作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

スクロヴァチェフスキ/読響のブルックナー8番(東京オペラシティ)

2
0
今日は東京オペラシティのコンサートに行ってきました。待ちに待ったコンサート。

MisterS.jpg
読売日本交響楽団:スクロヴァチェフスキ指揮 特別演奏会 《究極のブルックナー》 2日目

スクロヴァチェフスキはなんと92歳。高齢ゆえ、前回2014年10月のコンサートを聴きに行った時も、これで聴き納めかもと思っていましたが、またまた来日して、しかも曲目はブルックナーの8番ということで、このコンサートが発表された時からチケットをとってあったもの。これまでスクロヴァチェフスキのコンサートは定期公演に組み込まれていましたが、今回は「特別演奏会」という企画。もしかしたら、本当にこれで聴き納めかもしれないとの想いもよぎります。

普段はハイドンばかり聴いていますが、ブルックナーも嫌いではありません。ただ、自宅のオーディオセットで長大なブルックナーの曲を通しで聴ける忍耐力もなく、ブルックナーは最近は専らコンサートで楽しんでいます。ふとしたことから2010年に読響のスクロヴァチェフスキの8番のコンサートに行き、あまりの熱演に腰を抜かして、以来スクロヴァチェフスキのブルックナーはほとんど聴いています。一度東京芸術劇場での7番を、チケットはとってあったのに仕事で行けなかったのが痛恨事でした。コンサートレポートも随分書いています。

2014/10/10 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/読響のブルックナー&ベートーヴェン!(サントリーホール)
2013/10/13 : コンサートレポート : 90歳のスクロヴァチェフスキ/読響/サントリーホール
2012/09/30 : コンサートレポート : 東京オペラシティでスクロヴァチェフスキ/読響の英雄に打たれる
2011/12/27 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/N響の第九(サントリーホール)
2011/10/19 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ、オペラシティでのブルックナー爆演
2010/03/25 : コンサートレポート : 読響最後のスクロヴァチェフスキ

今日の東京は夜は雪の予報。この重要なコンサートに万が一にも遅れてはならぬということで、いつもよりも余裕をもって出かけ、東京オペラシティには開場の30分前には到着。

IMG_4796.jpg

周りをうろついているうちに開場時刻となり、ホールに戻ってみると、すでにごった返していました。

IMG_4798_2016012318261100c.jpg

ベストコンディションにコンサートに臨むため、赤ワインにエスプレッソを煽り、脳の神経が最も冴え渡るよう体調をコントロール(笑)

IMG_4797.jpg

久々のオペラシティですが、1階の平土間席はあまり好きでないため、サントリーホールの定番席同様、2階席の右側、指揮者とオケを右から見下ろす席をとりました。(写真は2階席正面奥からのもの)

流石にスクロヴァチェフスキのコンサートということで、客席は満席。開演時刻をすこし過ぎたところで場内の照明が落ち、オケのメンバーとこの日のコンサートマスターの長原さんが登壇してチューニング。この開演前のそわそわした雰囲気はいいものですね。そしてスクロヴァチェフスキがステージに姿を見せたとたん割れんばかりの拍手が降り注ぎます。以前から登壇の時は足が悪そうで引きずっていましたが、今回は右足が曲がらないのか、かなり引きずるようす。それでもゆっくりゆっくり自分で歩いて指揮台に登り、いつものように気さくな笑顔で拍手に応えます。実際に姿をみてようやく安心。

そして独特の短い指揮棒を振り下ろすや否や、脚の悪さなど微塵も感じさせない矍鑠とした指揮姿を見せ、オケから荘重な響きを引き出します。今日の演奏、スクロヴァチェフスキも読響も神がったような素晴らしい集中力。指揮台には譜面台と楽譜が置かれていましたが、一度も開くことなく、すべて暗譜で指揮

