリース元のCollinsの総力を結集したアルバムに違いないとの気配を感じて聴き始めたところ、まさにその通り。これがなかなか素晴らしいアルバムなんですね。

奏者のアルベルニ四重奏団はもちろんはじめて聴く団体。ライナーノーツには奏者の情報がないためネットで調べてみると、拠点をロンドン北部のニュータウン、エセックス州ハーロウ(Harlow)に置くクァルテットとのこと。設立は意外に古く、1960年代とのことで、メンバーを変えながら現在も活動を続けています。この録音当時のメンバーは以下のとおり。

第1ヴァイオリン:ハワード・デイヴィス(Howard Davis)
第2ヴァイオリン:ピーター・ポップル(Peter Pople)
ヴィオラ:ロジャー・ベスト(Roger Best)
チェロ:デヴィッド・スミス(David Smith)

第1ヴァイオリンのハワード・ディヴィスは35年間にわたりこのクァルテットの第1ヴァイオリンを務めた人でイギリスでは有名な人のようです、2008年に亡くなっているとのことです。ハワード・デイヴィスの楽器は1695年製のストラディヴァリウス"The Maurin"ということで、美音を轟かせるのでしょうか。

今日は前半の3曲を取り上げます。

Hob.III:75 String Quartet Op.76 No.1 [G] (1797)
速めのテンポによる鮮烈な入り。やはりハワード・デイヴィスの艶やかなヴァイオリンの音色が格別な輝きを放ってます。あえて休符を短めにとることで見通しの良い音楽になり、グイグイ進みます。4本の楽器の目の詰んだ織り目の綾の美しさで聴かせるような演奏。音量を上げて聴くと巷で話題のグリラー四重奏団のようなざっくりと織り上げる魅力のようなものを放っています。冒頭から素晴らしい迫力に圧倒されます。
つづくアダージョは手堅いチェロに伸びやかなヴァイオリンの好対照。やはりヴァイオリンの美しい響きが別格の美しさ。特に高音部は倍音が良く乗って素晴らしい艶やかさ。フレージングは柔らかく、呼吸も深いゆったりとした音楽が流れます。残響の美しさは流石にヘンリー・ウッド・ホール。
メヌエットは迫力重視で若干音程がふらつくところもありますが、4人の息はピタリと合ってます。相変わらずハワード・デイヴィスのヴァイオリンの美音炸裂。別格の存在感ですね。他の奏者が道を譲って、デイヴィスの独壇場。
そしてフィナーレはキレの良さが加わり、落ち着いた中にも弓に力が入り、徐々に緊張感が高まっていきます。全奏者が踏み込んで少々前のめりで攻めてきます。1曲目から流石なところを見せつけます。

Hob.III:76 String Quartet Op.76 No.2 "Quintenquartetett" 「五度」 [d] (1797)
続いて五度。速めのテンポが実に心地よい入り。きっちりとした構成の1楽章をミクロコスモスのようなコンパクトでタイトな魅力で聴かせます。速めが急いた感じは与えず、曲の魅力をくっきりと表現しているのは流石なところ。逆に弓裁きの鮮やかさを印象付けます。ダイナミックさも十分、曲の魅力を描ききった感を与えます。
つづくアンダンテは、もちろんテンポは落とすのですが、一貫性を保ち、音楽の自然な流れの良さを保ちながら落ち着いてメロディーを置いていきます。アンサンブルの一体感も微塵も崩さず、4人が一体となって音楽を奏でます。途中のヴァイオリンソロのさりげない美しさがこのアルバムの演奏の質の高さを物語るよう。
独特の濃い音楽が特徴のメヌエットですが、緊密なアンサンブルで爽快感が漂うほどのあっさりとした表情でさらりとこなします。演奏によってはくどいほどのメリハリをつけてくるのとは好対照。
そして予想どおり爽快なフィナーレ。あえてサラリとした感触を残そうとしている節があり、特にフレーズの切れ目をサラリと引き上げるところが特徴。最後は素晴らしい迫力を伴い、くっきりとした表情のまま力みなぎるフィニッシュ。

Hob.III:77 String Quartet Op.76 No.3 "Kaiserquartetett" 「皇帝」 [C] (1797)
前曲同様、速めなテンポでタイトな魅力を放ちます。目の荒さも同様、ざっくりとした表情も変わらず、素晴らしい推進力での入り。速さに負けないしっかりとしたボウイングでくっきりとした表情が引き立ちます。特に第1ヴァイオリンの高音の伸びやかさが印象的。
有名な2楽章も比較的速め。淡々と運ぶ音楽の美しさで聴かせる演奏。変奏を重ねていくあたりからはテンポも上がり、緊張感も上がります。ここでも休符をあえて短めにすることで音楽の見通しが良くなり、タイトな表情の魅力で聴かせます。音楽の立体感が一層際立ち最後は透き通った凛とした美しさに至ります。悪くありません。
変わらず速めのメヌエットをはさんで、鮮烈なフィナーレに至ります。あらん限りの力で楽器を鳴らしきりながらも、繊細さを失わない進行は流石なところ。一貫して見通しの良さを失わず、コンパクトに起承転結を表現します。
後半3曲も演奏のスタンスとレベルは変わらず、コンパクトながらきりりと引き締まったハイドンのクァルテットの魅力を十分に表現しきった名演奏。

アルベルニ四重奏団によるOp.76の6曲を収めたアルバムですが、Collins CLASSICSの威信をかけたプロダクツにふさわしい素晴らしい出来でした。やはり第1ヴァイオリンのハワード・デイヴィスの輝かしい音色をベースにしながらも、速めのテンポでグイグイと攻めながらタイトにまとめるという、これまでの名演とはちょっとタイプの異なる演奏でした。ゆったりと沈む演奏もいいものですが、アルベルニ四重奏団の演奏のこの見通しのよい演奏も捨て難いもの。6曲とも高いレベルで揃えてくるあたりもこのクァルテットの実力の高さを物語るものでしょう。もちろん全曲[+++++]とします。

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