作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

カール・ズスケ/スイトナー/ベルリン国立歌劇場管のヴァイオリン協奏曲(ハイドン)

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最近手に入れたLPです。

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カール・ズスケ(Karl Suske)のヴァイオリン、オトマール・スイトナー(Otmar Suitner)指揮のベルリン国立歌劇場管弦楽団(Berlin Staatskapelle)の演奏で、ハイドンのヴァイオリン協奏曲2曲(Hob.VIIa:1、VIIa:4)を収めたLP。収録は1964年。レーベルはDEUTSCHE SCHALLPLATTENのETERNA。

最近は古いレコード鑑賞の三種の神器、VPIのレコードクリーナー超音波美顔ブラシモノラルカートリッジを手に入れたので、古めのLPをいろいろ物色しております。手に入れたLPは、まずVPIと超音波美顔ブラシできれいにクリーニング。つやつやになったところで、おもむろにステレオカートリッジで検盤、モノラル盤の場合には、ほくそ笑みながらモノラル用ターンテーブルに移してゆったりと音楽を楽しみます。ということで、今日取り上げるアルバムです。

カール・ズスケは年配の方には馴染みがあるでしょう。いつものように略歴をさらっておきましょう。1934年生まれのドイツのヴァイオリン奏者。父からヴァイオリンの手ほどきを受け、ヴァイマル音楽大学、ライプツィヒ音楽大学でゲルハルト・ボッセに師事。1954年には首席ヴァイオリン奏者としてライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団に1959年には第一コンサートマスターとなります。1964年には今日取り上げるアルバムのオケであるベルリン国立歌劇場管のコンサートマスターに転じますが、1977年には元のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管に戻り、1991年から2000年まではバイロイト祝祭管のコンサートマスターを務めています。日本ではN響の客演コンサートマスターとしても活躍していたのをご記憶の方もあるでしょう。室内楽ではライプツィヒ時代にゲヴァントハウス四重奏団の第2ヴァイオリン、ベルリン時代にはズスケ四重奏団(後のベルリン四重奏団)を結成し多くの録音を残しました。今日取り上げる演奏はベルリンに移った直後の演奏ということになります。

オトマール・スイトナーも懐かしい人。N響の名誉指揮者として度々振っていましたので、おなじみの人も多いでしょう。2010年に亡くなられていたんですね。私はN響時代の放送をいろいろ見た覚えがありますが、鮮烈な印象が残っているのはドレスデン・シュターツカペレとのモーツァルトの交響曲。スイトナーの録音をまとめた10枚組のボックスに納められた中に後期交響曲の録音がありますが、これが皆素晴らしい。ワルターとはまたちがう慈しみ深さを感じる名演奏です。
1922年、オーストリアのインスブルック生まれで、指揮はクレメンス・クラウスに師事。インスブルック歌劇場を皮切りに西ドイツ各地の歌劇場で活躍後、1960年にドレスデン国立歌劇場、1964年にベルリン国立歌劇場の音楽監督に就任しました。日本には1971年に来日してN響を振り、1973年には名誉指揮者に就任、以後数多く客演し、テレビでもおなじみでしたね。

ということで、今日取り上げるアルバムが録音された1964年にスイトナーが音楽監督、ズスケがコンサートマスターと顔をそろえたわけで、その直後にこのハイドンのヴァイオリン協奏曲を録音したというのは、実は素晴らしいハイドンのヴァイオリン協奏曲の価値を物語るものでしょう。

Hob.VIIa:1 Violin Concerto [C] (c.1765)
針を落としたとたん、1964年録音とは思えない瑞々しいオケの序奏に驚きます。LPのコンディションも極上。演奏は少々時代ががった雰囲気はあるものの、オケが良く鳴ってベルリン国立歌劇場管の面目躍如。そしてズスケのヴァイオリンも高音が伸びきってピンと張り詰めた緊張感があります。高音がキリリとひきしまった几帳面な美音。とにかく音の伸びが素晴らしく、ドイツ系のヴァイオリンの素晴らしさの見本のような演奏。オケの方はスイトナーらしく堅実かつしなやかなもの。カデンツァではヴァイオリンのあらん限りの音数を繰り出して、ホール中に美音を轟かせます。盤石のテクニックとどこまでも突き抜けるような浸透力のある美音で圧倒します。
美しいメロディーの2楽章に入ると、ズスケのヴァイオリンがもはや圧倒的な存在感。室内楽で聴かれた堅実なズスケとは別人のような輝き。この演奏にかける気合いのようなものを感じます。スイトナーもピチカートだけなのに大きな起伏を十分つけてそれに応じます。
フィナーレはなぜかすこし引いて入り、落ち着きを印象付けます。それでもズスケのヴァイオリンの魅力は隠しようがなく、ヴァイオリンソロのフレーズは天真爛漫に楽器を鳴らし、さらりと駆け抜けました。1曲目からあまりの素晴らしさにアドレナリン大噴出です。

Hob.VIIa:4 Violin Concerto [G] (c.1765/70)
1曲目よりさらに華やかな入りに心が弾みます。スイトナーのオーケストラコントロールも万全。ズスケは冒頭から美音を誇るように一音一音をしっかりと刻んでいきます。オケもソロも澄み切った心情で音を置いていきますが、全ての音に華があり、部屋が花で満たされているような幸福感。50年以上前の録音会場の空気がそのままスピーカーの周りに広がります。LPならではキレの良い響きが最高。ズスケの素晴らしいカデンツァに至って昇天寸前。なんという美音。ホールに響き渡る美しい残響。オケが迎えにきて正気にもどります。
2楽章の入りのなんとやさしいことでしょうか。ズスケのヴァイオリンは心に染み透るよう。この曲はもともと美しいメロディーで知られていますが、浸透力と癒しの濃さは今までで一番でしょうか。オケがリラックスしきってしなやかに支え、ズスケも自在に歌います。弱音部分は鳥肌が立つような絶妙な美しさ。
フィナーレは全曲同様、流すような軽やかさが爽快。この辺のセンスはスイトナーのものでしょう。ズスケも心持ちリラックスしてボウイングも力が抜けているのが良いのでしょう。最後までしなやかさを失わない素晴らしいフィナーレでした。

カール・ズスケとオトマール・スイトナーが1964年にベルリン国立歌劇場に着任した直後に録音されたハイドンのヴァイオリン協奏曲集。状態のいいLPから流れ出してきた音楽は、ズスケ全盛期の素晴らしいヴァイオリンの響きを、スイトナーの操る慈しみに溢れたオーケストラが支える絶品の音楽でした。このヴァイオリンの音色はLPだからこそ聴けるものかもしれませんね。思わぬ掘り出し物に出会いました。また一枚宝物が増えましたね。評価はもちろん[+++++]とします。

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