1楽章からオケは乱れることなくスクロヴァチェフスキの指示に完璧に応え、表現は精緻さを優先させ、スクロヴァチェフスキとしてはやや抑え気味。読響は特にヴァイオリンをはじめとした弦楽器陣のビロードのように揃ったトレモロの演奏が秀逸、金管陣もほとんど乱れることなくバリバリと号砲で迫力を加えます。ティンパニは溜めの効いたバチさばきの岡田さんではなく武藤さんという人で、シャープなリズムでさらりとこなします。メロディーを歌わせるところの朗々とした表情と、全奏部の圧倒的な力感、そして時折すっと静寂に沈むところを自在にコントロールしていくのはスクロヴァチェフスキならでは。2楽章まではセッション録音の演奏のように完璧な演奏でしたが、様相が一変したのが3楽章のアダージョから。それまでも素晴らしい演奏だったんですが、アダージョはスクロヴァチェフスキの面目躍如。表現の幅が一段と大きくなり、ホール内もスクロヴァチェフスキの棒に完全にのまれます。深々と鳴動するフレーズ。ホールに響き渡る轟音。そして完全にそろった3台のハープから流れる美しいメロディー。爆音の後、静寂に吸い込まれていく余韻。長大な3楽章を何度も峠を越えながら終盤のクライマックスに向けて盛り上げていく手腕は見事。しかもずっと立ちっぱなしでの指揮にもかかわらず、まったく疲れを感じさせない矍鑠としたスクロヴァチェフスキ。オケに緻密に指示を出しながらものすごいダイナミックレンジを制御します。このアダージョの神々しさは今まで聴いたことのない高みに達していました。
フィナーレの冒頭の喧騒は、テンポを上げて火の玉のようなオケのパワーで圧倒。アダージョとの対比からか、全般に速めに曲をすすめますが、終盤に至り、天上から光が差すように荘厳な雰囲気を作り、最後の号砲を轟かせて終わります。

静寂を突き破るようにフラインブブラボーと拍手が降り注ぎますが、スクロヴァチェフスキは微動だにせず無視。それを見てお客さんが静寂にもどってようやくタクトを置くと、ホールをつんざくような拍手とブラヴォーが降り注ぎ、ようやくスクロヴァチェフスキが拍手に応えます。タクトを置くのを我慢できない一部のお客さんのイマイチなマナーを、さらりと制するスクロヴァチェフスキの粋なさばきに皆笑顔に戻りました。もちろん客席は総立ちで92歳の老指揮者の渾身の名演を讃えます。袖に下がるときはもちろん脚をひきずりながらゆっくり歩いてですが、この名演に拍手がやむはずもなく、オケのメンバーを讃え、お客さんの拍手に応えて何度もステージ上に呼び戻されていました。最後はオケのメンバーが下がったあとも2度ほどステージに昇り、胸に手を当てて深々と笑顔で挨拶する姿が感動的でした。

この奇跡のような素晴らしい時間。指揮棒ひとつで全ての観客の心を奪う大伽藍のような音楽を繰り出ますが、どこにも媚びたところもなく、純粋無垢な音楽が次から次へお湧き出てくるような素晴らしい説得力。再度来日する機会があるのでしょうか。92歳という年齢からすると可能性は低くなってくるかもしれませんが、できればもう1度、奇跡の時間を味わいたいものです。

2日前の東京芸術劇場でのコンサートにはNHKの収録が入ったとのことですので、放送があるかもしれませんね。生とは迫力がちがいますが、スクロヴァチェフスキという人の真価を知るにはいいものだとおもいますので、コンサートを聴かれていない方は放送にご期待ください。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

2 Comments

There are no comments yet.

だまてら

No title

Daisyさん、年始にブーレーズが九十で亡くなったこともあり、最長老ミスターSのご健在は慶賀の至りです。
小生が最後に聴いたのは、九十歳の誕生日の週(確か翌日?)に、池袋の芸術劇場でショパンのPコン1番(グレムザー)とショスタコ「革命」でした。
ショパンはRCAにルービンシュタインと、革命はマーキュリーにミネアポリス響との若き日の名盤があるだけに、両曲とも自家薬篭中のものでした。「革命」ではさすがに往時の推進力には欠けましたが、その分第三楽章の重層的なテクスチュアの表出は見事でした。
それからも、はや二年半あまり。九十二にしてブルックナー八番で名演奏を聞かせてくれるミスターSもまた、人類の至宝ですね!

  • 2016/01/26 (Tue) 22:19
  • REPLY

Daisy

Re: No title

だまてらさん、コメントありがとうございます。

ブルックナーの8番という大曲をオケを煽りながらコントロールする姿は、もはや神様の域と言っていいでしょう。動きは非常に機敏で、入退場の姿さえ見なければ、とても92歳とは思えません。我々もかくありありたいものですね。私も今回、レビューを書くのにザール・ブリュッケンのオケとの全集を取り出し聴いたのですが、音楽のスケールはさらに大きくなり、老いというよりもまだまだ成長しているように感じました。このエネルギー、どこから来ているのか。きっと、良い演奏を求めての試行錯誤をまだまだ続けているのだと思います。人間の大きさを感じたコンサートでした。叶うならばもう一度スクロヴァチェフスキのブルックナーを浴びてみたいところです。

  • 2016/01/27 (Wed) 22:18
  • REPLY